EAST END / Beginning of the Endless | 5000VOLTもの電撃を受けるとシビれます

5000VOLTもの電撃を受けるとシビれます

自分がビリビリと刺激的電撃を受けたCDやレコードなどの音を中心に、レビューっぽい感じで綴っていきます。よろしくです。



YURI抜きのEAST END、03年の復活作「Beginning of the Endless」。書くまでもないだろうが、「DA.YO.NE」の大ヒットでお茶の間にも名前が浸透しているグループ。だがその呪縛に本人達も悩んだろう。YURIの加入後、グループを抜けたROCK-Teeも戻って来ての再出発。

元々、EAST ENDは真摯にHIP HOPを追求していたグループだった。という訳でもなく、YURIの加入前からシーンでもセルアウト気味なグループで、TWIGYにもペイジャーの曲で「媚び売ってるGAKU、バカかテメェ」とまでディスられていた。確かに、バブルガムとかに擦り寄ったりしてたイメージはあるな~。

1曲目「韻とLAW」は、CRAZY-Aをゲストに迎えたイントロ。しかし何回聴いてもCRAZY-AのRAPはつまらないな。冒頭からこれじゃ、アルバム全体の品格を疑いますよ。以前に何かのインタビュー記事でライムスターの宇多丸までも「昔から、アキラさん(CRAZY-Aの事)のRAPがスゲー好きなんだよね」みたいな事を言ってたけど嘘くさい。後輩連中はみんな気を使ってんだろうけど、過去の遺物じゃんかよ。2曲目「試みの地平線」は、Hot Dog PRESSで連載していた北方謙三の人生相談コーナーを題材にした曲で、タイトルもその連載から拝借。賑やかで派手なビートと、北方ばりに「いいか坊主!」と激を飛ばすGAKUの優等生声が妙にハマる。1曲目の失態を跳ね返す良曲。

3曲目「返事」はFGの後輩、CUEZEROとCHANNELをフックアップ。80年代の人気TV番組「あばれはっちゃく」をテーマにした曲だが、余り面白い切り口ではない。3人の中じゃCHANNELのヴァースが一番良いけど、アルバムの他の曲に比べて音質が悪いのも気になる。4曲目「Life is beautiful」は、KOOL G RAP & DJ POLOのクラシック「STREETS OF NEW YORK」と同ネタ!KOOL G RAPのハーコーな仕上がりはモチロン説明不要だが、ここでのGAKUのアプローチも男前じゃない?ソロでの、「みんながんばろうぜ」的なポジティブリリックは余り好きじゃないが、グループだと男らしさを垣間見せるんだよな。

5曲目「FGスポット」は、女性のGスポットについて歌うエロRAP。アキネリの「Put It In Your Mouth」は好きだが、これはちょっと…。アレは女性ボーカルの起用や、アコースティックギターを使用したトラックも相まって下品さをカバー出来ていた(リリックが全部解るとそれはまた違うかもだけど)ように思えるが、この「FGスポット」はストレート過ぎて萎える。ゲストのKICK THE CAN CREWもダメ。多忙期とはいえ、先輩の作品で手を抜くとは何事か。けしからん。6曲目「4WD」は、ROCK-TeeとYOGGYを全面に押し出した1曲。重厚なビートに、各々スクラッチを披露していくライカ4輪駆動。この曲でのGAKUのリリックに「2MC & 1DJ じゃないスタイルに感心せい」とあるが、確かに今や余り見ない編成。拘りを感じる。

8曲目「Chillin' with ROCK-Tee」の心地良いインタールードを挟み、9曲目「勝利の3本線」はアディダス賛歌。FGで一番トラックスーツが似合うMellow Yellowがゲスト。まぁ、いつも通りの彼らって感じ。10曲目「チョコレートシティ」は、昔からの同胞、Rhymesterを迎えた代々木チョコレートシティに捧げる鎮魂歌。93年当時のFGは、ただの仲良しクルーではなく、互いのライブ内容に関して勘ぐりあったり、ライバル意識が強い「仲のいい敵」みたいだったと聞いた事がある。代チョコなんて行った事すらない俺だけど、馴れ合いじゃない関係で冬の時代を生き抜いた仲間だからこそ一緒に歌える内容にヤラれる。

12曲目「No Future」はRIP SLYMEをゲストに迎えた1曲で、フックの「未来永劫、続く栄光なんてモンはどこにもねーぞ」というラインは紅白に出場し、その後は世間から忘れ去られたEAST ENDだからこそ説得力がある。アルバム発売当時のFGクルーで、セールス的に一番成功していたリップをこういうテーマの曲に迎えるって事は、彼らが後輩に教えてあげる戒めみたいなもんだろう。13曲目「DJ大会」は、F.G.DJ ALL STARSのスクラッチ合戦。面子はTATSUTA、FUMIYA、YOGGY、ISO、SHUHO、JIN、ROCK-Teeの7人。ホストのGAKUがD.J. Jazzy Jeff & Fresh Prince時代のウィルスミスを思い起こさせる。FUMIYAって、リップじゃあんまり擦ってるイメージなかったけど、プリモばりのハメ系スクラッチの上手さに驚き。お見それしました。音楽センスの高い人のスクラッチは、とても耳心地良いね。

14曲目「あと一本で幸せ」は、辛いに一本足すと幸せになるという、漢字ワードプレイ。そのテーマは良いのだけど、ラッパ我リヤばりのダジャレにしか聴こえない押韻に萎える。GAKUは余り韻に拘らない方が持ち味が出せるタイプのMCなのに勿体ない。15曲目「進化論」は、切ない系の綺麗なビートの上で、10年来の付き合いである童子-Tを迎えた曲。しかし童子-Tは、何で俺の琴線に触れる箇所が一個もないラッパーなのだろう。中学生が喜びそうなリリックや押韻にゲンナリする。

全18曲。
これまでに聴いたEAST END × YURIのアルバムや、GAKU-MCのソロアルバムと比べても、珠玉の出来となったアルバムだと思う。惜しむべくは、FGの見本市のような豪華ゲスト陣が参加した曲より、純粋に3人でやっている曲の方がクオリティが高いという事だろう。そこらの若手が得られないだけのキャリアは十分にあるのだから、もっと自信を持つべきだったのではないか。それか復活作だし、ノーゲストでも良かったハズ。45 KINGのジャケは好きだがね。

マイク4… う~ん、ちょっと厳しめに3本、いや、3000VOLT。