『国家のツジツマ』・その4 | くらえもんの気ままに独り言

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 さて、これまで続いてきました『国家のツジツマ』の感想シリーズも今回が最終回です。今回は日本の戦後にスポットが当てられております。このパートも対談動画と比較して大幅に加筆修正がされている気がします。ちなみに『震災ゴジラ』『僕たちは戦後史を知らない』を読んでいると今回のパートは理解しやすいですね(結構内容がかぶったりしていますが)。しかしまぁ、本は動画と比べると分からなかったところを繰り返し読む(見る)手間が楽でいいですね(^-^)


 今回は少し長めになりますが、どうかお付き合いくださいませ。


第四部『保守はゴジラを夢見るか―未来のためのツジツマ』


・戦前と戦後は別物か

 矛盾を抱えて戦争に突っ込んで、終わり方もよくなかった。これで、まともな精神を保とうと思うならば、戦前と戦後は別物と捉えずにはいられないのかもしれません。戦前は軍国主義で悪い日本だったor戦後日本は骨抜きにされてダメになった、そしてその逆も。世界観の崩壊というのはあまり体験した記憶はないのですが、かなりのショックで現実逃避せずにはいられなくなる状況ということの想像はできるかなと。


・日本の華麗なる負け惜しみ

 『僕たちは戦後史を知らない』のエントリーでも書きましたが、佐藤氏の分析によれば戦後の日本人は「アメリカという真の日本が勝ったから、日本は勝ったのだ」と解釈していたとのこと。そうとでも思わなければ精神の安定を保つことができなかったということなのでしょうか・・・。これがいわゆる「ファンタジーの戦後史」の基盤になっていくわけですが、どっちがよかったのやら・・・。なんかストックホルム症候群に近い気もしますね


・敗戦回帰のパラドックス

 アメリカと同化しちゃえば万事オッケーって思い込ませてこれまでやってきて、また行き詰まってくるとアメリカともっと一体化しようとする。そして今もなお日米主導でTPPなんて時の総理が言ってる始末・・・。もはや病気というか・・・強迫性障害みたいなもんですかね? 


・グローバリズムと社会改革を信じて

 アメリカと一緒にグローバリズムをやっていくためにはナショナリズムを封印しなければならない。だから、ドリルで岩盤を破壊しましょうって話につながっていくわけですね。トラウマって怖いですね。まぁ、ファンタジーの世界を捨てたら敗戦の記憶がよみがえってくるんですよね?では、生まれたときからファンタジーの世界の住人で敗戦の記憶もない戦後の世代はいったいどうすればいいのか・・・。


・二枚舌でつかんだ繁栄

 アメリカとべったりで、しかし自国の安全保障はアメリカに丸投げするってことをやって戦後の繁栄を手にするわけですが、なんか悪いことやって手に入れた繁栄みたいな感じで素直に喜べないんでしょうね。しかも、ファンタジーの物語で世界観を塗りつぶして手に入れたわけですし。あぁ、精神衛生上よくないなぁ・・・。 


・繰り返される「第二の敗戦」

 第二の敗戦と戦後の無限ループですね・・・。しかも、それに気づかない日本人・・・。


・二〇二〇年五輪と東京壊滅

 『アキラ』という映画は二〇一九年の東京が舞台で二〇二〇年の東京五輪を目の前にして東京が壊滅するという。この映画は一九八八年に作られたらしいですが、二〇二〇年の東京五輪を予言していたとは驚きですね。日本人の深層心理にはやはり破滅願望があるということの表れのようですが、深読みしすぎじゃないか?と思ったり。いや、しかし佐藤氏のアプローチは物語を通じた深層心理の分析だから、間違っていないのかも。


・失敗体験に安住する日本人

 ガラガラポンにしてしまえば次はもっとよくなる、よくなるはずだ、よくなるに違いない・・・。現実にはどんどん自体が悪化していってますが・・・。佐藤氏曰く負け癖がついているとのことですが、負けるが勝ちってことで今までやってきたのなら、負けに対して鈍感になってるってことなのかな?見ないふりをしているだけかも?


・自由主義的保守主義の洋風と和風

 日本では保守的と言われる人が新自由主義を好むという矛盾。ファンタジーの世界に生きている以上、保守的なものを目指そうとしたら、そこに行きつくしかなかったということか。やはり真の物語を認識しないことには永遠に矛盾を抱えたことになりそうです。


・よみがえる西洋没落論

 一九七〇~一九八〇年代、近代的なものと前近代的なもののバランスが取れており、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時代。しかし、当時、前近代的なもの(日本文化)が評価されていたのは文明が発達したからだったのかもしれないとのこと。日本的な社会が良くて経済発展したという認識ではなく、経済発展していたから日本的なものを評価していたということでしょうか。とすれば経済発展に陰りが見えたら日本的な文化を捨てようとしたのにも納得がいきます。


・「文明」と「文化」は正当化できない

 西洋的な文明の発達は日本文化の否定とならざるを得ない状態の日本。文明開化のツケがここでも後を引いてしまう。戦後保守は~、とか言う二十一世紀型の新保守の方々も敗戦体験とは向き合おうとせず、負け惜しみばかり・・・。チャンネル某の元社長さんとか某カリスマさんのことかしら?


・新たな筋立てをどう作るか

 ツジツマの合わない物語にツジツマの合わない物語を塗り重ねてきたため、日本の抱える問題を解決したくても解決できないというわけでしょうか。佐藤氏の提言を簡単に言うと解決にはまず、ガラガラポンに頼らない形でツジツマの合った物語を再構築する必要があるということ。ここまで読んで、ようやく問題の全景というか根本というかがはっきりしてきたように感じます。


・二十一世紀の保守の条件

 保守主義の基本姿勢は簡単にまとめると暴走を食い止める役割というところでしょうか。自由主義が暴走した十九世紀には社会主義とともにそれを食い止め、社会主義が暴走した二十世紀には自由主義とともにそれを食い止めました。そして二十一世紀、自由主義的保守主義が猛威を振るっている現在、これを食い止める勢力が保守と呼ばれる存在なのでしょう。


・政治的センスと芸術的センス

 ビスマルクは政治はアートだと言っていたらしいですね。政治家にはアーティスティックなセンスが求められるということですが、細部まですべてツジツマを合わせようとすると単純化しなくてはならなくなってしまうので、だいたいツジツマが合っていれば、細部は芸術的センスでカバーという意味でしょうか。つまり、あいまいな部分もいくらかはあってオッケーというところでしょうか。まぁ、答えは一つではないのでしょう。


・心にゴジラを持て!

 封印した体験に向き合い、近代以降矛盾を抱えてきたことをまずは認識しなければならない。歪んだ世界観を修正しなければならない。そして、佐藤氏は破壊願望が潜んでいることを自覚し、コントロールしなければならないと述べています。問題を解決するには問題を認識するところから始めないといけませんからね。


・二つの「何でもあり」を超えて

 ツジツマを合わせなくてはならないが、理性にのみ頼ってはいけない(理性に頼ると最後にはガラガラポンしようって展開に行きつくので)。ここで、頼りにするのが信仰と中野氏は述べています。対象はキリストであったり、ゴジラであったり、お天道さんだったり何でもよいのでしょうが、自分を滅ぼすことも可能な何かの存在を自覚することが大事なようです。『大衆社会の処方箋』に出てきたように「死を先験的に覚悟する」っていうのも似たような感覚なのかもしれません。


 さぁ、これで一通り本書を読み終わったわけですが、ごくごく簡単に内容をまとめてみました。


①世界は物語でできている

②近代ヨーロッパで合理主義・進歩主義が誕生し、世界中に広がる

③日本は近代化の際に文化と文明を切り離して矛盾を抱え込んでしまう

④敗戦の際に本土決戦するはずだったこと含めて、記憶を封印してしまう

⑤ファンタジーの世界に住み着くことにして、アメリカと一体化しようとしてきた

⑥矛盾した世界観に囚われ、敗戦の無限ループへ

⑦これを脱するには今まで抱え込んできた矛盾を認識しなければならない

⑧そして真の物語を紡ぎ出す必要がある

⑨真の物語にはあいまいさも必要

⑩理性ではなく、自己を超越したもの信じることによってのみ真の物語にたどり着ける


といったところでしょうか。中には理解が難しいものがありましたが、だいたいこんな感じだったんじゃないかなと(;^_^A

 

 真の物語が見えてくれば、あとは解決法も自然と見えてくるのではないでしょうか。ファンタジーの世界から脱却しているであろうお二方のとる道はバランサーとしての真の意味での保守というところでしょうか。私には真の物語がなんなのかということはまだ見えてきませんが、自分が今までファンタジーの世界で生きてきた(というかファンタジーの世界で生まれたわけですが)ということには気づきました。何というか怖いものがありますが、とりあえず真の物語に近い物語をたどれるようにはなったのかもしれません。


 ファンタジーの世界の住人を現実世界に連れ戻すというところが最大のハードルではありますが、目が醒めた方は、隣でまだ夢を見ている方がいたら起こしてあげてください。


 それでは、長々とお付き合いくださいましてありがとうございましたm(_ _ )m

 次回は久しぶりにドラえもん解説でもしようかな(ギャップありまくりですが)。


最後の対談動画はコチラ

対談・保守はゴジラを夢見るか 第4回最終回 未来への方向性

http://www.youtube.com/watch?v=sRunMnpcurM


このエントリーも参考に

『僕たちは戦後史を知らない』

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11792714548.html



くらえもんが至高のギャグマンガ「ドラえもん」を独自の視点でおもしろおかしく解説!興味のある方は下記のエントリーにまとめを作っていますので是非ご覧ください。