『大衆社会の処方箋』・その2 | くらえもんの気ままに独り言

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 今回は前回に引き続き『大衆社会の処方箋』を読んだ感想を書かせていただきます。ちなみに今回は第Ⅱ部「大衆の反逆」についての感想になります。


 第Ⅱ部の内容を簡単にまとめますと、大衆性の高い(傲慢性・自己閉塞性が強い)人々は、社会を裏切るし、議論もできないし、政府も信用しないということを科学的に検証したということです。(どのような手法で検証したのかを知りたければ本書をお読みください。)


 まず、第Ⅱ部の扉ページの煽り文句がすごい(;^_^A

「大衆人」とは、傲慢であるにも拘らず自己閉塞的な、精神的俗悪性に満たされた存在である。純然たる大衆人はあらゆる種類の人々を裏切り続け、良心と良識の人々が蓄積したあらゆる富を収奪し尽くす害虫に他ならない---我々はこうした命題の真実性を「近代科学的方法」に基いて確証した。


 というわけで、大衆人がどんなに俗悪なのかということを本当に証明しちゃっています。(正確には大衆性が高い程、俗悪性がより高くなりやすいということを証明しています。)


(1)社会を裏切る「大衆」

 このパートでは社会的ジレンマと呼ばれる状況で大衆性の高い人は「協力」を回避し、「裏切り」を選択する傾向が高ことを示しています。ちなみに社会的ジレンマとは↓

 社会的ジレンマ:協力(短期的な私的利益は低下してしまうものの長期的には公共的な利益の増進に寄与する行為)」裏切り(=非協力)(長期的には公共的な利益を低下させてしまうものの短期的な私的利益の増進に寄与する行為)」のいずれかを選択しなければならない社会状況

 

 代表的な例として囚人のジレンマが挙げられておりました。

 (参考Wikipediaより)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9A%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9E


 なるほど生活習慣病がひどい方が大衆性が高いとするならば、家族や医者あるいは職場の人との協力を避け、お菓子をたくさん食べたりゴロゴロとしたりという短期的私的利益を追求(裏切り)しようとするのもうなずけます。そもそも社会は人々の協力によって成り立っているのであり、利己的な振る舞いはいずれ己自身に返ってくるということは考えが及びそうなのですが、大衆性が高いとその自己閉塞性ゆえ自分以外のことには無関心となるのでしょう。


 信じる者は救われる というわけですね。


(2)議論できない「大衆」

 議論とはある意見Aとそれに対立する意見Bの間で双方の意見を交えることによって、さらによい意見Cを生み出すもの(弁証法的議論)でありますが、オルテガ曰く大衆は「真理なる絶対的価値への志向性を欠いており、自分の意見を主張することのみに傾注し、他者の言うことを考慮せず、自分の許容範囲を超えて真理を目指して議論することなく、そもそも他者と議論を行うことを否定する(ルールに従わない)」という存在のようです。また、大衆性が強い人は「議論=ディベート」と考える傾向が強いことや。大衆性が強い人が一人混じっているだけで議論が成立しにくくなることもここで証明されておりました。


 確かに太っている人に、食べ過ぎはよくないよ、運動もしてみたらどうかと言ってみても、太っている人は「私はたくさんご飯を食べないと動けないの」「忙しくて運動する暇がない」と自分の意見を主張して自分の行動は変えない傾向にあるかもしれません。本来であれば、両者の意見を交えて「たくさんご飯を食べつつカロリーを抑える方法」や「忙しくても消費カロリーを増やす工夫」について考えを膨らませていくのが理想なのですが、このような議論の展開が難しいのが「大衆」と呼ばれるものなのでしょう。


(3)政府に対する「大衆の反逆」

 ここでは、政府・行政への直接的な関与を要求するくせに、国民としての義務は回避しようとする、政府・行政を信頼せず、必要性を感じないといった大衆の生態に迫っています。


 このパートでは肥満との関連付けが少々難しいので、そのまま感想を述べますが、大衆とは自分の思う通りに政治が動いてくれない、あるいは自分のため以外のことに政治が動くのを嫌うんでしょうね。かく言う私もTPP反対や消費税反対の旨を各省庁や政治家に直接意見を送りつけたことがありますが、こういう行いももしかしたら大衆的なのかもしれませんね(;^_^A

 本書では「政府の権力」と「国民の信頼」の関係が民主政治には重要だが、大衆はこの関係を破壊する的なことが書いてあり、大衆化が進むと政府は正しくその権力を行使することができないと書いてありましたが、政府自体が大衆化している(国民を裏切り、議論も成されない)場合はどうなっちゃうんでしょうかね?



というわけで、処方箋がますます気になるところで、次回は第Ⅲ部の感想を。


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