GDPとストックとフロー1 | 秋山のブログ

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マクロ経済においてGDP(国内総生産)はたいへん重要な指標である。一定期間に国内で生み出された付加価値の量を示している。生産され消費されるという経済の流れ、すなわちフローが大きいこと、より大きくなることが社会にとって好ましいのであるから、これを重要視するのは当然であろう。一方、近代以前はその国のストックが増えることが好ましいという誤った考えが力を持っていた。その反省からかどうか定かではないが、ストックからマクロ経済を考えるという傾向はあまりなく、もっぱらフローに関して検討されているようにも思える。

しかしながらストックは経済政策において、フロー以上に今後は重要視されなくてはいけないだろう。何故ならばストックは、適正な分配を考える上で有益な情報を与えてくれるからだ。不適正な分配が、有効需要の減少を生み、フローも抑制している今、ストックを中心にマクロ経済学は組み直されなくてはいけないと思う。


おこなった政策の影響を評価したり、新たな政策を計画するために、各国は自国に関する調査をおこないデータを公表しています。その中で特に重要視されているのが、GDP(国内総生産)です。GDPとは、ある一定期間に国内で新しく生み出された付加価値の合計です。

このGDPはフローの概念です。これに対してストックという概念があり、ある時点において貯蔵されている量を表しています。近代以前、国としてストックを増やす(輸入超過になる)のがよいという考えがありましたが、これは国全体と家計を混同した考えであり誤りです。豊かになるということは、より多く消費できるようになるということであり、すなわちどれだけ生産したかということになります。そう考えればフローに着目することが重要であることが分かるでしょう。

GDPに関して注意しなくてはいけない点は多々あります。
まず、GDPは付加価値ですから、製品の価格から原材料費を除いて計算しなくてはいけません。原料は別の誰かによって生み出された価値であるからです。
次に、土地や証券の値上がりは儲けにはなりますが、新たに生産されたものではないので、GDPには含まれません。
家事労働やボランティアなど、お金が介在しないものも計上されません。これは生産の実態があるので、GDPの残念なところですが、仕方ないといったところでしょう。

国民の豊かさという点では、GDPを人口で割った一人当りGDPがよく使われています。しかしこれにも注意しなくてはいけない点があります。価格というものが尺度としてそれほど当てにならないということが一番大きいでしょう。為替は様々な要因で大きく動きますし、価格も尺度としてかなりいい加減なものです(品質が高くても安ければ低い評価になります)。人口の構成比も大きな影響を与えるでしょう。

一番気をつけなくてはいけないことは、GDPが、需要によって規定された結果の生産であって、生産力を最大限発揮したものではないということです。それぞれの生産物に関して需要に限界があること、消費者の収入の偏りによって需要に抑制がかかることを考えれば、最大限発揮できることは、先進国ではほとんど期待できないでしょう。ほぼ常に大きなGDPギャップが存在すると思われます。
逆に言えば極力発揮できるようするために、需要を増やすための施策が重要になってきます。国は健康保険制度でおこなわれているような需要促進政策や、所得の再分配をおこなって需要を増やす必要があるでしょう。

もちろん生産能力自体を上げることも重要であり、研究開発にリソースを割り振ることも必要なことです。しかし実際のところは技術の進歩が日常的な業務から生じている割合の方が高いことや、生産能力が足りないのは部分的な現象で全体としての供給過多は大きいことからも、開発のためのリソース不足を心配して需要促進にブレーキを掛ける必要はないでしょう。




●現代の重商主義

輸出主導で経済成長を図ろうとする考えがあります。資金の流入は確かに景気を浮揚させる効果を持っているのは確かでしょう。しかしながらその資金は、黒字のものである必要はなく、さらには流入である必要もありません(財政政策でも同じ効果を期待できます)。また、その効果はインフレによって消失していくものでもあります。累積する経常黒字が、為替において自国の通貨高に繋がる状況においては、恒久的に実行することはできないでしょう。

●経済の循環と国民総所得

需要は消費者の収入に依存するものであり、収入はモノが売れたことに対する対価です。本来何も変化せずに循環していくだけであれば、お金を貯蓄する余地はありません。また、モノをより多く生産できるようになっても、そのままではより多く買うことができないために経済は成長しないでしょう。購入のために一時的に借金をする必要があります。もちろん個人でも借金はできますが、お金を借り入れる役割の強い経済主体が企業です。企業は人を集め、設備を整え、技術を高めて、その結果生産性を向上させるとともに、経済が成長するための経済の循環における重要な役割も担っているということです。

国民総所得は、しばしば国民所得勘定の恒等式(:Y(総生産)=C(消費)+I(投資)+G(政府購入) +NX(純輸出):) で説明されますが、それによって多くの間違いがおかされました。例えば、貿易黒字を減らすために輸入ではなくて政府購入を増やすべきだという主張がありました。総生産が最大限になっているという思い込みですね。他にも、投資(お金を借りて何かを買う)の量で決まる貯蓄率を家計の性向によって決まるものと勘違いしたり、投資(設備)がおこなわれるための主たる要素を需要ではなくて、ブレーキに過ぎない金利と考えるなど様々あります。