流動性に騙される投資家たち | 秋山のブログ

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レセプト債を発行していた資産運用会社が破綻したというニュースが流れた。負債総額は、約290億円にのぼるという。債券運用に不審点もあるらしい。

日本の保険診療のシステムを知っていれば、このレセプト債がいかに馬鹿げたものであるか容易に分かるだろう。3%の利率につられて、安易に投資した人間が多くいたことに驚きを隠せない。そんな利益得られるわけがないのである。

レセプト債が成り立つと説明しているページがある。日本格付研究所のページである。知識もない人間が読めば、なんとなく納得してしまうかもしれない。引用する。
『Q:診療・調剤報酬債権を流動化することによって、どのようなメリットがありますか?

A:各保険医療機関などにとって診療・調剤報酬債権発生から診療・調剤報酬を受け取るまでの期間を短縮することができるため、資金効率が改善することや、基金等の信用力に基づく低コストの資金調達が可能になることなどのメリットが挙げられます。 国民健康保険、政府管掌保険および組合管掌保険による診療費・薬剤支給の給付は平成12年度で約20兆円であり、この流動化手法が保険医療機関等の財務安定化のツールの一つとして期待することができます。』

医療機関は、受診した患者から1~3割の医療費を窓口で受け取り、その2ヶ月後に残りを基金から受け取ることになる。その際審査があって、過剰だったり間違った医療がおこなわれた分若干削られる。審査は必ずしも適切と言えないこともあるが、想定外に削られることは多くはない。基金からの支払いは、保険料のみならず、足りなければ税金からも補填されるので、支払いは極めて安定していると評価できるであろう。すなわちほとんどの医療機関にとって、診療報酬の債権を安く売るメリットはない。医療法人の利益率を調べてみれば、資産運用会社が想定する割引率は利益を全て吐き出しても足りないものであることが分かるだろう。わずかに支払いを早くするために、利益を全て吐き出す(実際はそれ以上にマイナス)医療法人があるとすれば、金を持って夜逃げする予定のもの(若しくはそれに類する目的)以外にはいないだろう。売る医療機関がほとんどありえないのであるから、レセプト債で運用するなどということが成り立つはずもない。医療のシステムを知るものに、このレセプト債の話をすれば、ただちに詐欺扱いされるであろう。

流動性とか、安定性という言葉は、ポジティブな印象を与えて人を騙す。メリット、デメリットは、その程度の問題まで、しっかり把握して判断しなくてはいけないだろう。