アベノミクス再び | 秋山のブログ

秋山のブログ

ブログの説明を入力します。

またしても、たけなかまさはる氏のブログが面白い。浜田宏一氏と野口氏の論争を取り上げている。どちらも微妙に間違いながら論戦をおこなっているのだが、とりあえず今後舵取りをおこなうのが、野口氏ではなくて浜田氏であることは喜ばしいことだろう。
浜田宏一氏のインタビューの紹介もあった。アベノミクスの核心であるこの記事について考察してみようと思う。

国債を買い取るだけの金融政策なら、国債金利を抑制する効果がメインである。投資以上に実質金利が高い状況であれば、起業の増加には結びつかないだろう。それが思ったほどの効果を得られなかった理由であり、それゆえに財政政策を組み合わせる必要があるだろう。
しかし浜田氏は財政政策に否定的で、金融政策をメインにすることを主張する。

『伝統的な短期債を買う手段に比べて、日銀はやろうと思えばかなりのことができます。長期債券を買えば長期金利が下がり、経済にそれなりのインパクトを与えられるし、もっとドラスティックにやるならCP(社債)を買ってもいいでしょう。  個別株式の購入はモラル的に問題がありますが、ETF(上場投信)を買ってもいいし、場合によっては外国通貨や外国債券を買ってもいい。また、後でちゃんと売却(市中から資金を吸収)できるなら、国債を直接引き受けてもいいのではないか。』

これならば効果あるだろう。要するに、担保の価値をあげるようなものを買ってもいいと言っているのだ。本来の金融政策の原理とはちょっと違うので、だから金融政策が効くということには違和感があるが、現在の日本の大きな問題に対する改善策であることは間違いない。

間違っているのはおなじみの賃金硬直性の話。
『よく「名目賃金が上がらないとダメ」と言われますが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなるか らです。それだとインフレ政策の意味がなくなってしまい、むしろこれ以上物価が上昇しないよう、止める必要が出て来る。こうしたことは、あまり理解されて いないように思います。』
その根拠はフィリップス曲線のようだ。『フィリップス曲線(インフレ率が上昇すると失業率が下がることを示す)を見てもわかる通り』などと書いている。
需要の増加を伴わない企業収益の増加が雇用を生み出さないことに気付いていないことも問題だ。労働者一人辺りの企業の利益が下がっても、需要があるのであれば雇用を増やして利益を増やそうと企業はするはずである。これは、労働者の賃金という効率のよい需要の源から、企業の利益という効率の悪い需要の源への変換、まさにトリクルダウンの誤謬だ。

期待インフレがインフレの全てであるような意識も問題だ。
『白川(方明日銀総裁)緩和がうまく行かないのは、「もうそんなことをやりたくない」という意思を言外に示し、自ら「金融緩和策には効果がない」と吹聴しているためです。本気さが見えない中央銀行の政策を、誰が信用するでしょうか。』
期待インフレの大小は、インフレの要因の一つにしか過ぎない。これだけで大丈夫かのような話はダメだろう。

ということで私の浜田氏の評価は60点といったところだ。もちろん以前の財務省御用学者の赤点よりはずっとよい。