ゴングまであと33秒 | リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

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以前、判定内容に関して世間的に大騒動になった試合として渡嘉敷vsマデラ1をレビューしましたが、今回も80年代世界戦の中では有数のスキャンダラスな試合です。ただ、レフェリングや判定内容などはまったく疑問を持たれるものでなく、最終ラウンドのあの出来事だけが問題になりました。それがおそらく半永久的に語られることになるでしょうが・・・
それは88年に行われた井岡弘樹vsナパ・キャットワンチャイの第一戦。あの有名な最終ラウンドにおける(約30秒)早いゴングが打ちならされた曰くつきの一戦です。この試合が井岡叔父の評価を10%減にさせているのですから罪なものです。

解説は白井・具志堅の大物コンビ。
ストロー級王者時代の井岡は良く言えば若々しく、悪く言えば未完。そのためナパと比べて長身でリーチ差もあるもののそのアドバンテージをなかなか生かせない。具体的には左ジャブがほとんど出ず、懐も深くないので簡単に潜り込まれてしまう。それでも1Rにはナパの右フックに合せて左フックを決めて先制のダウンを奪う。
しかし2R以降はナパが早くもペースを取り戻す。3Rには井岡は鼻血を出し、ボディで身体が「くの字」になるシーンも。
5Rには右ストレートが顔面を捕え、ペースを再び手繰り寄せる展開、6Rにはようやく井岡の左が出て逆転。しかし7Rにナパがまた挽回。8Rにはナパの左ストレート、ダブルで井岡がコーナーまで後退。
終盤の10、11Rは井岡攻勢。しかし、その11Rの中でも白井氏と具志堅氏の解説は手厳しい。このままでは勝てない、パンチの精度が低い、逃げてないで行かないと!どこかの解説者も見習って欲しいものです。ねぇ、鬼塚さん、赤井さん。(佐藤修は喋り方からやり直し。話し方スクールに通って備えた故・山本小鉄氏を見習うべし。)
そして、問題の最終ラウンド。ラウンドの残り時間が折り返し点を迎えたところでナパが攻勢を強める。左フックが炸裂し、井岡がグラつきクリンチ。ブレイク後にもナパが連打を浴びせて井岡の身体が泳いだものの試合終了のゴング。ここでTV画面の秒針は2:27を指していました。つまり33秒早く終わってしまった失態というわけです。最終ラウンドをナパ10-9に付けると私の採点は114-113で1差ナパ。もしダウン宣告なら114-112になったわけですね。
ここで仮定なのですが、33秒間試合が続行されていたらどうなってたのか?
おそらくダウン宣告はされてるかも知れないものの、残り時間を考えてストップするにはナパの攻撃力では難しかったと思います。どちらにしろ判定に持ち込まれたわけでそうすると・・・

・115-113(井 岡)⇒114-113(井岡)
・113-113(ドロー)⇒112-113(ナパ)
・113-114(ナパ) ⇒112-114(ナパ)

となるわけで2-1でナパの王座奪取になるわけです。2戦目でナパが2-0で戴冠してるので1戦、それが早くなったかもしれないです。個人的には2Rと5Rが微妙かなと思いましたので判定自体に関しては目くじら立てる程のものでは無かったはずです。
この頃のナパは右フックと左ストレート位しか目立った武器は無い物の若さゆえのスタミナや体力は溢れんばかりの印象を持ちました。
ナパは落ちるのも早かったですが、日本にストロー級の意義を認めさせるうえで大きな功績を残したと思います。