テフロン加工の鍋の水が不味い話 

(後日談その⑤)


で、その翌日。さぁ、今日は直接電話対決だ! 朝っぱらから家事を超スピードで済ませて力んでいた。が、一向連絡は来ない。


で、私はその日の夜のバイトに備え色々準備し、ひと段落。時計をちらり。もう4時なのにまだ連絡が来ない。絨毯の上にごろりと横になって、ほっと一息ついていたら、5時までそのまま眠り込んでしまった。


携帯の呼び出し音で目が覚めた。むむむぅ? お、いかんいかん。眠り込んでしまった。今何時? おお、もう5時。そろそろ出かける支度をせねば。あ、携帯が鳴っているのか。出ねば。出ねば。 (以下、寝ぼけた私の記憶による記述である。)


「はひ」

「もしもし……」

……お、このねっとりと妙に落ち着いた中年女の声は!昨日電話をくれたデュ○ン社の担当者だ。  

 (以下デュ○ン社の担当者をⒹで記す。)


Ⓓ:「今よろしいですか?」

私:「はひ。」

まだぼんやりと半覚醒状態の頭を必死で振り起こす。そうこうするうちにも女性の声はすらすらと話を進めていく。


Ⓓ:「まずご質問いただいた①についてですが」

私:「はい」

(質問①=テフロン加工の鍋でお湯を沸かしたら金属臭い異臭がして不味くて飲めなかったのはなぜ?)

Ⓓ:テフロン加工は無味無臭ですので、『テフロン加工の鍋でお湯を沸かしてそのお湯に異臭がする』ということは、ありえないのです。もしそういうことがあったのなら、鍋に他の料理のにおいが残っていたということが考えられます。」
私:「はぁぁ。」 

……やっぱり鍋の残り香か。○西技研と同じ答えだね。


私:「でも、『他の食べ物のにおい』とかいうレベルの異臭じゃなかったんですが。金属臭いというか……」

Ⓓ:「そういうことが実際にあったというのですか? そういう事実をご存知だと?」

私:「は? ええ、ええ。もちろん。私が沸かして飲んだんですから。夫も不味いと言って驚いていました。」

……だから、わざわざメールまで出してお尋ねしたんだろうがっ。こっちがありもしないことを想像で聞いていると思っているのか? ……やっぱり感じ悪いわ~、この会社。


私:「で、実際、他の食べ物のにおいというより、すごく金属臭い感じで、飲めたものじゃなかったんですけど?」

Ⓓ:「そうですかぁ~? でも、金属臭いということはありえないんですよ。無味無臭なのですから。」

私:「はぁ」……まぁ、ここで言い合っても始まらないね。


Ⓓ:「それで、②についてですが。テフロン加工の器具でお湯を沸かすのは禁止事項ではありません。」

私:「そうですか。」……これも○西技研と同じだね。


Ⓓ:「③についてですが、テフロン加工が人体に有害だということは全くありません。」

(質問③=“カナリア報告書”など、テフロン加工の調理器具を加熱した際の危険性が取り沙汰されているが、少しでも有害性が認められている製品がこのように普及していることを製造者サイドとしてどう考えているか?)

私:「……でも、カナリアは死んでますよね? そのことについてはどう……」

Ⓓ:オウムをご存知ですか?」

私:「はぁぁ?」


……いきなり何を言い出すんだ。今はカナリアの話をしているのだぞ? いや、今のイントネーションからすると、鳥のオウムではなく、狂気の宗教集団「オウム」のことか?


私:「はい? オウム真理教のオウムですか?」

Ⓓ:「そーです。山梨だったか、カミクイッシキとかの、ありましたよね。あの捜査の時に、警察がカナリアを一番先頭の人に持たせていましたね。覚えていらっしゃいますか? カナリア、ご存知ですよね?」


……やっぱりオウム真理教の話か。いきなり、なぜに?


Ⓓ:「なぜ、カナリアを持っていったか。ご存知ですか? それは、カナリアが最もガスに弱いからです。ガスに最も敏感に反応するからです。それだけカナリアはガスに弱いのです。すぐに死んでしまうのです。」


……オウムのサリン工場へガス探知機として連れられたカナリアと、一般人の台所のカナリアとは立場が違うと思うが……っていうか、台所はサリン工場と違うでしょうがっ! こ、こ、こんなことを言い出す人に、なんと言い返せばいいの~~~っ? 


私:「カナリアが弱いのは知っていますが、家の台所で死んでいるというのは……」

Ⓓ:「ガスは日常のガスレンジで火を使ってサラダオイルを炒めていても発生しているのです。そのガスでだってカナリアは死ぬのです。


……え? そうなの??? サラダオイルも有害なの?またまた何を言い出すんだろう????


私:「つまり、カナリアは弱いから死んだけど、人間なら死なないから有害でないと? ガスに弱いカナリアだろうが、生物が死んでいるのだから有害なのでは?」

Ⓓ:「いいですか? ストーブの使い方を間違えて二酸化炭素中毒になる場合もありますよね。亡くなる方もいますよね。ガスは至る所に発生しているのです。」

私:「……。」

Ⓓ:「カナリアは弱いから死んだのです。カナリア、ご存知ですね。小さいですよね。頭などとても小さい。微量のガスでも耐え切れないのです。人間とカナリアでは大きさが違いますよね。」


……この方はカナリアが死ぬことと人間が死ぬこととは全く別問題だと言いたいらしい。で、ある生物に対して有害なものでも、それがそのまま人間に有害だとは言えない! と言いたいらしい。


私:「人間はすぐに死ななくとも、カナリアが死ぬ以上、有害と言えるのでは?」

Ⓓ:「いいですか?カナリアは……(略)……わけです。」

私:「でも、テフロン加工の調理器具を空焚きしないようにって、よく言いますよね。煙が発生するほど高温になると……」

Ⓓ:「よろしいですか? 空焚きを避けて頂くのは、有毒ガスが発生するからではなく、フッ素加工が傷むからです。大事に長く使って頂くために空焚きはおやめくださいということです。有毒ガスが出るからというわけではないのです。テフロン加工のフライパンは2百○○度で……(略)……わけです。」

                    つづく

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