テフロン加工の鍋の水が不味い話 

(後日談その⑥)


どうしても「有害」と言葉にしてはいけないらしい。


で、ちょっと矛先を変えて、テフロン加工の再加工について尋ねてみた。


私:「わかりました。ところで、『テフロン再加工』ということを耳にしたのですが、そういうことは可能なのですか?」


Ⓓ:「は? 再加工ですか? はい。ただし、大変です。フライパンの取っ手をはずしたりして、解体してから塗り直すのです。それから、それを一旦乾かしたりして、再び取っ手を取り付けるわけです。手間が大変かかるのです。ですから、あまり行われておりませんね。」


私:「はぁ、それじゃ、再加工するよりは買い直した方がいいわけですね。」


Ⓓ:「はぁ。そうですね。」


私:「で、古くなったテフロン加工のフライパンというのは、捨てるとき、『金属ゴミ』として出していいんですか?」


「は? ふっ。もちろんですとも! あれは金属なんですから。」


……金属ゴミって、高熱で焼却されたりするんじゃないの? ってことは、テフロン加工の調理器具はその際高熱でPFOAを発生させるから、まずいんじゃないか?


……って聞いてみたかったけれど、また「いいですか?カラスをご存知ですか?」とか言い出されそうなのでやめておいた。


本筋からは反れるが、なぜ今回「メール」ではなくて「直接電話」をかけてきてくれたのかについても聞いてみたかったが、「いいですか? ハトをご存知ですか?」とか言い出されそうなのでやめておいた。


聞きたいことはもっと色々あったはずなのに、もう出てこなかった。寝ぼけたときのことを想定して、ちゃんとメモに書き出しておけばよかった……。


(でも、ちゃんとメモしておいても、寝ぼけていなくとも、小心者の私は、電話ではアゥアゥ言ってしまい、当意即妙に論じ詰めて追求することはできなかったろう。)


わざわざお電話でご回答を頂いた旨お礼申し上げて、電話を切った次第である。


ふぅぅぅ。

それにしても……


◎“生体に影響を及ぼすガス”は我々の日常に溢れていて、特にテフロン加工の鍋が生物に危険なわけではない。


◎テフロン加工の調理器具で料理をしている台所の傍で飼われていたカナリアがたくさん死んだからといって、人間が死ぬわけではない。


というのが、デュ○ン社から得られた答えであった。


デュ○ン社は当局からPFOA(パーフルオロオクタン酸、または ペルフルオロオクタン酸 Perfluorooctanoic acid、過フッ素化カプリル酸) という有害物質についての調査報告を受けても、自分たちは違う数値を出して、安全性を強調している(ようだ)。


担当者の方に、「あなたの娘さんが妊娠して、これからあなたの初孫が生まれるというとき、その妊娠中の娘さんにテフロン加工の調理器具で調理させられますか? 」 と聞いてみたかった。でも、きっと 「もちろんです。胎児はカナリアよりガスに強いのです。いいですか? テフロン加工は安全なのです。」 と答えるのだろう。


テフロン加工に限らない。フロンもしかり、アスベストもしかり。我々は利便性や経済性を重視し、一面の安全性を鵜呑みにして、環境に、人体に、生体に有害なものをいかに蔓延させてきてしまったことか。そして、その有害性にいかに口封じをしてきたことか。


便利になっていくことは素晴らしい。経済的効率を高めることも素晴らしい。しかし安心して住める地球環境や健康な体を脅かすものであっては、本末転倒。


テフロン加工の調理器具について言えば、その危険性は大きいというのが私の感触だ。テフロン加工の調理器具とPFOAという有害物質の関係が客観的に数値で出ている以上、そう考えざるを得ない。


しかし、最近のフッ素加工の調理器具については何とも言えない。詳細はわからない。 “人体への安全性を謳っているこびりつかないフライパン” などは売っていない。


フッ素加工と言えども既に「テフロン加工」を謳っていない調理器具は、「テフロン加工」とは違った成分を用いて加工しているのかもしれない。色々なネーミングの加工が開発されているようだ。もしかしたら、同じ轍(てつ)は踏むまいと企業努力しているかもしれない……?



しかし、数年経って調理器具の表面の加工が剥げてきたら、買い換えるなり、再加工なりが必要なフッ素加工の調理器具って、私個人的には気が気ではない。


私は今までずっとフッ素加工のフライパンなど使っていた。とても重宝していた。なんといっても焦げ付かないのが嬉しい。


使用の際は常に中火以下を保ち、空焚きはせず、専用のフライパン返しを使い、そっと洗い、いつ傷がついてしまうのやら? と注意しているうちに、「あれ? これは傷かな?」 とフライパンの表面のかすかな変化に気づく。


やがて、それがはっきりした傷となり、まだ平気かな、まだ使えるよね。これだけ傷ついても大して問題ないからいいか……と使い続ける。こうなると、だんだん使い方も乱暴になる。危険に対する警戒心が麻痺してくる。 ……そのことがとても危険だ。



最後の最後に、今一度、我が家のテフロン加工の鍋でお湯を沸かして飲んでみた。


口に近づけてなんだか嫌なにおいを感じた。

一口飲んで、やっぱり不味かった。


で、今一度ステンレスの鍋でお湯を沸かして、その臭いをかいだ。……やはり嫌な臭いを感じない。飲んでみた。嫌な味も感じない。普通の白湯だ。


とにかく、我が家のテフロン加工の鍋でお湯を沸かすと不味いのだ! というのが私の結論だ。


ってことで、本日、とうとうテフロン加工(フッ素加工)の鍋とフライパンを「金属ゴミ」に出した。


あの鍋たちはどこかで焼却されてPFOAを発生させるのだろうか? それとも、そうならない処理がゴミ処理場でなされるのだろうか?


……そこまで追跡調査する元気がないので、今回のテフロン加工の鍋の一件はこれで打ち切ることにする。


これからは日々、火加減との勝負が待っているのね。ちょっと気が重い……。



しかし、最後に最もおかしい! と思ったのは、私自身の発癌物質に対するいい加減な神経質さだ。


自分が知らないうちに発癌性物質を体内に蓄えさせられてしまうのは我慢ならないくせに、己はすーぱすーぱと煙草を吸っている。


煙草こそ発癌性が高いのだし、その吐き出した煙こそ発癌性が高く、吸いたくもない人の肺を犯すかもしれないのだ。


テフロン加工を責める前にまず己の喫煙を止めよ!である。


ってことで、今日から禁煙します。――;         おしまい

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