U-20ニュージーランドW杯2015中米予選、第3節。VSエルサルバドル。 | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

U-20ニュージーランドW杯2015中米予選、第3節。VSエルサルバドル。


 これが「W杯予選」というものか…。不測の事態が発生しました。

 コスタリカとの第2節にスタメン出場してチームの勝ち点獲得に大きく貢献したGKが、そのコスタリカとの試合中に接触プレーで全治3週間の怪我を負い、この日のエルサルバドル戦に出場できなくなってしまったのです…。

 チームにとって、あまりにも痛過ぎる彼の離脱…。僕の中では「この予選を勝ち抜くには、このGKの存在が必要不可欠」と考えていただけに、ショックは計り知れませんでした。ましてや代わりに出場するのが、パナマ戦でミスを犯して戦犯の1人となってしまったGK…。「どうしてこんな事になってしまうのか…」 正直、不安は大きかったです(チームにGKは2人しかいません。全登録選手も規定で18人のみ)。

 それでも僕の中には、コーチとしての1つの哲学がありました。

 「GKコーチである自分がGKに対して不安を感じていては、出場するGKが自信をもってプレーできるはずがない。出場する事が決まったからには、最大限の自信をもって送り出してあげたい」

 内心は「不安」です。しかし、自分を騙してでも何でもとにかく「あいつなら大丈夫だ」と自信をもって送り出してあげる事が大事。GKコーチである自分が不安を抱えていては、僕の表情や言動から出場するGKも察して不安になってしまいます。能力的には、このGKが厳しいのは分かっている。けど、その限られた彼の能力の中でも「100%」の力を引き出してあげる事が重要。僕は彼に、試合前にこう声をかけて送り出しました。

 「なぜ神様が今回お前にパナマ戦のリベンジのチャンスをくれたか分かるか?それはお前にそれだけの力があるからだ。もし力がなければ、神様はお前にチャンスを与えなかっただろう。俺はGKコーチとしてお前の力に確信をもっている。今のお前がやるべき事はただ1つだけ。とにかく『自信』をもってプレーしろ。良いプレーしようとかそういう事は考えるな。自分を信じる事だけ。そうすれば必ず、お前は良いプレーができる。大丈夫だ。お前はできる」



 こうして「負ければ予選敗退」を意味する重要なエルサルバドル戦が始まりました。

 試合前から激しい豪雨に見舞われ、ピッチは水浸し…(一時は試合延期も考えられたほどの豪雨だった)。そのせいで試合前アップをピッチ内で行う事もできませんでした。このようなピッチ状態では、特にグラウンダーとバウンドのシュートとパスは不規則な変化をするので処理が容易ではありません。GKにとっては正に「最悪のピッチ状態」でした。

 その事をエルサルバドルもよく分かっていて、いきなり立て続けに2本のバウンドシュートを放ってきました。彼らには「パナマ戦でミスを犯したGK」という情報も当然入っていたのでしょう。打たれた瞬間は、本当に肝を冷やしました…。

 しかし、この日スタメン出場したGKは「自信」をもってこの2本のシュートを確実かつ安全に処理(キャッチ)。この2つのプレーを見て、「よしっ、いける!」とGKコーチとして手応えを掴みました。

 それでもパナマ戦もこのGKは前半は良かったのに後半に突如豹変してミスを犯した前例があります。90分間…最後のロスタイムの1秒が終わるまで全く気を抜く事はできません。ハーフタイムには、後半に入って突如パフォーマンスを落としたパナマ戦の反省から、通常、僕はハーフタイムにボールを使ってスタメンGKに再アップはしない方針なのですが、この試合では行いました。大会に入ってからの方針転換。それでも「良い」と思った事は取り入れなければならない…「変える」勇気が必要でした。

 前半ホンジュラスのGKは1対1の決定的ピンチを的確なポジショニングと「先に倒れない」我慢の守備で防ぐなど、好プレーを連発。ハーフタイムに監督も「前半を無失点で抑えれたのは、GKのスーパーな活躍があったからだ」とミーティングで話すほどの活躍でした。

 ただ、本当の勝負は「後半」です。パナマ戦では乗り越えられなかった「後半」…。果たして乗り越える事ができるか…?



 勝負の後半が始まりました。チームとしては前半よりもペースを掴んだものの、積極的に攻めに出た事で逆にカウンターも度々食らい、ピンチを招きます。

 それでも、この日スタメン出場したGKは後半に入ってからも自信と集中力を失う事なく、好プレーを連発!!至近距離からの強烈なシュートをファインセーブで弾き返すと、再び訪れた1対1のピンチも勇気ある鋭い飛び出しで阻止します!!


 そして…。


 ついに90分間を「無失点」で守り抜く!!!パナマ戦で乗り越えられなかった「後半」の壁を魂で乗り越え、見事にリベンジを果たしました!!!



 これは彼だけにとってのリベンジではなく、GKコーチである自分にとってもリベンジでした。確かにコスタリカ戦で交代して出場したGKがチームを救う活躍をしたとは言え、本当の意味でのリベンジを果たすためには、「パナマ戦でミスをしたGKが、次に出場した試合で好プレーをする」必要がありました。試合前に話した通り「自信」をもって己の力を100%出し切り、チームを無失点に導いてくれたGK…。中1日で6連戦という超過密日程、超短期決戦という修正が非常に難しい状況の中で、よくぞ立て直してくれました。試合後にはみんなが「GKが素晴らしかった!」と絶賛しました。本当に…本当に、よくやってくれた…。この日スタメン出場したGKには感謝の気持ちで一杯です。2試合連続で、異なるGK2人にチームも自分も救われました。GKコーチとしてまた1つ、大きな大きな「壁」を乗り越えられた気がしました。


 が、しかし…。それでも、勝てない。


 決定的チャンスはあったものの、またしても生かす事ができず、無得点で痛恨の「0-0」引き分け…。3試合未だに未勝利で勝ち点2…。中米予選突破圏内の「4位」以内に入れていない、非常に苦しい状況が続いています。

 この結果により、次のグアテマラ戦に「勝利」できなければ中米予選突破の可能性が事実上、消滅…という崖っぷちに陥りました。

 グアテマラは初戦でコスタリカを「1-0」で破ると、続く第2節も開催国のエルサルバドルに「2-2」で引き分けて無敗の勝ち点4で「3位」に着けており、今、完全に波に乗っています。想像を絶する厳しい試合になるのは、間違いありません。

 このグアテマラ戦に「勝利」する以外に、我々がW杯に出場する道は、ない(引き分けでも敗退)。

 全てを懸けて…どんな形でも良いから、とにかく勝つ。こんなところで終わってたまるか。夢はまだまだ大きい。恩返ししなきゃいけない人も、たくさんいるんだ。絶対に…絶対にグアテマラに勝つ。何が何でも、勝つ。我々なら、できる。そう信じている。お願いだから勝たせてくれ、神様…。頼む…。頼む…。



※試合ハイライト動画。青がホンジュラス。この日、他試合はコスタリカがパナマに「2-3」敗北。3試合で1勝も挙げられず(2敗1分)、コスタリカ監督は試合後に電撃解任されました…。中1日6連戦という超短期決戦での監督解任は、異例。ホンジュラスだけではなく、本命のコスタリカもとてつもなく厳しい戦いを強いられている今回の中米予選…。正に、群雄割拠の修羅場…。必ずこの修羅場を勝ち抜き、W杯出場の夢を叶えます!!








① 【U-20ニュージーランドW杯2015中米予選、第1節。VSパナマ

② 【U-20ニュージーランドW杯2015中米予選、第2節。VSコスタリカ





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