U-20ニュージーランドW杯2015中米予選、第2節。VSコスタリカ。 | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

U-20ニュージーランドW杯2015中米予選、第2節。VSコスタリカ。


 今予選の優勝候補パナマ相手に60分以上を1人少ない10人で戦い「3-4」逆転負けを喫したショッキングな初戦黒星から「中1日」。共に初戦を落とした「ブラジルW杯ベスト8」の強敵コスタリカとの第2節を迎えました。

 この試合を迎えるに当たり、大きな決断を下す事となりました。「GK交代」です。パナマ戦ではGKがミスを犯して敗北の戦犯の1人となり、GKコーチとして大きな批判を浴びる事となりました。今回のコスタリカ戦で起用するGKは元々は6ヶ月前にチームが発足した時から自分の中では「スタメンGK」で考えていたのですが、エルサルバドル遠征では所属クラブで怪我をしたため試合出場ができず、グアテマラ遠征ではビザなどの書類上の問題で帯同できず、コスタリカ遠征ではアメリカMLSのチームのトライアルに行っていて不在など、6ヶ月間でただの一度もU-20代表として対外戦でプレーする事ができず、パナマとのW杯予選初戦に「起用したくても起用できない」状況となってしまいました。

 しかし、パナマ戦の結果と出場したGKの不甲斐ないプレーを受け、「いくらこれまでただの一度も対外戦でプレーした事がないとは言え、勝つためにはGK交代するしかない」とチームで決断する事となりました。どんなに素晴らしいGKでも、対外戦を一度もプレーしないまま、いきなり最も大事な「W杯予選」という本番でプレーするのは、容易ではありません。しかも相手は強敵コスタリカ。絶対に負けられない「中米クラシコ」…。リスクがあるのは、重々承知です。それでも「GK交代」という選択に踏み切りました。

 これでこの「GK交代」が失敗に終わってコスタリカに敗れれば、W杯出場に暗雲が立ち込める大ピンチに陥るだけじゃなく、「GKコーチ」としての自身の評価も失墜する事となります。

 本当にもう、後がない状況…。チームの運命、自身の運命…全てが、この日スタメン出場するGKに託される事となりました。

 
 そんな中で、ついに試合が始まりました。

 初戦のパナマ戦では緊張からか弱気なプレーをする選手が数名いたホンジュラスですが、この日は開始直後から全員が「絶対に勝つ!」という気迫溢れるプレーを披露。個人能力でもコスタリカを圧倒し、試合を優位に進めます。

 「今日はいける」…誰もがそう思っていたのですが…。前半20分頃…。CKのこぼれ球を豪快に蹴り込まれて、コスタリカに先制点を許してしまいます。「0-1」…。

 良い内容で戦っているのに、またしても相手に先制点を奪われる苦しい展開…。それでもその僅か5分後。直接FKを叩き込みホンジュラスが同点に追い付きます!!スーパーゴール!!「1-1」!!

 その後も試合のペースを握ったのはホンジュラス。GKとの1対1の決定的チャンスを2回得るも、相手GKの好守でゴールならず…。さらにはGKを破る強烈なシュートを放つも、カバーに入ったDFに奇跡のクリアーをされ、どうしても追加点を奪えない…。

 こうしてゴールが生まれず「1-1」同点のまま迎えた後半の終盤…。信じられない出来事が起こります。相手のドリブル突破に反応したホンジュラスGKがボールにフロントダイブ…倒れるコスタリカFW…審判の笛が鳴る…。PK…!?

 いやいや、明らかにボールに行ってるだろ!?GKとしてはよくある普通のプレー。これでPKを取られたのは、長いサッカー人生の中でも初めて。こんな理不尽な事があっても良いのか…?ふざけんな!!

 怒りが収まりません。それでも、判定が覆る訳もなく…。残り時間はあと10分弱。ここでPKを決められると、試合は一気に難しくなります。正に崖っぷち…。全ては、この日スタメン出場したホンジュラスGKに託される事となりました。頼む…。


 そして…。

 このPKをコスタリカが外す!!!!!!!!!!


 実はホンジュラスGKはPKを取られたプレーの際にコスタリカ選手と接触して、治療のために5分試合が中断する怪我を負っていました。プレー続行できるのか微妙な状況…。それでもこのGKは治療の際もずっと「絶対に俺がPKを止める!」と大声で吠え続け、気迫で完全にPKキッカーを圧倒。相手が萎縮し、PK失敗を誘発しました。GKの気迫勝ち!!チームを絶体絶命のピンチから救いました!!ヨッシャァ!!

 試合はこのまま「1-1」で終了。引き分け。確かに何度となくあったチャンスを外して勝てなかった事は痛かったですが、強敵コスタリカ相手に自分たちの力を発揮して内容で上回った事、勝ち点を獲得した事はチームにとって大きな自信に繋がりました。

 そしてGK。前述のPKはもちろん、90分を通じて相手のストロングポイントであるハイボールを完璧に封じ、エリア内の1対1の決定的ピンチも抜群のポジショニングと飛び出しで防ぐなど、この日の試合のMVP級の活躍を見せチームを救いました。
チーム発足6ヶ月間でただの一度も対外戦をプレーできないまま突然の出場という極めて難しい状況だったにも関わらず、平常心で好プレーを連発するメンタルの強さと勝負強さには、脱帽です。初戦でGKが最悪なプレーをした事でGKコーチとして崖っぷちに追い込まれていた自分の事も救ってくれました。この日のGKの活躍は僕の人生を大きく変えた…と言っても過言ではありません。彼には感謝の気持ちで一杯です。チームと僕を救ってくれて、本当に…本当にありがとう…。

 次の第3節の相手は、開催国のエルサルバドル。ここまでの2戦で1勝1分の無敗で2位に着けている難敵。2試合で獲得したPKが実に「4本」(第2節のグアテマラ戦は何と3本のPKを獲得!)と、思いっきり「地元」ぶりを発揮しており、非常に厳しい試合になるのは間違いありません。また、エルサルバドルはホンジュラスが出場できなかった前回のU-20W杯にも出場しています。簡単に勝てる相手ではありません。

 しかし、今の我々なら必ず勝てると信じている。自信…いや、「確信」をもって試合に臨み、必ずエルサルバドルに勝って中米予選突破に前進します。必ず…。



※試合ハイライト動画。青がホンジュラス。疑惑のPK判定も。順位表も最後に出てきます。





① 【U-20ニュージーランドW杯2015中米予選、第1節。VSパナマ



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