痛恨の交代。第6節。VS「4大ビッグクラブ」モタグア。ホーム。 | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

痛恨の交代。第6節。VS「4大ビッグクラブ」モタグア。ホーム。



負ければ「クビ」。第5節。VS無敗で首位の古巣レアル・ソシエダ。アウェーの続きです。



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -VSモタグア。2013年9月8日①



 「サンティ二(前節のスタメンGK)は使わない。GKを交代する」


 試合前の1週間の練習の中で、監督が僕にこう告げました。せっかく前節、無敗で首位の最強の古巣レアル・ソシエダにアウェーで初めて土をつけて、今季初の完封勝利を飾ったのに…GKサンティ二はその立役者なのに…なぜ…?

 理由はこうです。【前回ブログ】にも書いたようにレアル・ソシエダ戦でサンティ二はチームを完封勝利に導く活躍をしながら後半残り20分というところで負傷交代…。しかし試合翌日に1日のオフを挟んで迎えた週の頭の練習…。サンティ二は怪我などまるでなかったかのように、ピンピンした姿で練習に臨みました。


 …これに、監督がキレた。


 「試合途中で交代するくらい酷い怪我だったら、その2日後に元気に練習できる訳がない。アイツが負傷交代したおかげで、残りの交代カードが使えなくなって試合が難しくなった。俺はサンティ二のこういう所が嫌いなんだ」

 要するに監督からすると、サンティ二は試合途中でビビって、怪我と嘘をついて逃げ出したと…。あの「負傷交代」を監督はそう捉えているのです。監督の言う事は一理あるし、確かにサンティ二の一連の行動からは、そう誤解されても仕方がない…。けど…。


 僕の主張を書く前に、昨季まだ僕がパリーヤス・オネに居なかった時(2部リーグ時代)のサンティ二に関して書きたいと思います。監督や他のコーチングスタッフの話によると、サンティ二は高い能力がありながら、その「メンタル」の弱さで試合中に致命的なミスを連発…。それで監督の信頼を失ったサンティ二は、ずっと守ってきたスタメンの座もシーズン終盤の大事な時期に失ったそうです。課題は「メンタル」。パリーヤス・オネに限らず、これまで所属してきた全てのチームでそう言われ続けてきたらしい…。だからこそ今回の一連の出来事も監督は「メンタル的問題だ」と敏感に反応。またしても信頼を失い、スタメンから外される事となってしまいました。


 これに対して、僕の主張はこうです。

 「確かにサンティ二にはそういう部分(メンタル的な弱さ)があるかもしれない。今回の件も、試合を途中で逃げ出したと思われても仕方がないし、監督が言っている事は正しい。しかし昨季の事や他チームでの事は知らないが、自分は『メンタル』はアプローチ次第で改善できると思っている。逆にサンティ二が持っている『GKとしての才能』は、他のGKがいくら練習したからと言って決して身に付くものではない。能力は間違いなくパリーヤス・オネの3人のGKの中で断トツで最も高いし、唯一、『失点しない運』と『勝ち運』も持っている。ここを我慢して乗り越えられれば、メンタル的にも1人の選手としても一皮むけて、ホンジュラスを代表する素晴らしいGKになれる可能性を秘めている。チームが今後、勝ち点を積み重ねていくためにはサンティ二の力が絶対に必要だし、スタメンで起用すべきだ」


 …こう、監督始めコーチングスタッフに説明しました。


 ところが、監督には監督の哲学がある。僕の必死の説得も監督の決断は変わらず、サンティ二は今回のモタグア戦のスタメンから外される事となりました…。

 代わりに監督がスタメンGKに指名したのは、マリオです(僕が【以前のブログ】で「まだ1部リーグで戦える能力はない」と書いたGK)。他のコーチングスタッフからは「マリオもレアル・ソシエダ戦で途中出場して20分間プレーし、良いプレーして無失点に抑えたから大丈夫じゃないか?」と言われましたが、僕は「いやいや。確かにレアル・ソシエダ戦のマリオのプレーは良かったし、20分間を無失点に抑えてくれたが、プリメラ(1部リーグ)で『90分間』を無失点に抑える力は残念ながらまだない。それがあるのは、パリーヤス・オネのGKの中では唯一、サンティ二だけだ」とGKコーチとしての見解を伝えました。

 正直、GKコーチである自分には、マリオがスタメン出場して「勝てる」イメージが湧いてこないのです。マリオが出場すれば負ける事が濃厚…それが分かっていながら、送り出さなければならない…GKコーチとして、これほど辛い事はありません。しかし、僕は監督の事を信頼・尊敬しており、その監督が下した決断(GK交代)なら尊重せざるを得ない…。監督の決断は「絶対」なのです。


 今季、ホーム2試合目(1試合目はオリンピアに「0-1」惜敗)。

 「4大ビッグクラブ」の1つモタグア相手に、パリーヤス・オネの歴史上、1部リーグ「ホーム初勝利」なるか…?そして、初の「連勝」なるか…?


 
結果は…?



※黄色がパリーヤス・オネです。



 


 パリーヤス・オネ、「1-2」でモタグアに惜敗…。



 これで「ホーム2連敗(2戦2敗)」。またしてもホームの観客に勝利をプレゼントする事はできませんでした。無念…。リーグのムチャクチャな日程により第1クールは全9試合中たったの「3試合」しかホーム戦がないので、絶対にホームでは勝たなければならないのだが…。その貴重なホーム戦で負けていては、話にならない…。

 僕が推すサンティ二に変わってスタメン出場したGKマリオは、安定した守備を見せてくれましたが、2失点目では僅かにポジションがニアに寄り過ぎてしまい、ファーサイドにアッサリとシュートを決められてしまう…。その国の「最高の選手」たちが集まるトップリーグでは「僅かなミス」を決して逃してはくれません。その「僅か」な部分の差を埋めてチームを勝利に導けるGKは、パリーヤス・オネの中ではサンティ二しかいないのだが…。

 チームとしても、何度も決定的チャンスを作りながら1点しか取れず、逆にミスから相手に得点を奪われて敗戦…という、これまでの「負けパターン」に逆戻り…。

 「スタメンGKがサンティ二だったら勝てていた」とは言いませんし、そんな事は誰にも分かりません。しかし1つだけ言えるのは、せっかく前節に最高の勝ち方をして良い流れになったのに「GK交代」で自らその「流れ」を消してしまった事。僕にとっては正に「痛恨のGK交代」となってしまいました…(負けた要因は「GK交代」だけではありませんが、そこはやはり大きかった)。


【第6節を終えてのホンジュラスリーグ順位表】

1位:オリンピア         勝ち点13 得失点差+6
2位:レアル・エスパーニャ   勝ち点13 得失点差+5
3位:レアル・ソシエダ     勝ち点11 得失点差+6
4位:デポルテス・サビオ    勝ち点10 得失点差-2
5位:モタグア          勝ち点 8 得失点差+1
6位:マラトン           勝ち点 6 得失点差-2
7位:ヴィクトリア         勝ち点 6 得失点差-3
8位:パリーヤス・オネ  勝ち点6 得失点差-4
9位:プラテンセ         勝ち点 5 得失点差-3
10位:ビダ           勝ち点 5 得失点差-4 



 パリーヤス・オネ、前節から順位を1つ落として「8位」に後退…。幸いだったのが、順位が近いチームが全てコケた事。これにより負けたにも関わらず、順位の後退を最小限に抑える事ができました。まだ、「運」はある…。

 なかなか波に乗り切れず、浮上のキッカケが掴めないパリーヤス・オネの次節の相手は、現在「CONCACAFチャンピオンズリーグ」(北中米カリブ海地区のクラブ王者を決める大会でアジアの「ACL」に相当)に出場している
強豪ヴィクトリア。しかも、アウェー戦…。CONCACAFチャンピオンズリーグ出場に伴う過密日程に苦しみ、今季のリーグ戦では未だに7位と本調子ではありませんが、「個」の能力の高さはホンジュラスリーグ屈指でタレント揃いの難敵…。2012-2013シーズンの前期・後期の「総合勝ち点」が最強オリンピアに次ぐ「2位」の実力は伊達ではありません。



 果たして勝って、今度こそ波に乗る事ができるか…?


 そして、「スタメンGK」の行方は…?



※モタグア戦の前に、パリーヤス・オネのトレーナーのマルティンと。
例の「不衛生度MAX・プライバシー0(ゼロ)・サソリも出る最強最低クラブハウス」を「脱走」してから、少し顔と体全体に肉が戻ってきたような気が…。おかげ様で当時よりは遥かに日常生活は安定し、健康的に過ごせています。ふぅ…。

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -VSモタグア。2013年9月8日②



つづく



◆連絡先メールアドレス: cafehondurasyoji@hotmail.co.jp