まつやまひろしの“抜けないトンネル”第68回 | ゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 松山洋の「絶望禁止」ブログ

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定期的に最新の“思っていること”や弊社で刊行した書籍に掲載したコラムのアーカイブを掲載していきます。

電撃「マ)王2011年07月号コラムより


▼これまでの「抜けないトンネル」コラムアーカイブ
http://ameblo.jp/cc2-piroshi/themeentrylist-10075270773.html


■第68回“大好きよ、薫。”

『八日目の蝉』にハマりました。
きっかけは映画だったのですが。

久しぶりにシビれました。

結局、映画を観た後に
そのまま原作本も購入して
即日で一気に読みました。

いやあ、それでもまだ足りない。
もう一度、映画を観に行こう
、なんて思ってます。
(※2011年当時)

それくらい(私にとっては)ハマる作品でした。

そんな素晴らしい作品なのですが、
現在、結構困っていることがあります。

なかなか本作を紹介するのに
ふさわしい言葉がみつからず、いつも苦労するのです。

ウチのスタッフにも、観たあとに
“いいよ。絶対観ろ。”
と言うのですが。

彼らは必ず……
“ふーん、どう「いい」んすか?”
と聞き返してきます。
(うーん、なかなか人の話を
簡単には鵜呑みにしない頼もしいスタッフ達です。)

さて、どう紹介しよう。

えっとね。
“泣ける。”

……いやいや。それじゃ言葉が足りない。

うーん。
“とにかく凄い。”

……いや、それじゃ何も伝わらない。

“主演の永作博美さんがいい。井上真央さんもいい。”

……これじゃただキャストを好きなだけに聞こえる
(もちろん素晴らしいのですが)。

えーっと、えーっと、アレ?
なかなか言葉が出てこない。

この衝撃と感動は“どう”伝えればいいんだろう?
どのように表現すれば伝わるんだろう。

実際に映画館で涙を流したのも事実。
そして脚本や、役者の演技や、監督のこだわりや、
全体の構成力含めて、“気持ち”を持っていかれたのも事実。

本当にすごく感動したのです。

そしてようやく気付いたのですが。
恐らくは“感動して泣いた”という表現以上の
“言葉が無い”
のだということに。

少なくとも私の中には、“それ”以上の感動なのに
それを表現する言葉が思い当たらない。

“フツーの感動じゃないんだ。フツーの泣ける映画じゃないんだ。”
とすごく子供のような言葉でしか表現できない自分が情けない、
と思いつつも。

今までの言葉では表せないくらいの感動と
完成度を誇る作品であるということだとも思います。

私は作品を観ると、いつも自分の『心の引き出し』にしまいます。
この作品は“ハリウッド典型的アクション系”とか
“ブレアウィッチ系”とか“韓国虐殺系”とか
“ぬるいファッション恋愛モノ”とか。

だいたいの作品は、この『心の引き出し』の
どれかのカテゴリーに収まることが多いのですが。

まれに、
“この作品はどの既存作品の枠にも収まらない
新しくかつ特別な作品だ。”
と思った時には、新しい『引き出し』を作ってから
心にしまうのです。

本作ですか?
当然、新しい引き出しが生まれましたよ。
引き出しにしっかりと『八日目の蝉』と書いてあります。

【ひろしの今月の逸品】

実はこの『八日目の蝉』という作品。
映画と原作でだいぶ構成や内容が異なるのです。

もちろん、もともと2007年に出版された本をもとに
映画が制作されていますので、
映画の脚本家・奥寺佐渡子さんや、
監督の成島出さんの演出でありアイデアだと思うのですが。

原作では時系列に沿って、順番に物語が描かれています。
最初(第1章)に子供を誘拐して逃亡生活を図る
野々宮希和子の話。

そしてそれから17年後。
誘拐された娘・秋山恵理菜の成長した“その後”の物語(第2章)。

映画では基本的に“現在”から“過去”が
フラッシュバックや回想として描かれています。

原作には登場した人物も、映画では出てこない部分があります。
そもそも原作をそのまま全部描こうとすると、
とても147分にも収まらなかったでしょう。

もうひとつ、衝撃なのは(若干ですが)映画と原作では
“結末”が異なります。
この“若干、異なる”部分が、ハマっている私には
大事件なのです。

だから映画と原作は全くの別作品だとすら思います。
どちらもオススメです。
それぞれ全く新しい気持ちで楽しめると思いますよ。

電撃「マ)王2011年07月号コラムより


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