松山洋による“「Solatorobo それからCODAへ」全記録vol.2”【2】 | ゲーム制作会社 サイバーコネクトツー 松山洋の「絶望禁止」ブログ

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そうすると。

“あー、うーん、なるほどねー”なんてつぶやきながら。

私が(3時間かけて)描いた樹木を1秒で消して。
真っさらになったキャンバスに、ワケのわからない順番と速度で描いていく。

その間、ざっと30秒。(松山の体感速度)


心の中で“ギャースッ!!!”って、叫ぶ暇もないです。


しかも、出来上がったその樹木が、極上。
私が描いた樹木の100億倍くらい良くできてる。(松山の体感比較)


つか、なんか磯部が描いたこれが正解で、それ以外は全部偽物みたいな。
それくらい決定的なクオリティ。

結局、レサーカの街の中にある樹木はこの時に
磯部が(30秒で)描き直したものをそのまま使用することになりました。

というか、それ以上のものを描き上げる自信も
ガッツも生まれてこないぐらいのクオリティの差を感じたのです。

“うん、これは変な意地をはって同じ個所をいつまでも自分で描き直すことよりも、
たくさんの物量を全体的にバランスよく作らなくては”
と自分に言い聞かせましたが、
今もこんな手記でみっともなく告白してしまうくらいにヘコんでました。

と、同時に。

“なるほど。こんなにも俺とリーダーには実力の違いがあるのか。
しかもその差がどれくらいなのかもわからないくらいに悲劇的に絶望的に距離が遠い。
100億倍ってなんだよ。アホか、俺は。”

うーん。

“こりゃ、人の2倍努力してもかなわないな。”

そんなことを考えて。

“じゃあ、3倍やろう。”

こうして私の“3倍作戦”がスタートしたのです。




“3倍作戦”とは!!

そう。

働く時間を、自主的に“3倍”にする悪魔のプラン。

1日が8時間労働なので。

かける3倍で24時間。


ま・よーするに“帰らない”ということですね。

会社の自分の机の下に、仮眠用のベッドも用意しました。
“帰らない”と言っても、“眠らない”わけではありません。

効率のことを考えても、少しだけでも仮眠はとったほうがいい。

なので。


自分でホームセンターに行って、ビーチマットを買ってきました。
文字通りビーチで使う、空気入れて膨らませるアレです。
本来の使用法とは違いますが、明け方まで仕事して眠くなったら
少しでも仮眠を取るためにビーチマットを使用しました。


それが“ベッド(いや、ビーチマット)”です。


そして、給湯室でお風呂に入りました。

これも本来の使用法とは(当然)違いますが。

朝、ちょっと早めに起きて。みんなが出社する前に給湯室でお風呂に入る。
誰にも見られないので、何も恥ずかしくなかったです。
そーいう問題でもありませんが。

あ・いずれも良い子は真似してはいけません。

絶対に。


そして、現在のサイバーコネクトツーでは禁則事項です。

当時は、私が“誰のいうことも聞かずに実行していた”だけです。
本当に困った性格です。


しかし。

さすがに、そんな生活が6カ月も続くと実を結びます。
自分でも明らかに上手くなっていく実感がある。
努力的というか、ほとんど暴力的ですが。

確実に上手くなりました。

事実、磯部からの“ダメだし・描き直し”も減りました。
(さすがにゼロにはなりませんでしたが)

今、振り返っても病的な執念でしたが。
結果的には、自分の能力向上には繋がりました。


しかし、不思議なもので。
というか、全然不思議ではないのですが。
毎日、仮眠だけで仕事したり。ちゃんとお風呂に入らなかったり。
実際の話、たまに徹夜したり。

その状態が続くと、明らかに集中力が落ちます。
落ちる頻度が多くなります。
何日も徹夜したり、睡眠不足が続くと、当然です。

人間じゃなくっても、馬や犬でも一緒です。
みんな体にガタがきます。

ゲーム制作は長期間かけて開発が行われます。
いつか、誰かが倒れていいわけがありません。
ずっと同じ力を発揮し続けることが大事です。


完全に当時の私は、間違ってました。


気力で乗り切りましたが。
間違いは、間違い。


こうした実体験からも、後のサイバーコネクトツーの絶対ルール
“徹夜禁止”は生まれていくわけですが、それはまあ、また別のお話。

話をまた元に戻すと。

磯部の話。

現在では、磯部は私の部下。
そして彼自身も多くの部下を束ねる立場。

けど、今も私は磯部には絵を描いてほしいと思っていますし、
クリエイターとしても絵描きとしても心の底から尊敬しています。

今は“磯部~!!”って呼び捨てにしてますけど。

そこだけは変わってないんですよ。

って、磯部がこの手記を読んだらどんな顔すんのかな。
なんか、だいぶ照れますが。

今さらな感じがして。

まあ、いいでしょう。
誰だって、思い出を語ると“こう”なります。

ちょっとセンチな気持ちになったり、ね。

そしてまた時間は少し、経過します。


開発が中盤に差し掛かると―――



(松山洋による“「Solatorobo それからCODAへ」全記録vol.2”【3】へ続く)


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本コラムは、下記冊子より抜粋したものです。
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