ドラクエ5冒険日記(39) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。

1000回サイコロを振っただろうか。
あるいは、2000回振ったかもしれない。
エスタークと違って、カインはそこまでマメではなかったので、
実際に何回サイコロを転がしたかなど、
数えようともしていなかった。

来る日も来る日も、
カインはすごろくに明け暮れた。
すごろくに疲れては、グランバニアに帰り、
一泊して、またすごろく場に戻る。
カインのすごろく生活は、今、家族の犠牲の上に成り立っていた。
デボラもカミュもクレアも、
カインと会話をすることは少なくなった。
それでも、家族はカインを支えた。
デボラは、カインにすごろくを奨め続け、
カミュとクレアは、すごろくの間、ずっと待ってくれていた。

なぜ、そこまでカインがすごろくに没頭するのか。
それは、そこにすごろくがあるから、
としか言い表せない。
カイン自身にも、家族を置いて、
そこまで熱中する理由が、他に見つからなかったのだから。

あるとき、カインは落とし穴に落ち、
すごろくを終了した。
そんなカインをデボラは責めなかった。
今回がダメなら、もう一度、と、
カインを励ました。

またあるとき、カインは電撃を受けてすごろくを終了した。
そんなカインをカミュは心配した。
長い間、ただ待っていたことに対する不平を言ったことはなかった。

別のあるとき、カインは財布が空になり、すごろくを終了した。
そんなカインをクレアは明るい表情で迎えた。
お金なら、また稼げばいいよ、と。

ふりだしに戻され、
やる気をなくしてリタイヤしたこともあった。
サイコロの残り回数がなくなり、終了したこともあった。

落とし穴、電撃、財布、リタイヤ、サイコロ切れ。
カインは来る度、来る度に、それを繰り返し、
一向にゴールには辿り着けなかった。

カインは苦しかった。
出口の見えない穴の中にいるような気持ちになっていた。
しかし、その穴の中へ身を投じたのは、他ならぬ自分自身。
誰に不平不満を言える立場でもなかった。
一方で、
何日も何日も、家族を放っておいている自分のことを考えると、
なんとも心苦しい気分になっていた。

心の苦しさは、サイコロの目に影響した。
カインは5000ゴールドを失い、サイコロの回数を5回減らされ、
そしてふりだしに戻された。
この絶望的な状況に、カインはまたリタイヤした。
カインは打ちひしがれ、
また、家族に申し訳ないと心を痛めた。
しかし、それでも、家族はなお、カインを温かく迎えた。
カインは、この温かい家族に感謝した。
石になって、
カミュとクレアが成長するにあたり、
大切な時期にそばにいてあげられなかった。
そして、今、また重要な時期なのにも関わらず、
すごろくに没頭するあまり、子育てを疎かにする自分がいる。
なのに、
それなのに、
家族は温かく、辛抱強くカインを応援し続けてくれる。

すごろくが家族のためになるのかどうか、わからない。
でも、みんなのこの期待に応えたい。
それが正しいのかどうかわからないが、
カインは一心不乱だった。
一心不乱にサイコロを振り続けた。

気持ちの持ちようで、サイコロの確率が変動するとは思えない。
しかし、今、カインに求められているのは、
まさに精神の強さだった。
自棄にならず、自分を見失わず、
サイコロの一投一投に意識を込める。
そんなカインを家族は応援した。
家族たちは、ただひたすらに待ち、
サイコロの出目を遠くに見ながら一喜一憂した。


あるとき、この家族たちの想いが、
ついに叶うときがきた。
カインの一投に、
デボラとカミュとクレアの祈りが乗り移ったかのようだった。
カインは、あまりの驚きに、
一瞬、マス目がわからなくなるほどだった。
あと5歩、4歩、3歩・・・。
サイコロの目はもう変わらない。
あとは、ゴールまで歩くだけだった。
しかし、カインは、ゴールするよりも前に泣いていた。

この喜び、もう何度感じたことだろうか。
奴隷生活に絶望しながらも、機会を伺い、
脱出することができたときの喜び。
石になって、
もう元に戻ることができないと絶望したあの日々からの脱却。
今、サイコロ地獄の出口にたどり着く段になって、
カインは、過去の想いを彷彿させていた。

カミュは、ずっとカインのすごろく生活を見てきた。
すごろく場の中でしかわからないドラマと、
カインの辛抱強さをまざまざと見せつけられていた。
カミュは、カインが強く優しいことを知っていた。
しかし、それは、
仲間たちの支えの上でのことだと思っていた。
今、カインがゴールするにあたって、
カミュは、少し考えを改めることになった。
たとえひとりでもカインはカインであったのだと。

カインは、今ゴールを踏んでいた。
デボラが、カミュが、クレアが、カインのもとへ駆け寄った。
デボラが感心したように、カインを見つめる。
カインは、デボラの視線に気付き、
そっと目で言った。
みんなのおかげだよ。と。


さて、こうして一家の絆を深めたカイン。
ゴールの賞品は何かと、宝箱を開ける。
宝箱の中に潜んでいたのは、
エスタークの御曹子プチタークだった。
「おいらのことはタークって呼んでくれ。仲間にしてくれるよな。」
なるほど、帝王のすごろくへの熱の入れ様は、
こういうことだったのか、と。
すごろくを愛するあまり、
実の子さえも賞品にしてしまうほどだったか。
カインは呆れもしたが、
こういう親子の絆があるのかもしれない、と思い直った。
たった今、自分自身がすごろくで、
家族の絆を強めたばかりだったのだから。

ところで、カインには気になることがあった。
それは、エスターク帝王は、復活したばかりで、
自分が善か悪かもわからないと言っていたにも関わらず、
すごろく場はよく整備されていたし、
御曹子を宝箱に潜めるというサプライズまで用意していた。
帝王はいつ復活したんだろう?
いつすごろく場を作ったんだろう?
子供はいつの子供なのか?
奥さんとかいるのだろうか?
そんなことを思ったのだったが、
カインは、どうでもいい疑問を胸にしまい、
すごろく場を後にするのだった。

タークを連れたカインが、
サラボナ北西のほこらを訪れたのは、
単なる偶然だった。
ブオーンを完全に倒したと思っていたカインは、
その後、ルドマンがブオーンを再封印したことを
知らなかったので。

カインが訪れたのは、ちょうど、
壷からブオーンの化身が姿を現す瞬間だった。
ブオーンの化身は、自らをプオーンと名乗った。
そして、カインにはどういう理屈かわからなかったが、
プオーンもまた、カインの仲間になった。

プオーンに会ってしまったら、
ルドマンさんは腰を抜かしてしまうんじゃないだろうか。
そう思ったカインは、
早々にモンスターじいさんに会うべく、
グランバニアへと飛ぶのであった。


カイン:レベル41、プレイ時間35時間52分
パーティー:カイン、カミュ、クレア、デボラ、サンチョ、ベホズン、ターク、プオーン





にほんブログ村 ゲームブログ ドラクエシリーズへ
にほんブログ村