村の主ポワンに相談し、
「妖精のホルン」を授けられた。
なんでも、このホルンを吹けば、妖精の城に行けるのだとか。
てっきり、カインは、
ポワンがゴールドオーブを作れるものとばかり思っていたので、
少し当てが外れた形となってしまった。
なるほど、事はそう簡単ではないのかもしれない。
プサンはずいぶん簡単に言ったものだな。
カインは、少し毒づいた。
そう思うと、
ゴールドオーブを持って帰ることは、
そう急ぐべき事でもない。
プサンだって20年もトロッコで回っていたくらいだ。
ちょっとやそっと時間がかかったって、
特に問題はないだろう。
そう考えたカインは、
妖精界に来たついでに、
久しぶりにザイルを訪ねる。
いつぞやは敵同士だったけど、
今となっては懐かしい思い出。
少し話していくくらい構わないだろう。
ドワーフもエルフも、
人間よりずっと寿命が長く、ずっと成長が遅かった。
だから、大人になったカインは驚いていた。
ザイルが、20年前と、ほとんど同じ風貌だったので。
そういえば、ベラもそうだったっけ。
なんとなく、
時間の経つ早さが違う世界に来ている気になるカイン。
ザイルの方は特に不思議にも思っていなかった。
ザイルは、カインのこれまでの苦労も知らず、
外の世界を旅している部分だけを聞いて羨む。
羨んだ結果、ザイルはカインの仲間になることを決め、
勇んでモンスターじいさんのところへ走っていくのだった。
ザイルは、世界中を旅して回り、
強敵と戦い、
仲間たちと助け合うことを夢見ていた。
その夢を、モンスターじいさんの助手のイナッツに、
いつまでも、いつまでも、語り続けることになる。
妖精界を後にしたカイン。
「妖精のホルン」を吹いて、妖精の城を訪れた。
妖精の女王は、自称天空人のプサンよりも、
ずっと早くから、天空城墜落の事態に気付いていた。
ゴールドオーブが破壊されていたことにも気付いていた。
だから、すでに、
新しいゴールドオーブを作るべく、
研究を重ねていた。
しかし、現女王には、
宝玉を作ることはできても、この宝玉に、
天空城を浮かばせるほどの魔力を詰め込むことはできなかった。
女王としても手詰まりとなっていたところに、
カインが現れた。
女王はカインに光る宝玉を渡し、こう告げる。
この城には不思議な壁絵があり、
心の澄んだ者が願えば、
時空を越えられることがある、と。
壁絵には田舎村の風景が描かれていた。
カインはこの絵を見て、
平和だった頃のサンタローズを思い出す。
サンタローズを思い出すと同時に、
少年時代に、謎めいた男にゴールドオーブを
見せたことがあることを思い出した。
カインは今、ひとつの仮説にたどり着いていた。
その仮説は、カインの心臓を躍動させた。
カインは、鳥肌が立つ思いで仮説を展開した。
もし、
今、ここから、あのときのサンタローズに行けるとして。
もし、
あのサンタローズの謎の男は僕自身だったとして。
カインは男の言葉を思い出していた。
「お父さんを大切にね。」
「なにがあっても、くじけちゃだめだよ。」
その言葉の意味の深さを今になって理解するカイン。
そして、その言葉をもう一度噛みしめる。
僕は父さんを大切にできただろうか。
僕がしっかりしていれば、
父さんは命を落とすことはなかったのではないか。
悔しさで、カインは拳を握りしめた。
そんなカインをカミュが心配そうに見やる。
カミュの視線を受け、カインは自分の思いを訂正した。
何を考えているんだ、僕は。
過ぎたことを悔やむより、
父さんが残したカミュと天空の剣を守ること、
母さんを助けるという、父さんの意志を継ぐことが、
今、僕にとっては大切なことじゃないか。
こんな幼い息子に心配されているようじゃ、
僕は、まだまだ父親として未熟かな。
そう思うカインだった。
カインが思い描いていること。
それは、あの平和な日のサンタローズに遡って、
少年の頃の自分の持つゴールドオーブと、
この光る宝玉をすり替えること。
それが叶えば、天空城はまた浮かび上がる。
その気持ちで、カインは壁絵の前に立ち、
サンタローズを強く思い浮かべた。
壁絵の魔力は、
カインを過去のサンタローズへと運んだ。
穏やかな昼下がりのサンタローズ。
カインは幼い頃の自分自身を探そうとしたが、
いざ、ここに来てみると、
懐かしさのあまり、体が震えてしまう。
ここに来て、カインはこんなことを考えていた。
これから起こることを
みんなに知らせることはできないだろうか。
そうすれば、未然に不幸を防げるのではないか。
いや、それを言うならば、
父さんにラインハットへと赴くのを中止してもらおう。
カインは、変えてはならぬ過去だと知りながら、
パパスへの進言をせずにはいられなかった。
パパスは、
カインの進言で、行動を中止したりはしなかった。
しかし、一目会えただけでも嬉しく思うカイン。
これから起こることを知りながら、
何もできないことが、なんと辛いことか。
カインは、過去へと移動した人物特有の悩みを
ここで初めて持つこととなる。
カインは、パパスの持つ文献を読ませてもらった。
そこには、
空に浮かぶ城があり、
城からはオーブが失われ、
城が墜落してしまったことが書かれていた。
カインは驚きを隠せなかった。
20年も前に、
パパスはすでにここまでのことを突き止めていたのか。
天空人であるプサンよりも、
はるかに早く天空城の情報を仕入れているではないか。
カインは、
剣術のみならず、親心のみならず、
王としての器のみならず、妻を思う心のみならず、
最先端の情報を仕入れるパパスの研究心に、
改めて敬意を表するのだった。
若き日のパパスとサンチョに一礼して、
パパス家を出るカイン。
村の広場で、幼き日のカイン少年と出会う。
カインは少年に声をかける。
少年が答える。
カインは宝玉を見せてくれるように頼む。
少年はそれに応じる。
カインは、右手でゴールドオーブを受け取りながら、
左手で道具袋の光る宝玉をたぐり寄せる。
右手のオーブを見つめながら、太陽に翳す。
少年がまぶしさに目を背けた瞬間に、
カインは右手と左手をすり替えた。
星降る腕輪が、その早業を可能にした。
そして、カインは左手で少年に宝玉を戻すのだった。
「うん。僕、どんな辛いことがあってもくじけないよ!」
カインの言葉に、少年は屈託のない笑顔で答える。
何もかげりがない少年の笑顔が、
カインにはまぶしかった。
それと同時に、
この後少年の身にふりかかる不幸を思い浮かべると、
涙が止めどなく溢れてくる。
カインは、少年といつまでも話していたかったが、
涙で、声が出せなくなった。
少年はそんなカインを少し不思議に思ったが、
そう気にすることもなく、その場を去る。
「行こう、ゲレゲレ。」
残されたカインは、その場にうずくまって泣いていた。
くじけないわけないじゃないか!
父さんが目の前で殺されて、
その上、長い奴隷生活を強いられるんだ!
今でこそ、僕にはカミュやクレアがいるけど、
それをあの小さな少年に、くじけちゃだめ、などと、
簡単に言ってよかったのか。
どうすることもできない、苛立ちと、
誰へも向けられない憤りが、
ただ、カインの胸を締め付けるのだった。
こうして、ゴールドオーブを手に入れたカインは、
再び妖精の城に舞い戻り、
無口に天空城を目指すのだった。
カイン:レベル28、プレイ時間20時間13分
パーティー:カイン、カミュ、クレア、サンチョ、ピエール、ゲレゲレ、ベホマン、ゴレムス

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