ドラクエ5冒険日記(23) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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デボラはお腹の中に子を宿していた。
もちろんデボラは、自分でそのことに気付いていたが、
カインには気付かれまいと、お腹の子のことを隠していた。
というのも、
いくら従順であるとはいえ、
身籠った妻が冒険するのを認めるカインではないと、
デボラもわかっていたので。

チゾットで倒れてからは、
これ以上の旅が、
自分にとっても子にとっても危険であることはわかっていたが、
だからと言って、
サラボナに戻って退屈な日を過ごすのにも抵抗があった。

デボラの中には、
同行しない間に、カインに逃げられてしまうのではないか、
という危惧があった。
デボラは、従順なしもべであるカインを気に入っていた。
今までの、どんなしもべよりも、
強く、優しく、おもしろい男であると思っていた。
だから、そんなカインを逃がしたくない一心で、
デボラは旅を続けていた。

動機が動機であるものの、
デボラのカインへの執着心は強かった。
妊娠しているとは思えない動きで、
魔物たちに立ち向かい、
シャイニーネイルで切り刻んできたのも、
この執着心ゆえ成せる業だった。

一方で、カインの方は、
デボラの体調を心配こそすれ、
よもや子を授かろうとしていることなど、
夢にも思っていなかった。
だから、デボラが旅を続ける意志を示したとき、
カインはデボラの意志を尊重した。
こうして、めでたくも危険な、
チゾットの山下りは決行された。


長い下り道を駆け下りたカイン一同。
ついに、パパスの城グランバニアへと到着するに至る。


サンチョは、従来よりパパス王の付き人だった。
グランバニアを旅立ったパパスとともに、
サンタローズへと移り住み、
パパスの死後は、
ラインハットの襲撃を逃れて、またグランバニアへと戻った。
そんなサンチョの帰還をグランバニアの民は喜んだ。
しかし、サンチョが持ち帰ったパパス死去の報は、
グランバニアの民を大きく落胆させた。
サンチョもグランバニアの民も、
パパスの子カインの生存を望み、
いずれ訪れるかもしれないカイン王子を
ひたすらに待ち続けた。
そんなサンチョの願いが、ついに叶うときが来ていた。
今、カインとサンチョは、扉一枚の向こうとこちらだった。

扉をノックするカインと、客人に応対するサンチョ。
最初、カインもサンチョも、お互いを認識できなかった。
だから、
待ちに待ったカイン王子の帰還に対して、サンチョは、
「あの~、どちら様で?」
という言葉を投げかけた。
言葉の途中で、サンチョが気付く。
「もしや、もしやカインぼっちゃんではありませんか!?」
サンチョは驚きを隠せなかった。
「ご無事でしたか!お懐かしゅうございます!ぼっちゃんは生きておられると、信じておりました!」
サンチョの驚きはこれだけでは済まされなかった。
「ぼっちゃん、ご結婚を!?」
カインの無事だけでなく、
妻を連れていたことにも驚かされるサンチョ。
サンチョは、この嬉しい報告をオジロン王のもとへ届けるべく、
カインをつれて、王の間へと進むのだった。


オジロン王とは、パパスの弟で、
現グランバニア王。
王の座を空けてパパスの帰りをずっと待っていたが、
パパスが、ついに戻らぬ人と判明して後、
グランバニアの王位を継いだ人物である。

オジロンは、サンチョの報告とカインの謁見を同時に受け、
この日をどんなに待ちわびたことかと喜び勇む。

と、そんなとき。
チゾットでの出来事が、再び起こることとなった。
デボラの気絶、転倒である。


「デボラさんの容態はそんなに悪いのですか?」
と、サンチョが侍女に問う。
「悪いどころか・・・」
侍女の答えに、カインもサンチョも息を飲んで聞き入る。
「悪いどころか、おめでたです!」
侍女が何を言っているのか、
カインには最初、意味が分からなかった。
そんな鈍感なカインに、侍女は説明をする。
あなたはお父さんになるんですよ、と。

そう説明される段になって、
カインはようやく事の重大さに気付いた。
気付きはしたが、
結婚したときと同様、
カインは、この時点で、子ができることを軽く考えていた。
だから、子が産まれたときにどうすべきか、
現時点でのカインの思考回路は、
自分のことをどう呼ばせるか、ただそれだけだった。
カインはパパスを「父さん」と呼んでいる。
だから、子にも、「父さん」と呼んでほしい。
でも、デボラはルドマンさんのことを「パパ」と呼ぶ。
だから、デボラはきっと「ママ」と呼んでほしいに違いない。
父を「父さん」と呼び、母を「ママ」と呼ぶ。
それはなんとなく統一性に欠けるので、
どちらか片方に合わせるべきかなぁ、と思うカイン。
で、どっちに合わせる?
そう考えたときに、
デボラが、自分の考えを譲るわけがないことにカインは気付く。
仕方ない、僕は「パパ」と呼ばれることにしよう。
この時点で、カインの頭の中には、
夫婦2人で子育てをする未来図が見えていた。
いや、2人で、と言っても、8割は僕だな。
そう思って、少々苦い顔をするカインだったが、
未来はもっと苦いものだということを
カインはまだ知らなかった。


オジロンはカインの帰還を心から喜んでいたが、
今、王座に居ながら、
寝室のカイン夫妻のことが心配でならなかった。
カインが戻った今、
オジロンは王位をカインに譲るつもりでいた。
カインは、先代パパスの血を継ぐ者であり、
正当な王位後継者だと考えていたからである。
しかし、次期王妃デボラの様子如何では、
そんな話を切り出せない。
オジロンは、気が気でない様子で、
デボラの無事を願う。

そんな折りにカインが再び現れ、
デボラのあの状態の原因は妊娠にあることを伝えられる。
なんと、凶報ばかりを心配していたが、吉報であったか。
オジロンは驚喜し、
ホクホク顔でカインに王位を空け渡すことを伝えるのだった。

それに驚いたのがカインと大臣。
「私に相談もなく、いきなり何を言われる!?」
と、大臣。
「そんな重大なことを思いつきのように僕に命ずるんですか!?」
というのはカインの心の声。
そう思いはするものの、
カインは、この重大な局面に混乱し、
何も言えないでいるのだった。
重大な局面で混乱するのは、
何も今に限ったことではなく、
カインの持って産まれた性質である。
そんな自分が、
重大な局面ばかりの国王になっていいはずがない。
今カインは、
父になることを浅く考えていたが、
国王になることは、どう浅く考えても、
二つ返事で受け入れられることではない。
それに、父の故郷にたどり着いたからと言って、
旅をやめるわけにはいかなかった。
カインには、勇者を探し、
母マーサを助けるという目的があったのだから。

そう考えているカインを後目に、
オジロン王と大臣は王位継承の話を進める。
「オジロン王、では王家の証を持ってきていただかないと。」
「しかし、今ではあの場所にも魔物が出る。危険じゃ。」
「ですが、しきたりはしきたりです。」
「ふうむ。では、カイン。王家の証を取りに行ってくれ、頼む。」
オジロン王は、ちょっとした頼みごとをするかのように、
カインに王家の証探しを命じる。

ちょっと待ってください、オジロン王。
僕はまだ王になろうと思ってるわけでは。。。
そう言いかけたカインだったが、
「頼む、このとおり。」
と頭を下げるオジロン王の前に、
ついにその言葉を発することができなかった。


結婚したのだってつい最近だと思ってたのに、
もうパパになりそうだし、
しかも、ここグランバニアの王になるなんて。
カインの身に、一度に降りかかった事々は、
もはやカインの思考力の限界を軽く越えていた。

果たして、こんなカインが、
グランバニアの王になれる日は来るのか。
望まずして王位に手が届きつつあるカイン。
彼の心中はいかに。


カイン:レベル23、プレイ時間13時間51分
パーティー:カイン、ブラウン、スラりん、ピエール、ゲレゲレ、ベホマン、マッド




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