この城の女王アイシスに謁見し、
勇者の墓参りを志願する。
しかし、
勇者の墓があると聞いて、ここ砂漠の城を訪れたのだが、
そう語り継いでいるだけで、
実際には勇者の墓などはなかった。
ただし、ここには、
カインが探し求める天空の兜が、保管されていた。
アイシスはカインに、
天空の兜をかぶるように勧める。
カインは、うすうすわかっていた。
自分がこの兜を装備できないことを。
天空の剣と盾を装備できないわけだし、
勇者ではないわけだし、
この兜を装備できる道理はなかった。
そう思ってはいたが、
もしかしたら、とカインは思い直す。
と、言うのは、
デボラを嫁に選んだ際に、
義父ルドマンに、
勇者だと称えられたことを思い出したからだった。
もしかしたら、あの瞬間、僕は勇者になっていたのではないか?
天空の盾が装備できるかどうか、確かめていなかったが、
もしかしたら、今の僕なら装備できるのではないか?
そんなことを思いながら、
カインは満更でもない気持ちで天空の兜をかぶる。
しかし、兜は鉛のように重く、
カインは自分がそれを装備できないことを気付くに至る。
初めて天空の剣を触ったときと、同じ感覚だった。
よく考えたら、
ルドマンさんが僕を勇者と言っただけで、
僕自身は勇気を振り絞ったわけでもなんでもなかった。
ただ、中途半端な返事をしただけだった。
そう思い出したカインは、
満更でもない気分になった自分に、
今更ながら恥ずかしくなるのだった。
女王アイシスは、
勇者が現れたら、天空の兜を献上しようと考えていた。
そして、勇者を見極めるために、
この国を訪れた旅人に天空の兜を試着させ、
装備できる者を探していた。
装備できる者は、すなわち勇者であり、
その者に、兜を差し出す心積もりであった。
だから、アイシスは、
カインが天空の兜を欲しがっていることを見抜いても、
兜を与えるわけにはいかなかった。
カインの方でも、そのことは十分にわかっていた。
勇者を見つけたら、またここを訪れよう。
それに、たまにここを訪れて、
勇者がまだ来ていないかどうかを確かめよう。
そう考えながら、テルパドールを後にするのだった。
テルパドールを出発したカインは、
グランバニアを目指す。
というのも、こういう情報を手に入れたので。
グランバニアの王の名はパパスといい、
幼子を連れて、妻探しの旅に出たのだという。
この話を聞き、カインは、
グランバニア王が父パパスであったことを直感する。
それは、幼いときの船旅での夢と一致したからであった。
あのとき父さんは、自分がグランバニア王であることを隠した。
それは、きっと、周りに知られると、
子供の僕が危険に晒されるから。
父さんはそう考えていたんだろう。
しかし、今や僕も大人になった。
今なら、グランバニアに行ってもいいだろうか、父さん?
いや、いいだろうか?じゃない。
僕は、グランバニアに行くよ、父さん。
こうして、カインは強い気持ちを胸に、
グランバニアを目指すのだった。
グランバニアは、険しい山々に囲まれている。
カイン一行は、グランバニアを目指して、
切り立つような山脈を登った。
山の上には、チゾットという高山の村があった。
標高が高く、空気が薄い村だった。
カインがこの村までたどり着けたのは幸運だった。
もう少し到着が遅れていれば、
デボラが大変なことになっていたことは疑いなかった。
デボラは、チゾットにたどり着くなり、
「世界が回る~。私を中心に~。」
と、うめき声を上げた。
が、カインは、
これがうめき声だとはすぐには気付かなかった。
だから、カインは、
なにをふざけているんだい?
という笑いの目で、デボラを振り返った。
そして、デボラを見て、表情を凍らせるカイン。
カインが見たのは、
デボラが、うずくまり、そして倒れ込む光景だった。
デボラ!
デボラッ!
カインは倒れたデボラに向かって叫んでいた。
それを聞いて駆けつけた村人は、
すぐに担架でデボラを宿に運び入れてくれた。
デボラ、無事でいてくれデボラ!
カインはベッドで気を失ったままのデボラの手を握り、
ずっと祈っていた。
デボラが倒れた原因がわからないカインは、
祈りながら、ここまでの山道を思い返す。
デボラはしきりに疲れたことを訴えていた。
デボラは何度も、カインにおぶってくれるように頼んでいた。
頼むというより、命令だったのではあるが。
その疲れが出たのだろうか?
慣れない旅だった上に、急に高山に登ったりしたので、
高山病にでもかかったのだろうか?
カインは、なぜそのことをもっと気にかけなかったのかと、
自分を責めた。
自責の念を抱きながら、
デボラが目を覚ますのをずっと待つカイン。
やがて、デボラは目を開き、
待ち疲れたカインは、
安堵感から、逆に自分が倒れ込むように寝てしまった。
カインが目を覚ましたとき、
傍らには、カインの目覚めを待つデボラの微笑みがあった、
ように一瞬カインには見えた。
「私夢を見たの。」
そう言うデボラに、カインは一瞬期待をした。
「夫の目覚めを笑顔で迎える良妻の夢。悪夢だったわ。」
デボラは吐き捨てた。
そうだよね~。
カインは簡単に期待を裏切られ、心の中で涙目になった。
わかってる。
キミがそういう妻じゃないことくらいわかってる。
でも、ちょっとくらいそういう期待をしたっていいじゃないか。
そんなことを考えながら、
いやいや、とカインは思い直す。
デボラの体調がどうなったのかがよくわからない。
デボラは体調が戻った素振りで、
何事もなかったかのようにグランバニアに行こうとしているが、
カインは心配でならなかった。
もっとも、カインがこのときデボラの不調の理由を知っていたら、
旅の同行は決して許しはしなかったのではあるが。
デボラは、冒険をしていてよい身ではなかった。
安静に過ごしていなければならなかった。
この旅には、命が懸かっていたことを
カインは後日知ることになる。
カイン:レベル22、プレイ時間13時間5分
パーティー:カイン、ブラウン、スラりん、ピエール、ゲレゲレ、ベホマン、デボラ、マッド

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