『日曜日たち』  吉田修一 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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日曜日たち (講談社文庫)/吉田 修一
¥470
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***この本は2009年12月に読了しました***

ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。都会の喧騒と鬱屈した毎日のなかで、疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。ふたりに秘められた真実とは。絡みあい交錯しあう、連作短編集の傑作。
(Bookデータベースより)



「何かを忘れずにいるということが絶対に不可能だと思うから、ますます何かを絶対に忘れたくないと思う」



過去を振り返りながら、今を生き抜く5人の若者たち。
若者達それぞれのいつもと変わらぬありふれた日常の描写。
だが、そのありふれた日曜日の中で過去を憂うとき、ふと記憶に残っていた、ある日の出来事。
全く関係のない5人の若者達の人生の一日に登場したのは、ありふれた日常には似つかわしくない二人の小さな兄弟だった・・・。


登場人物の5人たちは、誰もが過去を憂い、どこか日々の暮らしに疲れている。
そこに共感を見い出せる読者も多いかもしれない。
著者の「パレード」 でも思ったが、ごくありふれた日常の描写が著者は巧い。


特に起伏もなく、平坦で淡々とありふれている日常の描写の中に、現代の若者が抱える寂寥感や焦燥感と言った感傷をこっそりしのばせる業は、本当に秀逸だ。


都会の喧騒にまみれ、鬱屈した日々を過ごす若者の日々の一瞬の切り取り。
そして全く関係のない5人が思い出す、見るからに訳ありげな小さな兄弟との出会い。
読み進めていくと、断片しか見えなかった二人の兄弟の物語が徐々に形となり見えてくるのだ。



家出状態だった一週間の間、何を食べてたのか?と聞かれた弟は、「パン。・・・あと、タコ焼き。それと、すし」と答える。そして弟はフレンチトーストにかじりつく。
小さい兄弟が家出中に食べる食事としては、ありえない組み合わせだろう。
なんだか人生って、不思議だよね。そして、そう、嫌なことばっかりじゃないんだよね。そんなことを、思う。


連作短編集らしいプロットだったけど、若干弱かったかな。




「日曜日のエレベーター」 「日曜日の被害者」 「日曜日の新郎たち」 「日曜日の運勢」 「日曜日たち」
の5編を収録。



★★★



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