『パレード』   吉田修一 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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パレード (幻冬舎文庫)/吉田 修一
¥560
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***この本は2006年9月頃読了しました***

都内の2LDKマンションにルームシェアをし暮らす男女四人の若者達。
「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め・・・。
第15回山本周五郎賞受賞作。




実は読了後、最初、どこが面白いのかよくわからなかった・・・。
解説を読んで、ほぅ、そう言う風に読むのか、と。。。
確かに何度も読み直してみたくなる作品かも。


理由と言うか、動機と言うか、彼がなぜそうしたのかと言うことが、全く記述されていないから、おれは最初、上記のように感じちゃったんだろう。


だけど違った。淡々と誰しもが持つ普通の日常を描き続け、理由や動機などの内面を描かなかったのも、最終章の最後まで「ありふれた日常」を意識させるためだった。リアリティーを持たせ、実際に一緒に住んでいるようすら感じさせる。


そしてすべてを受け入れる。いつものように流れる、『ありふれた日常』として。
その『すべて』を。


当初、こういう人間関係ならおれも一緒にこのマンションに住めると思った。いや、住みたいとさえ思った。
だけど、解説にあるほど「怖さ」は感じなかった。
それは恐らく、こういう人は実際にどこにいてもおかしくない、と思うような現代だからかも知れない。
読了後でさえ、この5人ような人間が実際にどこにいてもおかしくない、明日出会っても不思議じゃない、自分自身そう思うから。
ただ、読み終わってしまってからは、もうこの2LDKに住みたいと思う自分は消えていた。。。




冒頭、良介がマンションから国道を見下ろしている場面がある。
そこには等間隔で走り、信号ではぶつからない程度に間隔をあけてキチンと止まる車の列。
その当たり前のことを、不思議に感じている良介。
作者はきっとこの作品の人間関係の距離感と、それをリンクさせてるのかも、と思ってみたり。

ぶつからない程度の間隔で走り、止まる車たち。
だけど、たまにだけど、やっぱり事故って起こるんだよね。大事故から小さい事故まで。
人間関係もそうなんだろうな。きっと。



★★★★★



その他の吉田修一作品
『パレード』  ◇『日曜日たち』  ◇『初恋温泉』



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