『今夜は心だけ抱いて』  唯川恵 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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今夜は心だけ抱いて (朝日文庫)/唯川 恵
¥651
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***この本は2009年12月に読了しました***

47歳でバツイチの柊子がある日、幼い頃に別れた17歳の娘、美羽と久しぶりに会うことに。しかし事故をきっかけに二人の心と体が入れ替わってしまう。恋に人間関係に日々の生活、何もかも違う二人。だからこそ、見えてくる女の物語。
(Bookデータベースより)



「老いと後悔は背中合わせにあり、若さと愚かさは同じ場所にある。」



12年前に離婚し幼い頃に別れた娘と母親が、久しぶりに再開し、とある事故により二人の心と身体が入れ替わってしまった、と言う、まぁありがちと言えばありがちな設定。


離れ離れだったとは言え血の繋がった親子の二人。全然違う様でいて、どこか似ていて通じ合う複雑な二人。
だが、たとえ心と身体が入れ替わってもどちらも同じ「女」であることは変わりなく、入れ替わった二人はそれぞれ恋愛をする。
30歳と言う年齢差設定と、そこからくる価値観の違いの描写が秀逸だ。


30歳という年齢差。人生の17歳から47歳までの30年間と言うのは、言うまでもなくとても濃密だ。
受験、進学、恋愛、就職、結婚、出産、はたまた不倫や離婚、勤務先の倒産や転職、親の介護などを経験する人もいるかも知れない。特に結婚・出産は女性における一つの大きな山場なのではなかろうか。
そんな濃縮たっぷりの30年をしっかりと経験した母親、柊子と、まさにこれからその経験を、と言った時期に30年間まるまる一気に飛び越えてしまった娘、美羽。


憧れていたオトナの世界と、忘れてしまっていた子供の心。
娘はそれまで自分には見えなかった男の魅力や価値観の違い、老いと言う名の不自由さを発見し、逆に母親は若い頃の忘れかけていた瑞々しい気持ちや、若さと言う名の不条理さを思い出す。



残念ながら、ちょっと主人公二人に感情移入できませんでした。
特に元の母親(娘の身体に入れ替わった)の考えや行動に辟易してしまいました。
自分が出来切れなかった青春の謳歌を娘の身体で行おうとしてみたりするのだが、結局は自分の身体じゃないから、とかそういう考えのもとに生まれた短絡的な発想なのだろうかと思うと嫌悪感が襲った。
逆に元の娘(母親の身体に入れ替わった)の方が、母親の身体に入れ替わったせいなのか、どんどん考え方も大人びていき、好感が持てました。
やっぱこういう作品は女性読者の方が共感しやすいのかなぁ。



あの子が私の人生を生き、私があの子の人生を生きる。


30年間と言う歳月を再度生きることになった柊子と、一気に飛び越してしまった美羽。


ラストの展開は、一筋縄では説明できない読後感をもたらした。



★★


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