『コールドゲーム』  荻原浩 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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コールドゲーム (新潮文庫)/荻原 浩
¥700
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***この本は2009年11月に読了しました***

高3の夏、復讐は突然はじまった。中2時代のクラスメートが、一人また一人と襲われていく…。犯行予告からトロ吉が浮び上がる。4年前クラス中のイジメの標的だったトロ吉こと廣吉。だが、転校したトロ吉の行方は誰も知らなかった。光也たち有志は、「北中防衛隊」をつくり、トロ吉を捜しはじめるのだが―。やるせない真実、驚愕の結末。高3の終らない夏休みを描く青春ミステリ。
(Bookデータベースより)



いわゆる「イジメ」がテーマの作品です。

テンポがよく、展開も相まってスピーディーに読み進められる。
主人公の光也が野球部だった設定で、野球言葉を比喩として使い、読みやすくしているところなんかはうまい。
ただテーマがテーマだけに途中途中で重くやるせない気持ちになる。
ところどころ描かれる昔のイジメの実態は酷く、憤りを覚えるほど。
時として子供の世界のそれは、大人の世界のそれより残酷であるものだ。



イジメた側は大したことをしたとは露にも思わず、4年経ってイジメたことなんかすっかり記憶から抜け落ちていた。
だけど、イジメられた側は、とても理不尽な理由で大切なものをいとも簡単に踏みにじられ続けたことを忘れない。
そう、心に一生消えることのない傷を負ってしまったのだ。


そして突如始まる昔のクラスメートへの復讐。
イジメの心当たりがまったくないクラスメートはいなく、誰しもが心の片隅に廣吉へのイジメの覚えを持っている。
後ろめたいことがあると言うことは、廣吉による復讐の対象となると言うこと。


復讐される側、つまり以前のイジメてた側からの記述がほとんどなので、主人公達側に心が動きそうになる。
だけど、やはり復讐する側、つまりイジメられていた廣吉側のことを思うと、動きそうになった心に待ったがかかる。



「お前らにとっちゃどうでもいいもんが、別の誰かにとっちゃ大切なものかもしれねえんだ。
それは知りませんでした、じゃすまねえこともある。」



こういうことに本当の意味で気づけたイジメ側は果たしていたのだろうか。



ちなみに解説は石田衣良氏。著者を大人の作家と評している。
ただ、著者はこの作品で何を伝えたかったのか、自分にはいまだに明確な答えを出せないままでいる。
まぁ、これだけは思った。大人である著者の引き出しは広いな、と。



蝕まれてしまった心が行き着いた狂気。
果たして、コールドゲームは繰り返されるのか。



★★★


その他の荻原浩作品
『コールドゲーム』  ◇『神様からのひと言』  ◇『あの日にドライブ』



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