『あの日にドライブ』  荻原浩 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

読んだ小説&観た映画の感想中心のブログです。基本的には良い評価でのレビューを心がけています。レビューと言うか、ただの感想だったりしますがw 過去に読んだのもあり。自分の備忘録も兼ねてます♪貴方のオススメの映画や本があったら教えて♪漫画の紹介も始めました♪

あの日にドライブ (光文社文庫)/荻原 浩
¥650
Amazon.co.jp

***この本は2009年7月に読了しました***

牧村伸郎、43歳。元銀行員にして現在、タクシー運転手。
あるきっかけで銀行を辞めてしまった伸郎は、仕方なくタクシー運転手になるが、営業成績は上がらず、希望する転職もままならない。そんな折り、偶然、青春を過ごした街を通りかかる。
もう一度、人生をやり直すことができたら。
伸郎は自分が送るはずだった、もう一つの人生に思いを巡らせ始めるのだが…。
(Bookデータベースより)



「人生は偶然でなりたっている。」


「もう一度、人生をやり直すことができたら。」
「もう一度、人生をやり直すことができるなら、どこからだろう。」





例えば、ゴルフに行くと、「あそこでバンカーに入らなければなぁ」とか「もしあのホールがパーだったらベスグロだったのになぁ」なんて声を良く聞いたりする。と言うか、自分も言ったり思ったり・・・。

そう、いわゆる「たら」「れば」。 「~だったら」や「~なってれば」。

そんなゴルフも、前半良かったりしてベスグロ(Best Gross=最高スコア)出るかなぁって思ってると、とたんに後半ダメダメだったり、逆に前半ボロボロだったのに終わってみたらそこそこのスコアだったり・・・。
結局はいつもどおりの平均スコアだったりすることが多いんだよね。つまりそれがいまの自分の実力。
普段努力しなきゃ、なかなか実力以上のものは出ないし、出たとしてもそれは結局「運」、長続きはしない。
コンスタントに出るスコアの平均が結局は実力ってこと。



人生もやっぱり山あり谷ありあって、いいときもあれば悪いときもある。
「運」だけではないし、でも「努力」や「実力」だけでもないのかもしれない。
それでもみんな良くないときや、人生の壁にぶち当たったときほど思うのが「たられば」なんだろうな・・・。



主人公の伸郎もある出来事があって、銀行を退職する。
銀行マンであったプライドを捨て切れずにいるところなんかは、女性読者は共感しづらいかもしれない。
そしてタクシードライバーとなった伸郎の妄想バーチャル人生はとどまることを知らず加速していく。

妄想で共感できたりするのが、昔住んでたアパートの近くを通りかかったときのこと。
例えば自分も昔借りて住んでた部屋や、たまり場にしていつも呑んだくれてた友人の部屋、同棲をしてた昔の彼女の部屋、どの部屋にもいろんな思い出がある。
久方振りにそんな部屋やアパートの近くを通ったりすると、その頃の淡い思い出が風となって、さらりと心を吹き抜けていく。
そしていまは誰が住んでるんだろうって想像したり、のぞいてみたくなったり(笑)。

ただ、さすがに途中からは妄想が暴走気味で、ちょっと辟易してしまった。
まぁラストに向けて前向きなっていくので、読了後はいつの間にか憎めない主人公になっていたのが、著者にしてやられたってとこですかね。



人生は一本道じゃない。曲がり角ばかりの迷路だ。
タクシードライバーらしい比喩だけど、本当にそういうことかも知れない。
正しい道や良いことがありそうな道ばかり選ぼうとしても、うまくいかないことも多い。
そう、人生の曲がり角の手前には信号や標識はないのだから・・・。



みんなそれぞれ自分の人生という迷路を、ときには後ろを振り返りながら、前に前に進んでいくんだ。
誰もが曲がり直すことは決して出来ないけれど、たまには後ろを振り返ってあそこの角を逆に曲がってたらって妄想してみるのも悪くない、そんな気分にさせられた。
後ろを振り返ったってまた前を向いて進めばいいんだよ、そんな風に著者が言ってるようだった。



「次の角を曲がったら、何があるだろう」


おれもドキドキワクワクしながら前向きに次の人生の角を曲りたいなって思う。




あと10数年経ったら、また再読してみたい。
もしくはタクシードライバーになったら、、、かな・・・笑


★★★


その他の荻原浩作品
『コールドゲーム』  ◇『神様からのひと言』  ◇『あの日にドライブ』



読書INDEXはこちら



ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村