世界一詳しいビンディング…試練の峠、ヤビツ 【第一部】 | 自転車で糖尿病を克服した!

世界一詳しいビンディング…試練の峠、ヤビツ 【第一部】


ヤビツ峠制覇記念写真

さて、これがヤビツ峠登頂の証拠写真(あまりに定番なアングル、お恥ずかしい…)。まぁなんてことないだろうと思い、気楽な思いで登りはじめたのだが、実は思った以上にこの峠は長く、思わぬ苦戦を強いられた。そして新たなるライバルが…。また、私の携帯はちょっと昔のモデルのため、このサイズでしか撮れなかった。そろそろ買い換えの時期か。


さて、いよいよ「世界一詳しいロード用ビンディングペダルの使用レポート」の開始である。私はしっかりと気を引き締め、真新しいロード用ビンディングシューズのベルクロを締め直した。ちょっときつく感じるが、このくらいがちょうど良い。


時は2007年8月。あまりに暑かった数週間が過ぎ去り、サイクリングにはかろうじてOKな気温と感じられるある土曜日の昼下がりであった。


前回の記事でも書いたが、ロード用のシューズはそれにしても歩き難い(その後1週間くらいで慣れてはくるのだが…)。それまで使用していたMTB用のシューズの場合は、クリート(ペダルにはめるための金属パーツのことだ)がシューズのソールから出っ張っていないため、歩くのには全く支障がない。普通のスニーカーと同じ感覚で歩けるのだ。だが、ロード用のシューズは全く違うコンセプトのもとにつくられている。つまり、こういうことだ。


ロード用のシューズは歩くことを想定していない。言い換えるとこの靴で歩くなということになる。


わかった、わかった。そこまで割り切っているなら、こちらもその気で使うまでだ。あくまで自転車に乗ったときに最高のパフォーマンスを発揮するようつくられているわけだな。では、そこに大きな期待をしよう。


ということで、私は颯爽と「ピナレロ君」ことPinarello Angliruに跨ると、右側のペダルにシューズを固定する。以前のMTB用ペダル使用の場合より0.4秒ほど余計に時間がかかったが、全く問題ない。パチンという音も心地良く、シューズがペダルにしっかりと固定される。


うむ、かっしり感はこちらの方があるな。時速70kmでのライディングでもしっかりとホールドしてくれそうだ


そして、エイ、と気合いを入れ、右足から踏み出す。まだ慣れていないので急加速はしない。


「ピナレロ君」は歩くような速度から徐々に加速する。


さて、左足をはめるゾ。あれっ、あれっ…


パシッ!


クリートがペダルにキャッチされた音ではない。足がはじかれてしまった音だ。どうやらペダルの踏み面を上にするのに失敗したらしい。野球で言えばファウルチップのような状態だ。


も、もう一度。


カシャカシャ…


左足でキャッチ面を探るのだが、今ひとつうまくできない。


な、なに…、その間に「ピナレロ君」は加速することができず、道路の左側をのろのろとふらつきながら走っている。後ろからバスが迫っている。片側一車線の細い道だ。早く加速しないとバスをブロックすることになってしまう…。


私はMTB用のビンディングペダルに関して言えば、自分で言うのもなんだが、もはやベテランの領域に入っている。いつもなら完全に鼻歌まじりで、ペダルのことなど全く意識もせず、気づいたらはまっている…という感じで何の問題もないのだが、このロード用のビンディングの場合はちょっと勝手が違う。早くも苦戦か。


そして、やっとスイートスポットを発見、パチン!という音とともに左側のペダルがはまった!(ここまでで7.3秒経過だ。予定より6秒遅い!


やった。やっとはまった。こうなると後は速い。後方のバスが約5メートルに迫っていたが、日頃鍛えた脚力で一気に加速、バスとの距離を開く。(そう、この「ピナレロ君」、バスよりも加速が速いのだ。ときどき負けることもあるが…)


なんとか第一のピンチを逃れたようだ。それにしても、まだこの真新しいロード用ビンディングシステムに慣れていない。シューズでペダルをちょっとさわり、踏み面を上にしなければならないのだが、私の場合それがまだうまくできないようだ。


まだ道のりは長い。あのヤビツ峠までは50km以上ある。それまでにゆっくり慣れていけばいい。


私は気を取り直し、段々とケイデンスを上げる。ケイデンスメーターは92rpmを指している。


「おっ、ちょっといい感じ!」


ここに来てはじめてロード用ビンディングのメリットが感じられたホールド感がいいのだ。踏み面が広く、しかもしっかりと靴をくわえている感じ。歩くときはまったく安心感など持てないが、走行中は結構安心感がある。これは明らかなメリットだろう。


ちょっとダンシングしてみる。問題ない。ケイデンスを110rpmまで上げてみる。これも問題ない。確かに良い感じだ。厳密に測定したらおそらくパワーの伝達効率も多少上がっているかもしれない。たとえば、MTB用のビンディングで250ワット出ているとしたら、ロード用のだと253ワットになる…そのくらいは違うのでは、と感じた。(数値はあくまで推測だ。まぁ霊感のようなものだ。実際に計測したわけではないので信憑性はないが、まあこんなもんだろうか。)


前方に信号だ。さて停車だ。いつものように減速する。左足のビンディングを外すべく、右足を下死点に持って行き、左足を上死点付近で止め、左足を捻る。MTB用ビンディングシューズで慣れ親しんだ一連の動作だ。何の問題もない…はずだった。


おっ、あれっ、うっ、よしっ…


パチッ。やっとビンディングがはずれた。いつもより0.3秒余計に時間がかかっている。私は普通に信号で停車した。何の問題もない。だが、内心ちょっと「えっ」と思っていた。堅いのだ。力が必要なのだ。


数値で表すとこんな感じだ。


MTB用ビンディングシューズの場合、たとえば10n・mの力で外れるとすると、このロード用アルテグラのペダルは約45~50n・mの力が必要になる。この信号では、私だったから、そう私だったから何の問題もなくペダルをはずすことができたが、あのA子だったら…。 私は考えただけで背筋に冷たいものが走った。


こ、これは危険だ。A子には間違ってもこのロード用SPD-SLをおすすめすることはできない!


この感覚はこの後50kmを走るうちにコツをつかむことで少し変わってくるのだが、最初の印象は上記の通りだった。簡単に言うと…


ロード用のシマノSPD-SL(アルテグラ)は、MTB用のシマノSPDより外すのが少し大変だ。


ということになる。初心者には要注意だ。私だったらロードバイク初心者にはこのペダルは薦めない。一番安いMTB用ビンディングペダルの方がはるかに外しやすいので立ちゴケ率はずっと低くなる。そう感じた。


★★★コラム~~ペダルのバネの強さは安いほど弱い!?★★★

これ、実は知られざる真実かもしれない。シマノのビンディングペダルの場合、同じSPDペダルでもそのグレードがあり、安いもので3千円代、ミドルグレードで5千円代…というように種類がいくつかある。私はそのうちの2グレードを試したことがあるのだが、どう考えても安いグレードの方がバネの力が弱く設定されているようで、外しやすいのだ。バネは調整できるようになっているが、同じように一番弱くしてもやはり固定力が違う。シマノではこういうことは公にはうたっていないが、どうやら事実としてはあるようである。だから初心者がペダルを買う場合は安いのがイイ!私はそう思う


さて、話がどんどん長くなり、このままでは原稿用紙数十枚分くらいになってしまいそうなので、ちょっと省略。ヤビツ峠が近づいてきたところから、物語は再スタートすることとなる。約50kmくらい走って、私はやっとこのペダルのコツをつかみはじめた。MTB用だと結構いい加減に捻れば外せたが、ロード用の場合、もうすこし正確に捻ることが必要なようだった。そして上死点より、下死点で外した方がずっと楽だということにも気づいてきた。


さて、私は国道246号、伊勢原を超え、ヤビツ峠のちょっと手前に立ちはだかる小さな峠に差し掛かった。だらだらと続く意外に長い上り坂だ。思わぬライバルが登場するなど、そこからの苦戦物語は次回!

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