【A子を襲うビンディングの試練!】 「ペダルの旅人たち」 プロローグ
その事件が起きたのは、今を遡ること約1年前、2006年の8月のこと。
彼女(ここでは個人情報保護のためA子と呼ぶことにする)は、ごく普通のサイクリスト。今日はごく親しい人と連れだって、原宿からほど近い某有名ロードバイクプロショップを訪れていた。
「な○○まフレンド」と呼ばれるそのショップは、一部大手自転車ブランドの取り扱いこそしていないものの、パーツ類の安さや品揃えの豊富さ、そして知識豊富な店員たちの熱気もあり、いつも賑わっている店だ。
お盆休み前だからだろうか、今日はいつにも増して人が多い。常連客だろうか、派手なレーシングジャージを身にまとったローディーと思われる若者が真剣な目付きでパーツの品定めをしている。
A子は、店内の人達の熱気に若干気後れしながらも、目的の商品を求め、2フロアある売り場の2階部分へと急ぐ。目的の品は店内一番奥の棚にきれいに陳列されていた。
「へぇ、結構高いのもあるんだ。」
A子はその不思議な商品群を眺めて言った。
「おかしな世界があるもんだわ、こんなもので2万円以上も…」
「シマノのこれなんかいいかもね。でも、こっちのクランクブラザーズの方がいいかな…」
一緒に来た男性(ここではB夫としておく、やはり個人情報保護のためだ)は、目を輝かせながらA子にアドバイスを送る。
そう、A子はペダルを買いに来たのだ。それもビンディングペダルを。
約5ヵ月ほど前にB夫は自分のクロスバイクに生まれてはじめてビンディングペダルを取り付けた。彼はそのペダルをいたく気に入り、そしてお節介なことに、そのビンディングペダルがいかに素晴らしいものであるかをA子に吹聴したのだ。
A子は、そんなものかなぁ…とは思ったが、特に購入を検討することはしなかった。いちいちB夫の言葉を全部真に受けていては大変だからだ。
自転車は決して嫌いではないが、そこまではさすがにのめり込めない…。A子はそう感じていたが、その風向きが変わったのはつい最近のこと。来週には自転車で旅行に行く話が決まり、B夫のひとこと
「ビンディングペダルがあった方が全然ラクチンだよ!」に感化されてしまったからだ。
[前置きだけですごーく長くなりそうな気配なので、中略]
結局選んだのはシマノのSPDペダル、PD-M540だった。マウンテンバイク用の両面ビンディングペダルだ。シューズも一緒に購入した。
これが購入したシマノのSPDペダルだ。両面踏みで使いやすいはずなのだが…
A子の自転車「スペシャライズド・クロスライダーXCスポーツ」には真新しいビンディングペダルが取り付けられた。親切な店員さんはビンディングペダルの使用方法を簡単にレクチャーし、A子は店の前の道を何度か往復しながらペダルのはめ方、はずし方を練習した。まだあまりうまくはないが、なんとか乗っていけそうだ。
A子とB夫は[な○○まフレンド]を出た。2台の白いクロスバイク、スペシャライズドとジャイアントは快調に走り出した。ビンディングのおかげだろうか、A子のクロスバイクはいつもよりスピードが出ているようだ。
最初の角を曲がった。2台のクロスバイクは時速25km/hで大通りを走る。
前方に信号だ。赤に変わる。
先頭を走るB夫のクロスバイクはスーッと減速し、停止線のあたりで停車した。
A子が乗るスペシャライズドのクロスバイクも同じように減速してきているはず…。さてこの道を右折した方がいいかな…とB夫がルートを考えはじめたそのとき…
「あ~~~」ガラガラガッシャーン!!!
その場所とはあまりに不釣り合いな悲鳴と、そして何かがクラッシュするような物音が聞こえたのだ!
「えっ、まさか…」
そう、そのまさかだった。
A子は自転車を普通に停止させることには成功したが、そのまま足を地面に着けることができず、見事にに右側にひっくり返っていた。ビンディングを咄嗟にはずせなかったのだ。見事な立ちゴケだ。
A子には何が起きたのか一瞬理解できなかった。
何の問題もなかったはず。普通に走ってきて、信号が赤だから普通に止まろうとしただけなのに…。
普通に足を出そうとしたら、なぜか足が動かない!!!(その一瞬はまるでスローモーションのように感じられたとA子は事件後にコメントしている。) あ~と思いながら何をすることもできず、そのまま右側に倒れてしまったのだ。
痛い…、どこかをすりむいたかもしれない…。
だが、不屈のA子はこのくらいでめげるような女の子ではなかった。
「大丈夫!」
と気合いを入れ直すと、もう一度スペシャライズドにまたがり、再度スタートした。
「さぁ、仕切り直しだわ。もう大丈夫。次は絶対にコケないから…」
2台のクロスバイクは西麻布を抜け、恵比寿へと向かう。
「なんとか調子出てきたみたいだね。」
B夫はやさしくA子に声をかける。
「うん、大丈夫みたい…」
一度はコケてしまったが、ダメージもそれほどなく、どうやらやっとペダルにも慣れてきた。素敵なサイクリングになりそう…とA子は思った。
だが、そう簡単に事は運ばなかった。彼女にとって「ビンディング」とは思ったよりずっと手強い敵だったのである…。
2台のクロスバイクは代官山へと近づく…
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さらなる試練がA子を襲う!この続きは次回!
※この話は私が実際に体験した真実に基づいて構成されています。今回は特に誇張表現を控え、ビンディングペダルの真実を伝えるべく努力しております。そろそろ時間が尽きたので、この事件の顛末は次回をお待ちください。
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