リチャードがグループを去ったことを英二は後ほどコングとボーンズから聞いた。アッシュは何も語らなかったが、英二は何となく自分が関係していると感じていた。
(僕のせいでアッシュにも、誤解したリチャードにも迷惑をかけてしまった……)
「ごめん、アッシュ……」
英二はアッシュに謝ろうとしたが、アッシュは首をふった。
「お前が謝る必要は何ひとつない」
「でも」
「もういいんだ。……むしろ謝らないといけないのは俺だ。すまない、英二」
逆に謝れてしまい、英二は驚いた。
「どうして君が謝るの?」
「それは……」
一瞬口ごもったアッシュを見て、英二はわざと明るい口調で笑った。
「ははは、もうよそう。 こんな話……さぁ、メシにしよう」
英二は立ち上り、台所へと向かった。
「……」
アッシュは英二にリチャードがしようとしたことを説明することはできなかった。
***
リビングの窓辺に立ち、アッシュは数か月前に起きたリチャードの事件を思い出していた。
(あの時、英二のことを子分にちゃんと説明しておくべきだった……)
アッシュは今更ながら後悔していた。リチャードの事件は自分のせいだとアッシュは思っていた。リチャードの勝手な思い込みが主な原因なのだが、それえもアッシュは孤独な自分の傍に英二を置いていたからこんなことが起きたのだと思っていた。
「――アッシュ?」
声をかけられてアッシュはハッと我にかえった。振り向くと英二が不思議そうに見上げていた。
「どうしたんだい?」
「なんでもない、ぼうっとしていた」
彼を心配かけまいとアッシュはふっと笑った。
「変なの。呼んでも気が付かないなんて……」
「そんな時もあるよ……疲れているのかもな」
「そうかもね……なんだか今日は静かだなぁ」
窓の外を眺めながら英二はつぶやいた。
「そうか? いつもと一緒だと思うけど?」
「ははは、そうか、音楽でもかけようか。気分転換になるかも」
やはり何かあったんだなと思い、アッシュは心配そうに英二を見つめた。
リチャードが英二を狙ったことは彼に伝えていない。しかし伝えなかったことで、英二は自分が子分たちに話したことでアッシュが彼を追い出したのだと思い込んでいたようだ。
(このまま放っておいていいのだろうか?あいつは俺に遠慮して相談できなくなっているんじゃないか?)
英二を守ろうと思って黙っていたことが彼を追い詰めている気がしてならなかった。
「英二、おまえに話しておきたいことがある」
「なんだよ、突然?」
「数か月前のことだ――リチャードをグループから追い出した理由なんだが……」
「説明しなくても大丈夫。何となく想像がつくよ。君は僕を彼から守ってくれたんだろう? 」
英二は穏やかに笑ったが、アッシュは何も答えられなかった。
「・・・・・・」
アッシュは思わずうつむいてしまった。いつも自分は彼に支えられているというのに、こういう時は何もできないのが悔しく感じられた。
<続>次回終了
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おはようございます。わたくし、やってしまいました・・・腰を。寒いし運動不足だし調子悪いなと思っていたのですが・・・激痛でうごけません。皆さんも気をつけて!