【ハロウィン創作】アッシュと子犬の物語 第四話:少年との生活 | BANANAFISH DREAM

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 ある夜、アッシュはひどく疲れた様子で戻って来た。彼のジーンズには土埃と汚れがついており、Tシャツには血が付いていた。


 彼はベッドに倒れ込んだ。僕は少し離れた場所で彼の様子をじっと見ていた。アッシュは僕がまだドッグフードを今日は食べていないことに気がつき、ゆっくりと起き上がった。ボクは大人しく吠えずに待っていた。



 ドッグフードを食べるボクをアッシュは静かに見ていた。床に横たわり、僕の尻尾を撫でながら。彼はボクのクルクル巻いている尻尾が気に入っているようだ。



「ギズモ、おまえは辛抱強い犬だな」



 そう言って彼はボクの頭を撫でた。ボクはアッシュが心配になって彼の顔を見上げた。じーっと彼の顔を見ているとアッシュは何かを感じたようだ。



「おまえ……俺のことを心配してくれているのか?」



 ボクは尻尾を振りながらアッシュの足元にすり寄った。



(ずっとずっとアッシュのそばにいたい――)



 アッシュはほほ笑み、ボクを抱っこした。



「おまえ、俺のそばにいたいのか?」



 優しくボクの顔を撫でてくれる。その心地良さに思わず声が出た。



『キュン――』



 ボクは鳴いてアッシュに甘えた。彼も嬉しそうにボクの身体を撫でてくれたが、ふとその動きが止まった。



(どうしたの?)



 アッシュを見上げた。彼は寂しそうな口調でぽつりと言った。



「――でも俺とずっと一緒に暮らすのは無理だな」


  

  ***




 ボクの傷は随分良くなった。以前よりももっと動けるようになったボクは気の向くまま部屋の中を歩きまわり、アッシュのベッドの上によじ登ろうとしてスキップに叱られてしまった。
 
 
 食欲旺盛で、アッシュやスキップが何かを食べている時は興味津々で彼らの元へ駆け寄り、おねだりをした。



 ある時はドッグフードの空き箱の残り香に心を奪われて、ボクはゴミ箱に頭を突っ込み身動きが取れなくなった。


 アッシュはボクを見て、腹を抱えて笑っていた。ボクはアッシュとスキップが大好きだった。彼らがはしゃいでいるとボクは必ず彼らに飛び付いた。彼らといつも楽しく仲良くいたいといつも想っていた。


 ある夜、ボクがドッグベッドに寝ていると、グリフィンの部屋から奇妙な声が聞こえてきた。



「――シュ…」



(なんだ、この声は?)


 ドアがギギッと開き、車いすを動かしながらグリフィンがこちらの部屋に入って来た。彼が自ら動く姿を初めて見た。彼の表情は蒼く、口元は震えていた。



「バ……バナナ……フィッシュ……」


 魘されたように訳の分からない言葉をグリフィンはつぶやきだした。


 彼ははじめてボクを見た。



「――あ、あぁ……あ!」



 彼はボクに近づいた。ボクは怖くなってベッドの下に隠れた。グリフィンは松葉づえを手にもち、ベッドを激しく叩き始めた。



「バナナ――フィッシュ……」



(怖い、助けて!)



 グリフィンの奇妙な行動に脅えたボクは震えながら彼が落ち着くのを待つしかなかった。


 そしてやっとアッシュが帰って来た。


「――グリフィン! どうしたんだよ!」


 アッシュはグリフィンのもとに駆け寄り、彼の手から松葉づえを奪った。



「兄さん、落ち着いて! 怖がらなくても大丈夫だ、俺がそばにいる――」



「――あ、あ、あ……」



 グリフィンの背中を撫でて彼を落ち着かせようとする。根気強く声をかけて、ようやくグリフィンの呼吸が少しずつ落ち着きはじめた。


「兄さん、部屋に戻ろう」



 アッシュはグリフィンの車いすを押して彼の部屋に戻った。



 しばらくしてアッシュは部屋に戻って来た。ため息をついたあと、ボクがいないことに気がついた。



「ギズモ、どこだ、どこにいる?」



 慌ててアッシュがボクを探し始めた。グリフィンに何かされたのではないかと思ったらしい。ボクはベッドの下から頭を出した。



「ここにいたのか。――悪かったな、怖い想いをさせて」



 アッシュはボクの顔を覗きこんだ。ボクはアッシュの頬をペロリと舐めた。



「おいおい、何をするんだ。おまえは――」



 驚いていたが、アッシュは笑っていた。



 怖かったけどアッシュがボクを守ってくれた。ボクは再び安心して眠りについた。アッシュはボクの背中を撫でてくれた。彼に撫でられると安心する。すやすやと母さんたちの夢をボクは見ていた。



 だが、この時アッシュは違うことを考えていた。



「おまえの傷、もうほとんど治ったよな……」



  ***



「スキップ、ギズモの貰い手をみつけてくれ」


「――え、ボス……それ本気かい?」



 アッシュの言葉にスキップは驚き目を見開いた。


「そうだ、こいつの傷はもう治った」


 冷たくつきはなすような口調でアッシュは言った。


「そんな……俺、こいつをもらうよ!!」



 スキップはボクを抱きしめた。彼はボクを家族のように感じてくれている。それはボクも同じだった。


「スキップ、おまえの妹は動物アレルギーだろう?」


「それは……」


 困ったように彼はボクを見ていた。


「いいか、数日内に貰い手を見つけるんだ」


「ボス……」



 アッシュはそう言って部屋を出て行った。ドアがバタンと閉まった後、スキップは寂しそうにボクを見てつぶやいた。



「ボスだって本当はギズモと一緒にいたいくせに……」


  <続>



おはようございます!


ギズモと英二が重なって見えてきましたね(^^;)


一緒にいると癒されるけど、この環境はギズモにとっては良くないと思っているようです。

ギズモを手放そうとしますが……!?


そして、今日は舞台を見る日♪ ワクワク~(ノ^^)八(^^ )ノ


もしバナナフィッシュがハッピーエンドで終わるなら~365日あなたを幸せにする小説■BANANAFISH DREAM


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