【ハロウィン創作】アッシュと子犬の物語 第五話:別れ | BANANAFISH DREAM

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 この数日間、スキップはボクにとびきり美味しい缶詰や犬用の肉を食べさせてくれた。今日のおやつは可愛いカボチャの形をしたドッグビスケットだった。
 


 食いしん坊のボクは嬉しくてそれらを全部食べてしまった。ふだんなら餌のやりすぎはよくないとアッシュは言うのだが、この数日間何も言わない。



 スキップはボクの為にオレンジ色のペット用ドレスを買ってきた。ジャックオランタンの顔が背中にプリントされており、フードには角が生えている。


 衣装代は彼がアッシュから貰ったおこずかいを貯めて買ったものだ。  



「おい、スキップ。何だよその衣装は……」



 カボチャ嫌いのアッシュはボクのコスチュームを見て呆れている。



「いいじゃないか、ボス。ハロウィンなんだし、それに…… 」



 スキップは言葉に詰まった。



「それに?」



 アッシュはスキップの変化に気づいた。スキップは視線をそらし、俯いたまま言った。



「――ボス、ギズモの貰い手が見つかったよ」



 その言葉にアッシュの肩がピクリと反応した。



「そうか」


 

 一言だけだった。



「ギズモを引き取りにくるって。今日、セントラルパークで新しい飼い主に渡すつもりだ」


「――」


 アッシュは何も答えなかった。


「チャーリーに犬を欲しがっている家族を紹介してもらったよ。NY在住の日本人だって。子どもが犬を欲しがっているらしい」


「――そうか、あとは頼んだぞ」


 アッシュは立ちあがり、そのままドアノブに手を握った。ボクの方を見ようとせずに出て行こうとした。


「ボス……最後にこいつの顔を見てやってくれよ。短い間だったけどギズモはボスと俺の『家族』だったじゃないか――」



 スキップの言葉にアッシュは一瞬見動きが取れなくなった。そしてゆっくりと振りかえった。



 ボクは尻尾をふりながらアッシュの足元へ移動し、彼を見上げた。これが最後の別れなんて全く気付かなかった。



 アッシュはふっと笑い、しゃがみこんだ。ボクの目を見て彼は言った。



「ギズモ、元気でな。新しい家族のもとで幸せになれよ」



 そして彼は部屋を出て行った。


 その後、スキップに抱きかかえられてセントラルパークへと向かった。


 街のいたるところはハロウィン色に染まっていた。ハロウィーンを待ちに待った子ども達がお菓子を入れるバスケットを手に持ち、思い思いの仮装をして走り回っている。大人たちも仮装をしてお菓子を子どもたちに配り、楽しそうに笑っていた。



 久しぶりに外にでたが、街がキラキラと光っているようにみえた。いつも薄暗い裏通りでいたボクには新鮮だった。


 賑やかな通りを抜け、ボクたちはセントラルパークに入った。芝生の上にレジャーシートを敷いてハイキングをする家族連れやカップルでいっぱいだ。
 


 ランニングウェアを着てジョギングをする人達とすれ違いながらボクたちはしばらく歩いた。
 
 


 噴水のある広場の前で東洋系の家族と金髪の男性が雑談していた。10歳くらいの黒髪の女の子とその両親だ。そしてスーツを着た金髪の男性が僕たちに気づいて手を振った。 



「チャーリー」



「スキップ! 待っていたよ」



 彼らの元へ行く時、ふとアッシュの匂いがした。ボクはキョロキョロと周りを見渡したが、この広い公園のどこに彼がいるのか分からなかった。



 でもあの匂いはアッシュだ。この時のボクはまた家に帰れば彼に会えるだろうと思っていた。でもそんな事はなかった。



 きっとアッシュはボクのことを陰からそっと見送っていてくれたのだろう。ハロウィンの日、ボクはアッシュとお別れをした。


<続>



おはようございます!今朝、大阪へ戻ります~(^^)

舞台とオフ会の感想をできるだけ早くUPできるようにしようと思います。楽しみにしてくださいね!



もしバナナフィッシュがハッピーエンドで終わるなら~365日あなたを幸せにする小説■BANANAFISH DREAM
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