■書評■ 努力しない生き方 | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

■書評■ 努力しない生き方


麻雀に興味のない人には馴染みのない名前かもしれないが、麻雀好きなら知らない人はいないだろうというほどのビッグネーム「桜井章一」。
本当にそんな世界があるのか!?とすら思ってしまうだろうが、実際に「代打ち」として裏プロの世界で20年間無敗の伝説を築き「雀鬼」と呼ばれている御方。
現在は、麻雀を通した人間形成を目的とする「雀鬼会」を主宰され、多くの若者などを導いているという。

そんな桜井さんが人生哲学を語ってくれているのが本書。
麻雀に関する例えも出てはくるけれど、麻雀に全く関心がない人にとっても、雀鬼流の人生哲学からは「目から鱗」的な学びを得ることができるはず。
「頑張っているんだけど、なかなか思うように結果が出ない…」など、特に自己啓発本など読んで、自分の成長の為に力んで、頑張って生きちゃっている人には衝撃が走るかもしれない。
少なくとも僕は、付箋を貼りまくり、抜き書きしようものなら写本に近いような分量になってしまうのじゃないかと心配しながら読んだほどだ。

桜井さんの狙い: この本では、「努力する」「頑張る」「求める」「つくる」などといった足し算へと向かうさまざまな発想や行為を俎上に載せている。そしてそれらがどれだけ無理で不自然なものを孕んでいるか、それゆえ破綻しやすく、かつ人生に対していかに破壊的なものになりうるかを述べたつもりである。(p.5)

桜井さんの言う「足し算」的な生き方というのは、僕らにとっては常識とすら思えるほどの価値観、今より成功したい、裕福になりたい、評価されたい、幸せになりたいといった希望を抱いて、それらを叶えるために努力します、みたいな生き方を指す。
本書で伝えてくれる雀鬼流人生哲学は、それらを否定するというよりも、もっと全く新しい別の生き方を示してくれていると言える。
「足し算」に対して分かりやすくするために「引き算」という言い方をしているけれど、それは、「足し算」の反対という意味での「引き算」ではなく、「足そうとすることから「足そうとする力」そのものを「抜く」」という意味での「引き算」。

エネルギーを抑えない: 私自身は基本的に、どんな状況でも手を抜くということはしない。興が乗らなくて気持ちが入りづらいということはあっても、少なくともそこで手を抜こうとは考えない。
 というのも、エネルギーというのは出し惜しみをしていると、エネルギーが蓄えられるどころか、かえって涸れていく性質を持っているからだ。(p.165)

力は抜いても手は抜かない、というのがミソ。
「努力しない」などというと手を抜くということと勘違いする輩がいるかもしれないが、そういうことではないと心すべし。
それどころか、自然体で、しなやか、ある種「悟り」の境地に達した生き方ではないだろうかとすら思ってしまう価値観がそこにあると思う。


ここでは、本ブログでメインターゲットとして想定している、組織で生きる向上心ある若手ビジネスパーソンに、是非とも心得ておいていただきたい「引き算」的な生き方を紹介しておこう。
特に、自己啓発に余念がなく、頑張っている人に効く教えを選んだつもりだ。
(そうしたら自然と自戒させられるところが多くなってしまった…)

休まない: 「この仕事がすんだらちょっと休もう」と思うから、仕事が疲れて辛いものになったりするのである。そうではなく、仕事をしながらその中で自然と休む。そんな感覚で仕事ができれば言うことはない。(p.60)

好きな仕事なら打ち込める、好きだから辛くはないし続けられるから自ずと成果はついてくるなどという話はよく聞くけれど、それらとは少し違う感じを受ける。
好きなことだけやれればいいけれど、そうではなく、何事にも「遊び」の感覚を入れることが、力を「抜いて」、結果として成果を出していくことにつながる。
クリエイティブな仕事の人にそういう感覚の人が多そうだなあと思うけれど、これをどう自分の仕事に取り入れていくかは課題として捉えたい。

意味を求めない: 人生には無駄なことや意味がないようなことはたくさんあっていいと思う。それはそれで人生に豊かな栄養を与えてくれるからだ。不合理や無駄は、合理的に意味を求めるのではけっして得ることのできない大きな可能性を人に与えてくれる。(p.86)

特に自らの成長の為に効率重視な考え方に傾斜しがちな若手サラリーマンは心すべし。
将棋の羽生さんなんかも同じようなことをおっしゃっているし、逆に言えば、人生には無駄なことや意味のないことなんてないとも言えるのではないだろうか。
その結果が短期的に、目に見える形で現れるかどうかなんて分からないし、現れないこともあるかもしれないけれど、そういうものを即物的に「求めない」姿勢が大切。

つくらない: いいものは、いろいろとやっているうちに自然と生まれてくるものだ。それゆえ、「つくる」でなく「生む」という感覚を私は大切にしている。
 つくろうと思うと、そこに「いいものにしよう」とか「ウケよう」とか余計な気持ちが入ってしまう。そういう気持ちが強いとあまりいいものはできないものだ。(p.124)

いい企画をつくろうとか、ついつい思ってしまう自分がいたりして(汗)
そうやって力んでみたところでいい企画が生まれた例がないことも実体験として分かっている。
ブログ記事だってそう。
いい記事を書こうと力まずに、肩の力を抜いてすらっと書き殴ってみたものの方が案外受け入れられたりするのだから。

運を求めない: 運というものは実は偶然のものではない。運はやるべきことをきちんとやっていれば向こうからやってくるものである。その意味では必然のものと言える。(p.170)
 運に選ばれるとは、結局日々、どのように生きているかで決まることなのだ。
仕事でも人生でも、いざ勝負という局面になったときにあわてて姿勢を正しても、運はこちらを向いてくれないだろう。(p.172)

運がいいとか悪いとか、人はときどき口にするけど…、なんて「無縁坂」では歌われているけれど、そういうことはないんだと。
「努力しない」のだけれど、日々の生き方がいざという局面を決めるのだから、一日たりとも「抜く」ことはできない。
海洋冒険家の白石さん、音楽プロデューサーのつんく♂さんも、運やチャンスというものに対して同じような考え方をもっていて、そしてそれらを掴んでいる。

そう、また僕は、これまで多くの書籍でもそうだったように、「今の日々の生き方で準備ができていると胸を張って言えるか?」と問われている。
そして「Yes!」と言えないからこの言葉が胸に刺さって痛いんだろうなと…。

一見、センセーショナルなタイトルではあるけれど、強烈に胸に響く価値観に共感する。
知らず知らずのうちに偏った価値観をほぐし、自然体でしなやかなバランスを取り戻させてくれる、そんなインパクトをもった一冊だった。
是非、読んでみていただきたい。


■ 第49回書評ブロガー達が勝手にインパク本レビュー

本レビューは 本魂!(ホンダマ)が企画したイベントへの参加であり、同じくイベントに参加しているブロガーの方々のレビューは以下のとおり。
是非、それぞれのブロガー独自の視点を比べて楽しんでもらいたいが、さらに、本書をお読みいただき感想を聞かせていただけたら、非常に嬉しい。

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■ 基礎データ

著者: 桜井章一
出版社: 集英社(集英社新書) 2010年3月
ページ数: 192頁
紹介文:
努力をしてもそれが正当に報われない現代。苦境を打開しようとあがき、もがくほどに状況は悪化の一途をたどる、そんな経験をした人は少なくないだろう。「頑張っているのに」「力をいれているのに」うまくいかないのはなぜなのか? 麻雀の裏プロの世界で二〇年間無敗の伝説を持ち、雀鬼と呼ばれた著者によれば、そんな蟻地獄から脱出するためのヒントは「努めて力まない」やわらかな生き方にある。執着から離れ虚心に生きることで、逆にツキが巡ってくることがある、そんな雀鬼の気付きの世界。これは「努力」というトラウマからの“解放”の書である。

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