肌についた食べ物が危ない? | 子肌育Blog アトピーに負けない生活。

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肌についた食べ物が危ない?


こんにちは。橋本です。


肌についた食べ物のせいで、食物アレルギーになることがあるかもしれない。


そう聞いたら、どう思いますか?


食べたもののせいで、顔がはれたり、皮膚が赤くなったり、蕁麻疹(じんましん)が出たり、下痢、腹痛がおきたり。


それが、食物アレルギー。


食物アレルギーは、口から食べて腸に入った食べ物によっておこる。


長い間、常識では、そう考えられてきました。


ところが最近は、「食物アレルギーは、皮膚から始まることもある」と指摘されています。


正確にいうと、皮膚からの食物アレルギーが、「はっきり証明された」わけではなく、いくつかの「状況証拠」が出てきている段階です。


ちょっと、ここで言葉を解説します。


「状況証拠」というのはなにか?


たとえば、放火事件で、「容疑者Aが放火するのを目撃した」という人が、複数いるような場合。


この場合は、「容疑者Aが放火をしていた」直接的な証拠があるので、犯人として決定的になりますよね。


しかし現実には、直接的な証拠がない事件も、いっぱいあります。


そんなとき、犯人をどうやってみつけるのか?


それが、「状況証拠」です。


犯行時刻あたりに、容疑者Aを現場近くで見た

容疑者Aの服のそでに、灯油がついていた

容疑者Aが、過去に放火で逮捕されている


こういう状況が犯人である証拠を物語っている。つまり、「状況証拠」があれば、「犯人だと予想される」ということになります。


常識で考えて、「直接的な証拠がないから容疑者Aは犯人じゃない」ということが、考えられるだろうか。というわけですね。


話を戻して。


では、「食物アレルギーが皮膚から始まることもある」という「状況証拠」はなにか?


たとえば、ピーナッツアレルギーの発症を調査したものです。


ピーナッツアレルギーは、食物アレルギーの中でも比較的、症状が強く出るタイプのもの。


そのピーナッツアレルギーの発症に関して、2つ参考になる報告があります。


ピーナッツアレルギー


1つは、


ピーナッツオイルを含んだスキンケア用品を使用していてピーナッツアレルギーになった子どもたちを調査。


スキンケアをしていた部分の皮膚がきれいな子どもより、皮膚の状態が悪い子どものほうが、約5倍の発症率だった。 1)


もう1つは、


部屋に浮遊しているピーナッツの粉の量が多いと、ピーナッツアレルギーの発症率が上がっていた。 2) 


という、ピーナッツアレルゲンが皮膚から侵入している可能性を示す2つの報告です。


「ピーナッツを食べてピーナッツアレルギーになった」というのが、今までの常識のはず。


それだけではなく、「新しい考え方」では、


皮膚の状態が悪いところから、ピーナッツの成分が入って、ピーナッツアレルギーになることがあるかも。


家族がピーナッツを食べるため、ピーナッツの目に見えないような粉が、部屋の中にたくさん浮遊しているとしたら。

それが皮膚から入って、ピーナッツアレルギーになることがあるかも。


といった可能性が、考えられるようになってきているんですね。


小麦アレルギーに関しても、「状況証拠」があります。


これは、よくいわれる話なんですが、「パン職人で、小麦アレルギーになる人がいる」という話を聞きます。


もちろん、小麦アレルギーをわかっていて、パン職人になるわけではないんだと思います。


パンを作り続けているうちに、小麦アレルギーになってしまった。


つまり、小麦粉が舞う中で仕事をしているので、「皮膚から感作したのではないか?」というわけですね。


また、最近では、「茶のしずく石けん」の自主回収があります。


「茶のしずく石けん」を使用していた人が、小麦アレルギーを発症するケースがあり、2011年5月20日にメーカーが自主回収を始めたというニュースがありました。


「茶のしずく石けん」には、泡立ちをよくしたり保湿の目的で「小麦加水分解物」という小麦成分が入っていました。「アレルギーは、それが原因ではないか?」という話です。


ふつうは、小麦アレルギーって、「食べて」なるものですよね。


それが、「皮膚から感作したんじゃないか?」ということです。


こういった「状況証拠」からも、「食物アレルギーが皮膚から始まることもある」と指摘されはじめているんですね。


今まで考えられていた、食物アレルギーに感作されるルートは、「口から食べて、腸で吸収されるもの」から。


これを専門用語で、「経口感作」とよんでいます。


それにくらべて、「皮膚からアレルゲンに感作すること」。


それを、「経皮感作」とよびます。


で。


ここまで長々と話しましたが、「じゃあ、どうすればいいのか」という話です。


「皮膚に食べ物が、つかないようにする」


これは無理ですよね。


「ピーナッツの調査」のように、「部屋のチリ」まで疑いだしたら、キリがありません。


でも、食べ物になるようなものを、あえて肌につけるようなことはしないほうが、いいかもしれません。


世の中には、食べ物になるようなものが含まれているスキンケア商品はたくさんあります。


それから、まだ、きれいに食べることのできない赤ちゃん、子どもなら、食後は口のまわりをきれいにする習慣をつける。


子どもの食事は口の周りが汚れる


そして、もっと大事なこと。


アレルゲンが皮膚についても大丈夫なようにする。皮膚のバリア機能を高める。皮膚をなるべくいい状態にする。


というようなことが重要です。


湿疹、乾燥肌の状態にならないように、赤ちゃん時代から過ごしていったら、少しでもアレルギーが増えていくのをふせげるのではないか。


それは、「食物アレルギー」についてもいえることかもしれません。


とくに、赤ちゃんでは、食べ物にふれやすい「口のまわりの湿疹」「カサカサ」を治しておく。


また、口まわりの汚れをふいていると、肌がカサカサしがちになります。


その予防としても、口をふいたら、ワセリンなどの保湿剤を塗っておく。あるいは、食前に塗っておくことも有効かもしれません。


今までの常識は、「食べたものでしか、食物アレルギーはおこらない」でした。


それが、「食物アレルギーが皮膚から始まることもある」といわれるようになってきているんですね。


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参考文献:

1) Lack G, Fox D, Northstone K, et al. Factors associated with the development of peanut allergy in childhood, N Engl J Med 348: 977-985, 2003.

2) Fox AT, Lack G. High environmental exposure to peanut un infancy as a risk factor for peanut allergy. J Allergy Clin Immunol 115: 34, 2005.