容疑者Xの献身 (文春文庫)/東野 圭吾

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☆☆☆☆☆
発売されてから随分たっていますが、文庫化を待って購入したので、今年初めて読みました。
とにかく評判の高かった今作ですが、実際に読んでみるとその理由がよく判りました。

私がミステリーを評価する場合のポイントは大きく分けて2つです。
1つ目が「物語り」として感じさせるものがあるか
2つ目が「ミステリー」としての完成度

いくら感動的なストーリーでも無茶苦茶なトリックを使われれば興ざめですし、逆もまた然りです。もちろん、この2つの要素に絡んで人物造詣や、世界観といったものも評価の対象です。
ただし、「物語」「ミステリー」以外の要素はそれを成立させるための要素として捉えています。例えば、以前の書評で書きましたが「ガリレオシリーズ」と「京極堂シリーズ」は「一見超常現象に見える事件を科学的な視点から解明する」という共通した設定を持っています。
しかし、ガリレオシリーズに京極夏彦の世界観を持ち込めばかなり違和感があるでしょう。
また、「東野圭吾」と「森博嗣」は理系ミステリーという共通した要素を持っていますが、ガリレオシリーズに真賀田四季が登場したら興ざめですよね。
随分、迂回しました。つまりは、「物語」と「ミステリー」以外の要素はその2つを違和感なく、より引き立たせるためのアイテムとして捉えているわけです。

さてさて本作についてこの2つの要素を評価すると、ともに8点、9点をつけられるレベルであります。
美しくも儚く哀しい物語と、トリックを予測可能なヒントを充分に与えながらも、読者を裏切るレベルのミステリーとなっています。私は比較的早い段階でトリックに気づいてしまったんですが、「あっ!!」と思える、トリックに気づけた瞬間にフリーズするレベルですから、充分にミステリーの醍醐味を楽しめました。

ストーリーについては映画化までされた本作ですから詳細な説明は不要だと思いますが私の感想を端的に書けば一見すると「合理に生きた男が、不合理な感情に向き合うことによって、合理的な行動をとり、不合理な目にあう物語」なのですが、実は彼の無限に広がる頭脳にとっては不合理な状況ですら自由であり、それを壊されることによって心の自由を失うという、実に完成されたそして悲しい物語でした。読んでいない方には全く伝わらない説明ですが、この本は是非読んでもらいたいです。東野圭吾作品の中では屈指の名作です。

初めて知ったときにびっくりしたんですがドラマ版のガリレオの音楽って福山雅治が作ってるんですね。老けないどころかドンドン魅力を増していくし、写真も撮れて、ドラマ音楽まで作れるんですか…。
一昔前のアイドル的イメージは完全に払拭しましたね。
ドラマ音楽中々いいしな~。
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「容疑者Xの献身」オリジナル・サウンドトラック/菅野祐悟

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