辺野古への基地建設に待ったをかけるジュゴン訴訟 | 永田町異聞

辺野古への基地建設に待ったをかけるジュゴン訴訟

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普天間基地移設に関して、辺野古の海に棲む絶滅危惧種ジュゴンの行く末を案じる人々が、その保護を求めてサンフランシスコ連邦地裁に提訴し、勝利していたことを、読者からのメッセージで知った。


サンフランシスコ連邦地裁の判決が出たのは昨年1月24日のことだ。


地裁は、被告の米国防総省に対し、新基地建設が米国文化財保護法(NHPA)に違反するとして、「影響を回避するための考慮」を命じた。


新基地の建設計画は、辺野古の米軍キャンプ・シュワブ先端と、周辺海域の埋め立て予定地に、2本の1600メートル滑走路をV字型に配置するというもの。


日本政府がこの建設を進めるには、米軍基地の一部を使用するため米政府の許可が必要だが、訴訟で逆転判決が下りない限り、米政府が許可を出すことはできないという。


つまり、辺野古に普天間代替基地をつくる日米合意を守れと迫っても、現実にこの訴訟が米政府の思惑通りに決着しない限りは、着工できないわけだ。


この見解は、今月2日、原告団の弁護士が、国会議員会館での緊急院内勉強会で明らかにした。


説明によると、昨年1月の地裁判決は、第1審中間判決で、現在は最終判決を待っている段階。


米国司法の独立性からして、米政府に厳しい判決が出るのは間違いないと見られる。もちろん、控訴審に持ち込まれる可能性もある。


サンゴが広がる辺野古岬周辺の海には、海草を食むジュゴンの姿がよく目撃される。基地が建設されれば、日本では数少ない貴重な海の哺乳類が絶滅の危機に瀕する。


そういう理由で提起されたこの裁判。国防総省側は裁判所に門前払いを求めた。しかし、裁判所は 「ジュゴンは沖縄県民にとって文化的、歴史的にも重要だ」 とその主張を退けた。


米国の法律では、「影響を与えるかもしれない」 場合には保護のための手続きをとらなければならない。つまり明らかに影響を与えるかどうか分からなくても、恐れがあれば、保護についてのこの条文を適用できる。


基地建設で、海草が生えている場所が破壊されると、ジュゴンに「影響を与えるかもしれない」。法廷でそう判断された場合、影響がないことを国防総省が証明しないかぎり、ジュゴン保護の手続きをとらなねばならないのである。米国政府にとっては高いハードルだ。


緊急院内勉強会に出席した環境NGOの星川淳さんは「米国内法で自分が許可を出せないものを、米政府は日本に“やれ、やれ”と迫っているというバカげた構図になる」と自身のブログに書いている。


不思議な話だが、国防総省は当然、この困難な状況を知りつつ、日本政府に圧力をかけていると考えざるを得ない。これは、どういうことなのだろうか。


これまでに何度も書いたように、米海兵隊の本音は、沖縄住民の負担軽減のために普天間を返還するわけではなく、老朽化しているから移転したいだけだ。


米軍が重視しているのは、グアムをアジア軍事戦略のハブ基地にする再編 であり、辺野古に新しい滑走路、いや基地建設工事がどうしても欲しいのは、日本の政官業の利権集団である。


ならば、なぜ性急に日本の新政権に、答えを求めるのか。


今月8日、沖縄海兵隊のグアム移転予算がほぼ満額、上下院の協議会で認められた


ゲーツ国防長官は10月20日に来日し、「普天間の代替施設なしに米海兵隊のグアム移転はない」と岡田外相らに圧力をかけたが、代替施設についての日本側の意思表示がないまま、予算がついた意味は大きい。


すなわち、グアム移転は、米国の利益のために実行されるものであることを明白に物語っている。


ただし、上院が普天間移設の決着がついていないことを持ち出し、11月17日にいったん、グアム移転予算を70%カットして可決した経緯があり、ゲーツ長官が困惑していたことは事実だ。


上院のダニエル・イノウエ議員は13日付朝日新聞のインタビュー記事でこう語っている。


「米国の政府予算の確保が厳しさを増している現状の中で、国防総省は議会の前で『(日本との合意の実現時期は)わからない。明日かもしれないし、今日かもしれない』などとは言えない。国防長官が『私はどうしたらいいのか教えてくれ』という気持ちはよく分かる」


どこの国の議会でも同じだが、議員たちは野党を中心に、問題点を見つけては、さまざまな突っ込みを入れてくるわけで、それに対する答えを得たいというのが、政府高官の仕事の動機になっているという側面はあろう。


グアム移転予算が認められたとはいえ、今後、議会でことあるごとに追及されやすい問題は早く解決しておきたいのが人情でもある。


おそらく、米政府要人の頭のなかは、ジュゴン訴訟のことより、当面の議会対策でいっぱいなのだろう。


しかし、ジュゴン訴訟についての緊急院内勉強会で、原告側は「万一、辺野古への基地建設を決定して、工事に着手するようなことがあれば、米連邦地裁に工事の差し止め請求を行う」と宣言している。


米国の法律がからんでおり、日米政府ともに、この訴訟問題を避けて通れないはずだ。


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