辺野古より沖縄海兵隊グアム移転こそが米国の眼目? | 永田町異聞

辺野古より沖縄海兵隊グアム移転こそが米国の眼目?

米軍が沖縄住民のためというより、軍事戦略上の目的で、老朽化いちじるしい普天間に替わる海兵隊の基地を求めてきたことは、このブログでも何度か書いた。


その新基地を名護市の辺野古にするという2006年の日米合意に至る経緯を、チェンジした新政権が検証するというのは、ふつうの国ならあたりまえのことだろう。


「あした普天間基地がなくなっても困るわけじゃない」(週刊朝日)という、元CIA東アジア部長、アーサー・ブラウン氏の冷静な言葉をよくかみしめるべきだ。


米国にとって、在日米軍再編の眼目は、沖縄の新基地ではなく、海兵隊のグアム移転にある。


その施設建設費として60%にあたる、60.9億ドルを日本に負担させる約束をとりつけた。


沖縄駐留の海兵隊員8000人とその家族9000人の移転により、沖縄の負担を軽減する。そのためのグアム移転だから、日本がカネを出して当然だという理屈だ。


辺野古崎にV字型の2本の滑走路をつくり、それを普天間の代替とする日米合意は、11月16日の記事 で書いたように、主として日本側の意向に沿ったものだった。


米側にすれば、新しい基地を造ってくれるうえ「思いやり予算」といわれる駐留経費まで負担してくれるのに、断る理由なんてない。せいぜいそんなところではないか。


その証拠に、「沖縄よりグアム重視」の本音が、ことし6月4日の米上院軍事委員会で、米海兵隊総司令官、ジェイムズ・コンウエイ大将の口から飛び出した。


「普天間代替施設は、完全な能力を備えていなければなりませんが、沖縄では得られそうにありません」
「グアムや周辺の島々、その他アジア太平洋地域での訓練地確保は懸案事項です。海兵隊が納得するまで検討し、必要なら日本政府と交渉しなければならない」


海兵隊の総司令官が、普天間代替施設を沖縄以外に求めるかのような発言をし、具体的にグアムという地名まで出しているのだ。


2006年に「再編実施のための日米のロードマップ」が発表されたあと、米側実務責任者のローレス国防副次官はロイターのインタビューに以下のように答えた。


「海兵隊の沖縄からグアムへの移転は、地球規模の米軍再編にとって重要であり、太平洋地域での前進拠点づくりだ」


グアムにはアンダーセン空軍基地とアプラ海軍基地があり、そこに海兵隊の基地が加われば、状況に合わせて世界のどこにでも迅速に戦力を投入できる巨大軍事ハブが完成するのである。


沖縄の海兵隊をどのように移転するのか。これまで米側が明らかにしてきたのは、第3海兵遠征軍の司令部(うるま市、キャンプ・コートニー)がグアムに移るということだった。


即応体制を維持するため沖縄に実戦部隊を残すというが、これもおかしな話で、「それなら、沖縄は誰が指揮監督するのか」ということになる。


案の定、そうした説明がごまかしだったことを裏付ける資料が出てきた。


ことし11月に米海軍省グアム統合計画室が発表した「沖縄からグアム移転の環境影響評価」は、沖縄海兵隊の下記の組織や部隊の移転を前提にしたものだった。


第3海兵遠征軍司令部3046人、第3海兵師団の地上戦闘部隊1100人、第1海兵航空団の航空戦闘要員1856人、第3海兵兵站グループ2550人の、合わせて8552人である。


航空機については、12機のヘリが常駐し、25機のヘリと30機ほどの飛行機が一時配備される計画になっている。


これについて、伊波洋一宜野湾市長は「沖縄海兵隊の主要な部隊が一体的にグアムへ移転し、そのなかには普天間のヘリ部隊も含まれることがわかった」と強調している。


「普天間基地を閉鎖し、グアムに全面移転すべきだ」と唱える伊波市長は、先月26日、この米軍資料を鳩山首相に手渡して、辺野古案の見直しを訴えた。


もとより、鳩山首相は外交ブレーンの寺島実郎(日本総合研究所会長)の影響を受け、グアム全面移転案を模索しているフシがある。


寺島の考えとは、どのようなものだろうか。週刊朝日11月号のインタビュー記事で、寺島は以下のように語っている。


「沖縄の前方展開兵力をハワイ、グアムの線まで退け、東アジアの有事の際には急派する仕組みに変え、しばらくは日本がそのコストを負担するというプランも米国の一部にはあるんです」


背景として、「米軍の軍事技術の高度化により、相手の情報通信システムを遮断して攻撃をしかける戦略情報戦争の時代になっている」ことをあげる。


ただ、その場合の問題は、寺島のいう「しばらく日本がコストを負担する」ことが、可能かどうかだ。


米軍は日本からの「思いやり予算」をあてにして辺野古への移設を望んでいる。ならば、辺野古を取りやめる代わりに、日本がグアム駐留経費の一部負担をつづけるというのなら、米側としても検討の余地がないわけでもあるまい。


しかし、「思いやり予算」の一部を事業仕分けで「見直し」と判断した鳩山政権が、国外であるグアムの米軍基地運営まで毎年、コスト負担をしていくということになると、国民を納得させることはかなり難しいかもしれない。


米側にしても、日本の世論や政治状況の変化によって、重要拠点・グアム基地の運営が左右されるような不安定な状況は避けたいだろう。


こうして、あれこれ考えていくとまた袋小路に入ってしまうが、沖縄県外移設という難題を解こうと思えば、「グアム全面移転」くらいしか現実的選択肢は見つからないのも事実。


「もうそろそろ限界だ」という岡田外相の弱気な発言からみて、米側はよほど辺野古に固執しているようだが、「グアム全面移転」について突っ込んだ話し合いを試みたかどうか、ちょっぴり気になるところではある。


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