降りしきる雨の中・・・やっと…彼をみつけた。
傘もささずに・・・濡れて…
闇の中に佇むその姿に胸が締め付けられた。
彼の為に何かしたかった…。
セツカの言葉で彼に近づく…。
今の私は…キョーコじゃない…。
ここにいるのは…カイン。
「兄さんったら・・・傘もささずに・・・」
…彼の表情に続きの言葉は言えなかった。
縋るような目で…私を見つめる彼に身体が…勝手に動いた。
彼の頬を伝う雫は温かった。
敦賀さんが…泣いている?
今の彼は…カイン兄さんじゃない…。
ここにいるのは…私の知らない…男。
敦賀さんであって敦賀さんじゃない…
だけど、その瞳から目を逸らすことはできなかった。
彼が消えてしまいそうで…
今…手を離したら…どこか遠くへ行ってしまいそうな…
敦賀さんがいなくなってしまうようなそんな気がして
気がつけば…彼を抱きしめていた。
彼を苦しめている何かから守りたくて…
冷たい雨の中…そのまま動けずにいた。
「クシュンッ…」
私のくしゃみに彼がそっと立ち上がりコートで覆う。
コートの中の私…彼の熱が伝わってくる…。
春の夜の冷たい雨に濡れたままじゃ…二人とも風邪を引いてしまう。
私は…セツカの言葉で彼に告げる。
「兄さんっ…明日も撮影があるんでしょ?
このままじゃ二人とも風邪を引いちゃうわっ。」
私を抱きしめたまま…返事がない。
「兄さんっ…」
二度目の私の言葉に…彼がカインに戻る…。
「…そうだな…
お前に風邪を引かせるわけにはいかない…。
…ホテルに戻ろう。」
コートを私に被せた彼が…私の肩を抱き寄せて歩いていく。
そんな彼の仕草に…私の頬は熱を帯びていく。
部屋に着くと…頬を染めた私に…彼が気付いた。
「セツカ…ひょっとして熱…?」
そう云った彼の顔が私に近づいてくる。
おでこで熱を確認しようとする彼のその仕草に…ぼんっと全身が赤く染まった。
「わっ…私は大丈夫だから。に、兄さん、先にシャワーを浴びてきて?」
「セツ…俺が先に浴びるわけないだろう?
セツが…」
「兄さんがっ…」
二人の押し問答が始まるかと思ったその時…
「それじゃあ…一緒に浴びよう。」
そう言って…彼が私の手を引いてバスルームへと連れていく。
…って…ええ~~~っっ!!
ちょっと待って!!確かにセツなら…一緒に入るかもしれないけど
…けど…だけどっ…嘘でしょうっ??