読み始めてまもなく、ハマっていくのがわかりました。
語り手は少年なのに、周りを捉える眼と、状況を認識する力、
そしてそれらを表す冷静な語り口。
その先の展開が私の想像の外にあることだけはわかる、
ただならぬ空気を感じました。
◆
母親と折り合いの悪い祖母のもとに預けられた双子の少年が、
戦火を逃れてきた「小さな町」での日々を綴っています。
- 悪童日記 / アゴタ クリストフ (ハヤカワepi文庫)
¥713 文庫 / ¥550 Kindle版 Amazon.co.jp
舞台は第二次大戦下のハンガリーの「小さな町」。
戦時中はナチス・ドイツに占領され、
戦後はロシア兵がなだれ込んだ地域です。
といっても、人名にも、地名にも、固有名詞は出てきません。
戦時中、どんどん乏しくなる物資。
しかも「魔女」と呼ばれている祖母はケチ。
双子は働かなければ、食べ物を与えてもらえません。
といっても、単に同情を誘う小説とはほど遠い内容です。
このふたりは、あっけにとられる悪童ぶりです。
◆
その悪童ぶりは、努力と鍛錬に裏付けされた筋金入りです。
ふたり以外誰も頼ることのできない境遇で、
少年が生き残るために何を優先するか、
考えと行動を研ぎすませます。
自分で読み書きの力をつけ、訓練して生活の糧を手にいれ、
身の安全を図るために心身の忍耐力を磨きます。
異性への興味、食べ物への執着、大人への怒りなども、
感情を交えず、事実だけを書くと決めた日々の記録です。
戦時に生きぬくための智慧と決意が怖いほど迫ってきます。
とりわけ最後のページには、あっけにとられました。
◆
相性ぴったり、今年初めての鳥肌読書でした。
[end]
*** 読書満腹メーター ***
お気にいりレベル E■■■■■F
読みごたえレベル E■■■■□F
(ペタお返しできません。あしからず。)
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