筋金入り ~ 「悪童日記」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



読み始めてまもなく、ハマっていくのがわかりました。
語り手は少年なのに、周りを捉える眼と、状況を認識する力、
そしてそれらを表す冷静な語り口。

その先の展開が私の想像の外にあることだけはわかる、
ただならぬ空気を感じました。

         


母親と折り合いの悪い祖母のもとに預けられた双子の少年が、
戦火を逃れてきた「小さな町」での日々を綴っています。

悪童日記 / アゴタ クリストフ  (ハヤカワepi文庫)
¥713 文庫 / ¥550 Kindle版 Amazon.co.jp

舞台は第二次大戦下のハンガリーの「小さな町」。
戦時中はナチス・ドイツに占領され、
戦後はロシア兵がなだれ込んだ地域です。
といっても、人名にも、地名にも、固有名詞は出てきません。

戦時中、どんどん乏しくなる物資。
しかも「魔女」と呼ばれている祖母はケチ。
双子は働かなければ、食べ物を与えてもらえません。

といっても、単に同情を誘う小説とはほど遠い内容です。
このふたりは、あっけにとられる悪童ぶりです。

         


その悪童ぶりは、努力と鍛錬に裏付けされた筋金入りです。

ふたり以外誰も頼ることのできない境遇で、
少年が生き残るために何を優先するか、
考えと行動を研ぎすませます。

自分で読み書きの力をつけ、訓練して生活の糧を手にいれ、
身の安全を図るために心身の忍耐力を磨きます。

異性への興味、食べ物への執着、大人への怒りなども、
感情を交えず、事実だけを書くと決めた日々の記録です。
戦時に生きぬくための智慧と決意が怖いほど迫ってきます。

とりわけ最後のページには、あっけにとられました。

         


相性ぴったり、今年初めての鳥肌読書でした。


[end]


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