組曲のよう ~ 「レクイエム」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。


レクイエム / 篠田 節子 (文春文庫)
¥514 Amazon.co.jp / ¥378 Kindle版

現実の世界から虚構めいた世界をのぞき見る短篇が
組曲のように構成された短篇集。
短篇ながら作品それぞれに長い時間軸が織り込まれています。

         


死期が間近の夫と彼の実家の初めて訪問する妻
  男から受け取った手切れ金を元に資産家となった女性
自分の歓送会に向かう途中で見かけたコヨーテの姿を追う女性係長
  高収入から落ちめとなり、ホームレス老人と会う若い男性営業マン
家族連ればかりが住む公団に引っ越した30代の独身女性
  元教団幹部の伯父が病院で語る観音との出会いを聴く姪

         


描かれている長い時間に積もった思いは、その人ひとりだけのもの。
孤独な思いです。
周りは知らなかったり、端から見えていていてもそれは別物です。

「腕を一本、芋の根元に埋めてくれ」
教団幹部だった伯父が姪の祥子に遺した言葉は、
死期間近の幻想か、それとも斑ボケの垣間に見せた正気か。

とりわけ表題作「レクイエム」は、
教団、その元幹部で死期の近い伯父、痴呆、看護婦の姪、
戦争体験など、
個人、社会、歴史、宗教など多次元的設定が、
ページ数を超えた不思議な空間と質量を醸し出す物語です。

         


好き嫌いが分かれそうですが、
短編集全体、個々の作品の構成により読みごたえのある一冊です。


[end]



<目次>

彼岸の風景
I 時の迷路
    ニライカナイ
    コヨーテは月に落ちる
II 都市に棲む闇
    帰還兵の休日
    コンクリートの巣
III そして北へ
    レクイエム


*** 読書満腹メーター ***
お気にいりレベル   E■■■■□F
読みごたえレベル  E■■■■□F

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