人生の断片、きらり ~ 「トワイライト・シャッフル」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



最近、作家の年齢が高くなってから書かれた小説を
よく手にとっているような気がします。

作者自身に積み重なった経験からか、
人の心の機微を思わぬ角度から捉えて表されています。

         


これもそんな一冊です。

トワイライト・シャッフル / 乙川 優三郎 (新潮社) [2014年]
 ¥1,512 Amazon.co.jp

そこにあるのは、漁港、砂浜、リゾートホテル、高台の高級住宅地。
太平洋を臨む千葉・外房のバランスを欠く小さな町が舞台。

夫の単身赴任の間、新居を守る妻
  インドネシアで知り合った日本人と住んだ英国人女性
リゾートホテルを訪れる男女
  夏にホテルのロビーでピアノを弾きにくるピアニスト
そこに生まれ育った中年の外構づくり職人
  郵便局につとめる若い女性と高級住宅街に住む画家
本に囲まれて失踪した夫を待つ女性


留まる人、移り住む人、一年のある時を過ごす人、訪れる人etc.
彼らの人生の断片をきらりと映した13篇です。

         


強く印象に残ったのは、「サヤンテラス」と「ビア・ジン・コーク」の2篇。

◆サヤンテラス
日本人の夫を失った後もこの町に独り残る英国人女性が、
恵まれない幼少期を背景に夫と過ごした時を抱きながら、
静かで豊かな今を生き続けています。

◆ビア・ジン・コーク
夫が失踪して残された女性が、そ後の4年間を8,000冊の本に囲まれ、
勤めの合間の1日半の休日に酒を相手に活字を満喫しています。

どちらの主人公の女性も、傍からみればどうということのない
ふわりとした暮らしぶりに見えながら、
豊かで力強いひと時を醸しています。

         


はかない思いがよぎりながらも、過去と今と向き合う力。
せつなさだけで終わらせない、一点の兆し。
過去や日常とはことなる小さな出会いと迷い。

外房の小さな町と調和した文章には、
くっきりとした映像とともに心の動きが刻まれています。


<目次>
イン・ザ・ムーンライト
サヤンテラス
ウォーカーズ
オ・グランジ・アモール
フォトグラフ
ミラー
トワイライト・シャッフル
ムーンライター
サンダルズ・アンド・ビーズ
ビア・ジン・コーク
366日目
私のために生まれた街
月をとってきてなんて言わない


[end]


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