幕末から明治を駆け抜けた「剣」「禅」「書」の達人、“山岡鉄舟”さんのお話しです。
鉄舟さんの義弟に、石坂周造さんという方がいました。
その石坂さんの借金二十六万円を背負わされることになります。
ちなみに当時の鉄舟さんの月給が三百五十円だったことを考えると、かなりの額です。
しかし、このような大迷惑をかけておきながら、石坂さんは平然と鉄舟さんの家に出入りし、鉄舟さん一家の質素な暮らしぶりを目にしながら素知らぬふり・・・。
家の者はこの様子を見ると、どうにも不満でたまらず、石坂さんとの絶縁を鉄舟さんに求めます。
それに対して鉄舟さんが言った言葉が以下です。
「石坂がもし俺に金のことで迷惑をかけなかったら、代わって必ずほかの誰かが被害を被ったはずだ。
が、それが俺なので誰かが助かっているのだ。
そのうえ俺が石坂を手放したら、それこそ何をしでかすかわかったものではない。
まあ、わが一家のことは互いに我慢すれば済むことだ。
困難も人のせいだと思うとたまらないが、自分の修養だと思えば自然と楽土にいるように思えるものだ」
と言い、石坂さんとはこれまで通り、少しも変わることなく付き合ったそうです。
山岡鉄舟さんの生き方は、本当に男が男に惚れると言いますか、カッコイイんです。
例えば、鉄舟さんを訪ねてきた人には、相手がどういう人だろうと、どのような用件だろうと、必ず会ったそうです。
そしてあいさつは、額を畳につけて丁寧にしたといいます。
また、自分に忠告してくれる人に対して「あなたはわたしのためには神様か仏様なのでしょう」と言って、有り難く聞き入れたのです。
三度の食事は腹が膨れれば何でもよいと言って、一度も不平を言ったことはないのだと。
あの西郷隆盛さんが賞讃した以下の言葉も有名です。
「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は始末に困る、
しかし、そのような人でなければ天下の偉業は成し遂げられない」
僕が尊敬している歴史上の人物に、山岡鉄舟さんが加わっているのは間違いありません♪
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「魂が震える話」
発行人:けい