新素材水着問題 | 同じ空の下で ~ To you who do not yet look ~

同じ空の下で ~ To you who do not yet look ~

まだ見ぬあなたへ。僕らは、同じ空の下にいながらも、それぞれの感じ方で生きている。
「偶然は必然」というように、僕らを直接結びつけるものはなくても、意図しない形で、思いもよらない所で、あなたと私がきっかけひとつで繋がったことに感謝☆





(以下、6/4日刊スポーツより)


アシックスとデサントの2社の五輪用水着に素材が採用された山本化学工業が“窮状”を訴えた。

山本富造社長(49)が3日、報道各社に直筆のファクスを送付。

(1)2社に意見や提案を聞いてもらえない

(2)素材を全身に使用した水着(ニュージーランド製)を試してほしいが、

  どの選手が試着を希望しているか情報がもらえない-と打ち明けた。

 

同社は好記録連発の英スピード社製より水の抵抗が少ないという新素材を開発して、

日本水連から改善を要求された国内メーカー3社に提供、うち2社が5月30日に採用を発表した。

だが、採用後に2社へ協力を申し出ると、デ社は「情報を開示する約束はしていない」と断り、

ア社は無回答だったという。

 

山本社長は「私ども中小企業では選手に声が届かない。

(ニュージーランド製水着の)試着を希望する代表選手は電話やメールでご一報を」と訴えていた。


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(以下、6/2サンケイスポーツより)


北京五輪競泳女子200メートルバタフライで2大会連続のメダル獲得を狙う

中西悠子(27)=枚方SS=が1日、欧州遠征へ出発した。

複合特殊素材メーカー、山本化学工業(大阪市)の低抵抗素材

「バイオラバースイム」を採用したアシックス社製の改良版水着を試着したことを明かし、

「これまでと違う。着心地も意外とよかった」と好感触を得た。

今回は実戦でスピード社製の高速水着と比較する予定で、

「五輪は納得できる水着を着たい」と試行錯誤を重ねる。


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(以下、6/1日刊スポーツ・高田文太氏の記事より)


日本水連と契約するミズノ、アシックス、デサントの国内メーカー3社の

新作水着の極端な品不足に、選手から不満が相次いだ。

競泳の北京五輪代表は5月31日、都内で第2次合宿を打ち上げた。

5月30日にミズノが1、アシックスが2、デサントが3種類の新作水着を発表。

だがミズノはまだ試着できず、アシックスとデサントも各種類を数枚ずつ用意しただけ。

アテネ五輪銅メダリストで男子背泳ぎ代表の森田は

「着るのは僕らなのに選手に新しい水着の説明がない」と3社の対応に注文を付けた。

 

日本水連は世界新を連発している英スピード社を含め、

3社以外のメーカーと契約するかどうかの結論を10日に出す。

それまではあらゆる水着の試着を認め、本格的に比較検討される予定だった。

だがこの日試着できたのは代表全31人の一部。

ミズノは「ジャパンオープン(6~8日、東京辰巳国際水泳場)までに

全員のサイズに合ったものを作るのは難しい」と話した。

 

ジャパンオープンに出場せず、1日から欧州に遠征する選手もいる。

全選手が期限までに3社すべての水着を試すのは不可能。

森田が「『何を試してもいい』と言われても水着がないことには…」と言えば、

女子背泳ぎの伊藤は「試したのは1つだけ」と、欧州に遠征する2人は物足りなそうに話した。

新作水着は完成したが、新たな課題が浮上してきた。


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英国スピード社の新水着「レーザー・レーサー」(以下、LZR)による世界新記録多発のニュースは、

オリンピック目前の代表選手らを不安にさせている。



100分の1秒でも速く泳ぎたい選手にとって、

それが夢の舞台であるオリンピックを前にしての事態であることから、

この水着を着用したいとする気持ちは理解できなくもない。



日本の場合、ミズノ、アシックス、デサントと3社がオフィシャルスポンサーであり、

選手が着用するユニフォームはこの3社のうちどれかでなければならないということ。

個人で上記3社以外のスピード社と契約を結んでいる選手の場合は、

上記スポンサーの水着の着用に変更するか、ロゴを消してスピード社の着用を認めてもらうかしかない。


水着は選手にとって皮膚の一部であり、大会直前に問題解決が遅々として進まないのは、

準備不足の期間を長くしてしまうもので、決してよくない状況。


ましてや日本企業から売り込みのあった新素材を急場で作っても、

その新作を十分にテストできる時間もない。

事実、3社がLZRに対抗した新作水着でさえ、選手に試着させるだけの数を有しておらず、

オリンピックまでに選手の皮膚となれるか甚だ疑問でもある。



つまりLZRを着ることの許可も出ず、スポンサーの新作テストも十分に行えず、

ただ時間だけが過ぎているという現状である。

その中で従来の水着で出場することを決意した選手もいる。


とはいえ、冬季オリンピックで時代を変えたスラップスケートへの転換を、

オリンピック直前でためらって切り替えなかった堀井学選手のように、

苦い思いをする選手が出る可能性もある。

この場合はスラップスケートを履く選択肢が自分にあったからまだよいが、

今回の場合は、その選択の期限が延びてしまっている。



シドニーオリンピックを目前に、地元の英雄イアン・ソープが、

オーストラリアのスポンサーでないアディダスの水着をロゴを消して着用した。

彼の場合は金メダルを何個獲得できるかという次元のところにいた選手だったために、

特例であったのだろうが、予選ではあのフルボディスーツを着用せずに1着で泳ぎ、

水着の問題ではないことを証明した。



当時、僕はあの水着に関わっており、全身を包む異様な水着が話題になった時であった。

当時の日本でもスポンサー企業が後追いで「サメ肌水着」という新作を出した。


つまりは、世界における水着開発で後塵を喫し続けているわけで、

そのメーカーの企業戦略もなければ日本水連の威厳もないということ。

事実、競泳を支えているのはスポンサーがあってのもので、

オリンピック直前で他社をあわてさせるスピード社の戦略にはまってしまった格好だ。

多額の収入をえてスポンサー契約をしているような選手ならともかく、

水着を選択できない選手の胸中は複雑だ。



ソープのフルボディスーツをまねて「サメ肌水着」が作られた時に、

商品開発のコンセプト自体がまったく異なるため、勝利したと確信した。



今回は新作さえ間に合っていない。3社のは試作だ。

新作とは十分にテストを行って、提供できる状態にあるものをいう。

連盟の決断は10日のようだが、10日まで先延ばしにしなくてもいいのではないか。

日本水連の危機感はあるのだろうか?



スピード社が採用されれば、既存スポンサーの威信は揺らぎ、

今後のスポンサー契約の問題は発生する。

スピード社にとって北京は、次のロンドンオリンピックに向けたPR大会なので、

その威力を日本においては十分過ぎるほど効果を発揮した。



水泳に関わらず一番大切なのは、競技に必要なものはただひとつ自分の体なのであって、

各メーカーの製品はその主体ではなく、限界への挑戦をサポートするツールに過ぎない。


選手にとって一番ほしいものは安心を得られることによる自信。


今の状態では、LZRを除いて、実際の機能はともかく、プラシーボ効果さえあったもんじゃない。

これでは戦わずして結果が見えたと思わざるをえない。