「2010年本屋大賞」ノミネート作5冊目は、沖方丁くんの『天地明察』。

天地明察/冲方 丁
¥1,890
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作者の名前、読めます?
ばくは、以前、『マルドゥック・スクランブル』という冒険活劇SFを読んだことがありましたので、知っていました。
この方、「うぶかた とう」と読みます。

で、当然、この作品もSFだと思っていたのですが……。
なんと、時代小説なのです。
しかも、算術と囲碁そして改暦を題材とした。

渋川春海(安井算哲)は江戸幕府の碁打ち指南を生業とする安井家の後継者。
城に詰め、お呼びがかかると老中などを相手に指導碁を打ちます。
だが、春海は、将軍様の前で打つ上覧碁(過去の棋譜を暗記し対局者と力を合わせて再現して見せる)が退屈でなりません。

興味があるのは算術。
春海は一瞥即解の関孝和の存在を知り、苦心して考えた問題を彼に出します。
だが、春海が考えた問題は、複数の回答が存在する無術の問題なのでした。

失意の中、老中に命じられた春海は、日本各地で北極星を観測し緯度を計測する旅に出ます。

算術を題材にした小説と言えば、少し前に岩井三四二くんの『理屈がとおらねえ 』を面白く読みましたが、この『天地明察』はさらに囲碁と改暦の要素がプラスされています。
メインは、改暦。

そもそも暦は農耕の基本。
星を読み、暦を作り為すべきことを示せる者が農耕国たる日本を治めてきました。

けれども、八百年もの昔に導入された宣明歴は、歳月により既に二日の誤差を生じるようになっていました。
それなのに、天皇家の家来たる陰陽師からはもはや正す術が失われてしまっているのです。

春海は、二代将軍徳川秀忠の御落胤にして会津藩主でもある保科正之から改暦を命じられ、元の時代に採用された授時暦を不断の天測により究めるのですが……。

後は読んでのお楽しみ。

それにしても、化けましたね、沖方くん。

「本屋大賞」の有力候補です。


評価 ☆☆☆☆


これまで読んだ作品に順番を付けると、


① 『天地明察』沖方丁

 『横道世之介』吉田修一

 『神去なあなあ日常』三浦しをん

 『植物図鑑』有川浩

 『1Q84』村上春樹


こんなところですね。



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