去年の12月岐阜県笠松町にある旧杉山邸ライブで、重度難病障害者のグループホーム代表のあっこ(赤木敦子)が言った。
「もしかしてあのイケメンのフランケン・コーイチ!?」
オレは倖市がイケメンすぎて、「フランケン・シュタインに似てる〜」とおぼえていたのだ。
ところが中学3年にプールに飛び込んで首の骨を折る頚椎損傷をする。
持ち前の負けん気で長い入院生活からリハビリで回復し、必死で働いて難病の母やうつ病の父、兄弟の生活まで支えてきた。
その倖市に最後の試練が降りかかる。
ボロボロになるまで働きつづけた30代になって母親と同じ難病を発症しまうのだ。
なんという勇者の石を背負った人生だろう!
体が動かなかなくなり、重度障害者の施設に入る。
倖市は絶望のどん底に落ち、夢も希望も失っていた。
そこで看護士をしていたあっこと知り合う。
あっこはまるで家族のように倖市のめんどうをみ、倖市の夢見た重度難病者の施設をつくりたいと奔走した。
あっこにとって倖市は生まれる前に約束したソウルメイトだったのかもしれない。
8年間よりそい、2014年養老にある船戸クリニックのAKIRAライブに倖市をつれていった。
あっこと倖市の夢はだんだん形を整えていく。
滋賀県東近江長に重度障害者のグループホーム「みんなの家」を開き、つぎのステップ「じゅう楽」をつくり、そこでAKIRAライブをすることを倖市と誓い合った。
しかし倖市の病状は加速的に進行していく。
どんどんやせ細り、目も見えなくなり、気管切開により声も失った。
「どんなことがあってもじゅう楽でAKIRAライブをやろう」
最後まで夢をあきらめない倖市をあっこは抱きしめて看取った。
「倖市くんの最後は突然の呼吸停止で亡くなりました。
最後の最後までまわりの人々に笑顔と感謝を忘れることはありませんでした」
フランケン・コーイチ、カッコイイーしょ!?
オレはこう考える。
人が死ぬ本当の理由は、「残されたものを応援するためだ」と。
肉体の呪縛から逃れた魂は、自由にどこでもいけるし、どんな行動もとれる。
死者の最大の仕事は、生者を応援することなのだ。
2015年1月、ついにあっこと倖市の夢が実現、重度難病障がい者グループホーム「じゅう楽」が開所したのだ。
「医療技術が進歩して、重い障がいがあっても生きていくことができるようになりました。それは生まれた時からの場合もあれば、事故によって障がいを受けた場合、難病などによって途中から障がいが進行する場合も同じです。
しかし特に医療的な応援を必要とされる方たちにとっては、最期までその人らしい生き方ができる選択肢はあまりに少ない状況です。
じゅう楽では、ここに関わる人の応援を受けながら、それぞれが望む生き方ができるような我が家を創りたいと考えています」
そして今日、夢が実現したのだ。
看取り士くんちゃん(柴田久美子)が登場する。
「日本のマザーテレサ」と呼ばれ、長谷川裕子監督のドキュメンタリー映画「いきたひ」主演などあらゆるメディアからひっぱりだこのくんちゃんは、「高齢化社会」から「多死社会」へ直面する日本にとって最も重要な人物である。
くんちゃんはそんなことおかまいなく、看取りの大切さを30年も前から孤軍奮闘して伝えてきた。
なんだよ、いつもはPTAみたいなスーツなのに、チョーファンキーなイエローハットに派手な柄シャツ!
「AKIRAさんとやるときは、自由なの」くんちゃんはお腹にスイカを隠して登場する。
私は出雲大社の祭りの日に生まれました。
十月十日、お母さんは私を宿しながら田んぼに出かけ、暗くなるまで働きます。お風呂を焚きながら、ご飯の支度をしながら、スイカのようなお腹を誇らしげにさすります。
「良い子だね、良い子だね」
暑い夏の夜、蝉の声がしずまるころにようやく体を休めます。
「スイカのように隣に置いておけたらね」
(スイカを取り出して横に置く動作とため息)
AKIRA「ほんとにスイカかよ!?」
こんな風にオペラははじまる。
2.Happy Birthday (誕生日のカミガヒラ マリに捧ぐ)
3.Hello my mom!
4.第2章
5.今日は死ぬのにもってこいの日だ
6.第3章
7.絆
8.第4章
9.青空の向こう
10.第5章
11.幼い瞳
12.第6章
13.千年桜
14.第7章
15.家族
16.第8章
17.ありがとう
18.大丈夫マイフレンズ(音響スタッフ 山口君に捧ぐ)
オレはくんちゃんのくぐった地獄を脚本で描きつくしたかった。
そしてよしもと興業の社長にスカウトされたり、演劇もやってきたくんちゃんの才能を思う存分味わえるのは、このオペラしかない。
日本一に選ばれたマクドナルドの女性店長時代、仕事と子育ての重圧に押しつぶされ、アルコール中毒、うつ病になり大量の睡眠薬を飲む自殺未遂、夫と子供との離別、喉ガンにより声を失う危機、小さな島に見取りの家をつくるがまわりの無理解による挫折、父と母の看取りなど壮絶な人生だ。
「天国に咲く花は地獄に根を降ろす」とニーチェは言ったが、くんちゃんの微笑みが聖母のように美しいのは、そのうしろに地獄が横たわっているからである。
オペラの途中で突風が吹いてきたり、アンプに不思議なノイズがはいる。「見えない人たちが応援にきてる」とくんちゃんは言う。
くんちゃんの両親や看取った人々、オレの両親、なによりも今日の影の主催者倖市が大応援団をやってきているからだろう。
この豊穣なエネルギー資源を使う方法を伝授しよう。
死者を恐れ遠ざけるのではなく、その存在に語りかけ、声なき声に耳を澄まし、感謝することだ。
倖市、いつもあっこや仲間たちを支えてくれてありがとう。
倖市の応援のおかげで最高のライブになったぜ!
※ライブスケジュール
☆こちらのYouTubeでNHK「あさイチ」の「アジアに落ちる」紹介部分が見られます。
☆書籍版AKIRA名言&写真集「Will」(2500円)、電子書籍写真集(500円) 販売ページ。
☆AKIRA語録
☆AKIRAアルバム全曲解説
(曲名をクリックするとYouTubeに飛ぶようにしてあります)
☆AKIRA全書籍紹介
※著作ページ
※CDページ
※AKIRAライブの作り方
★ たくさんの自殺志願者を救ってきた「COTTON100%」がNHK日本の100冊に選ばれました。
★動画ページ 【 1.Shino Tanaka 】 【 2.Toshi 】 【 3.Mr.ピーン 】
★AKIRA歌ギターコードつき
☆AKIRA歌のれん分けプロジェクト
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