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(キリン 女の子 喫茶店 イラスト)
こんばんは。恋するイラストレーター、Akihisaです。
今夜の恋するイラストレーションNo.107。
キリンと女の子。
いろいろ変なもの描いてみたいという、ここ最近の欲求に任せて描いてみたイラスト。
いかがでしょうか?
と、言われても感想に困りますよね。
すんまそ。
特別趣味と言えるようなものが僕にはありませんが、しいてあげるとすれば、一人部屋で鉛筆をナイフで削ることと、くだらないショートストーリーを書く事が、趣味と言えば趣味です。
こう見えても内気なのです。
あはは。
笑うところじゃなかった。
あともう一つ、楽しみと言えば居酒屋で飲むことぐらいだろうか。
というわけで、「キリンミルク」というショート・ストーリーを空いた時間につらつらと書いて、昨日書き終わったので、それ用に描いてみたイラストです。
久々のショートストーリー、Akihisa作。
小話を妄想するのが好きなおかしなイラストレーターなのです。
たいしたものじゃありませが、生温かく楽しんでもらえればこれ幸いです。
でもただの趣味で書いているものなので、出来が悪くてもあとで激怒したりしないでください。
ちなみに、掲載したイラストと、物語の内容に直接の関係はありません。
金麦飲みます ☆
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「キリンミルク」 Akihisa作
雨が降り始め、僕らは目についたコーヒーショップに入った。
店は賑わっていて、僕らが座れそうな席は奥のトイレのドアの横にようやく一つ。
席について、彼女はバッグからハンカチを取り出して肩の水滴をぬぐった。
僕にハンカチを渡して「これで拭いて」とは言わなかった。
しかたないので僕はスプリングコートのポケットに手を入れてハンカチを探すふりでもしてみようかと思ったがやめておいた。
ハンカチなんか小学校の遠足以来持ったことがないし、少なくとも僕はこれまで、ハンカチの必要性というものを感じたことがないのだ。
多少の雨なら放っておけば乾くし、本当に必要だと思うときにはハンカチでは足りない。
もちろんもしかしたらある日の午後、古めかしい書斎机のわきにおもむろにしゃがみこみ、事件に関係のありそうな小さな何かをつまみあげて、なにくわぬ顔をしてハンカチに包むことがあるかも知れない。そして執事にこう詰問するかも知れない。
「このカフスは君のものかい?」
「いいえ、だんな様、そんなものは見た事もないでがんす」
そして僕はこう思うだろう。
(なんでこんなところにカフスが落ちているのか?たぶんこれは高価なものだろう。この執事は本当に知らないのか、それとも嘘をついているのか?
しかし、「いいえ」と答えるのが早すぎる。普通なら、もう少しよく見て考えてから答えそうなものじゃないか?)
あるいはそうじゃなければ別の場合には、僕は黄色いハンカチを頭に巻いて、志を同じくする同士たちと武器を手に取り蜂起するかも知れない。
もちろんそんなことはどちらも永久にないし、だから僕にはハンカチが必要ないのだ。
僕がとりとめもなくくだらないことを考えていると、やがて飲み物が運ばれてきた。
雨が窓ガラスをつたって流れ落ち、通りを走る車のあげるしぶきが街をけぶらせていた。
店に入ってから、僕らはずっと黙っていた。
僕は彼女の胸元の白い肌と、鎖骨と、その下へ続く柔らかく薄いなめらかな線を眺めていた。
ワンピースの胸のあたり、花のプリント柄が、そのふくらみをなぞっている。
「キリンミルクのこと」
ストローでピンクグレープフルーツジュースを一口飲んでから、彼女がそう切り出した。
彼女の声はいつも明瞭ではっきりとして落ち着いている。
単刀直入に話すか、そうでなければ黙るか。
余計な修飾語や副詞は好まない。
そういうタイプの女性なのだ。
僕は一瞬だけ間を置いてからうなずいた。
コーヒーを一口飲んだ。
「愛と哀しみと偽善に満ちたあなたのキリンミルク」
彼女はまっすぐに僕を見ていた。
彼女は僕に恋をしているのだ。
恋をすると、人は相手をまっすぐに見ずにはいられなくなるものだ。
そして僕だって彼女に恋をしていた。
統計学的な合理性を好み、余計な修飾語や副詞を好まない彼女が好きだった。
この三年半の間、僕はずっと彼女を好ましいと思い、恋し、愛してきた。
「一つ抜けている」と僕は言った。
「青春の、を足しておいてくれ」
彼女は僕を見つめるその二つの目を少しだけぱちくりさせた。
ぱちくり。僕が好きな言葉の一つだ。
「いいわ。愛と哀しみと偽善と青春と、欺瞞と挫折と失望と背反性に満ちたあなたのキリンミルク。これでいい?」
僕は右の眉毛の上をかいた。
「一つ抜けている」と僕は言った。
「栄光の、を足しておいてくれ」
彼女は肩をすくめた。
「どうでもいいわよそんなこと。幻想のでも、灼熱のでも、からからのでも。でもあなた、キリンミルクを憎んでいたはずじゃないの」
「今だって憎んでいるさ」
僕らの間にまた沈黙が降りた。
キリンミルクのことを話す時はいつもこのパターンだ。
話は途中で途切れ、接ぎ穂もなくなり、どこにも行き着くことがない。
「僕は君を愛してるよ」しばらくしてから僕は言った。
「君を愛しているし、深く求めてもいる。本当だよ。
君より大切なものは、他になにもない。
でも、キリンミルクはキリンミルクなんだ。
それは、夜が来て朝がやってくるのと同じなんだ」
「冬が来て、春が来るように」
「そうだよ」
「春が来て、トラマルハナバチがネズミの古巣に巣作りをするように」
「そうだよ」
気がつくと、彼女は泣いていた。
涙がこぼれ落ち、左の頬をつたった。
「私だってあなたが好きよ。愛しているし、あなたに求められたい。
強く、強く求められたいのよ。あなたより大切なものなんて何もない。
この三年半、一度もそんなこと口にしたことはないけれど」
彼女の声はかすかに震えてひび割れていた。
いつものように、明瞭ではっきりと落ち着いた声ではなかった。
彼女のそんな声を聞くのは、二年半ぶりのことだ。
彼女は言葉の続きを言おうとしたがやめた。
僕らは店を出た。僕が伝票を取り、レジで支払いを済ませている間、彼女が先に外に出た。
ドアの外に出た時、彼女はそこにいないかと僕は思った。
しかし彼女は店の軒先で僕を待ち、アスファルトを濡らす雨をじっと見ていた。
突然彼女は僕を振り返り、両腕を僕の背中に廻して僕を引き寄せ、キスをした。
ためらいも迷いもない、力強いキスだった。
彼女の腕は、強く僕を抱きしめ続けた。
僕は彼女を受け止め、彼女の頭をきつく抱いた。
ずいぶん長い間、そうして唇を合わせていたことを覚えている。
やがて彼女は雨の中を小走りに去っていった。
一度も僕を振り返らなかった。
僕はその後ろ姿が見えなくなるまで、ずっと彼女を見ていた。
雨はいつ止むとも知れず、降り続けていた。
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