フランス パリ生まれのイギリス人、サマセット・モーム。小説ではなく評論であり、冒頭でこの本が書かれた経緯について触れられています。雑誌『レッドブック』の編集長から世界の十大小説と考える小説のリストを作って欲しい、と依頼され書いたそうです。
 モームの小説だと、やはり『月と六ペンス』『人間の絆』が有名ですよね。これらはまだ未読。小説ではなく、初モームが何故か評論です。
 私の読んだ岩波文庫は上下と2冊に分かれており、それぞれ5冊ずつ解説されています。長くなりそうな予感がするので、レビューを上下に私も分けさせていただきますニコニコ

 上巻はまずは「小説とは何か?」に始まります。
 皆さんなら、世界の十大小説に何を選びますか?今、10冊選べ、と言われても正直十冊も思いつきません。
 同世代の中では本は読んでいるほうだと思います。でも、10冊って意外にも結構多い。まさか今まで読んだ本が100冊だけだったとすると10冊なんて選べない。小学生の頃から考えて年に最低100冊はどんなに読まない時でも読んでいるはずだから、2000冊(適当な数字)は読んでいるはずなのですが、やっぱり10冊って難しい・・・汗
 モームがその十大小説を何故評価しているのか、等よりも気になったのが、一体この人は一生で何冊本を読んだの?という事です。
 10冊ってまず迷いに迷って、相当絞った数なのでしょう。
 作家なんだから、本を読んで当たり前ではある。まず本を読まなければそれで生計を立てようなんて思わないはず。
 でも、読み進めていくうちに頭によぎる素朴なその疑問。

 
 色んな著名な作家が同じ世界の十大小説、というタイトルで本を出したら面白そうですねラブラブ

 やっぱり作家が重複しないように、私だったら・・・一番すきなのはやっぱシェイクスピアなのですが、これは「小説」じゃないからダメドコモ絵文字でしょ?
 アレクサンドル・デュマの『モンテクリスト伯』、ミッチェルの『風と共に去りぬ』個人的にはA・リプリーの『スカーレット』も外せない。あとシャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』でしょ、トルストイの『アンナ・カレーニナ』 。あとは日本人を入れるとしたら太宰治の『斜陽』かな。『人間失格』もいいけどやっぱこっちで。ディケンズも入れておく?だったら、『大いなる遺産』
 私のバイブル、と言えるのは『モンテクリスト伯』、『風と共に去りぬ』、『アンナ・カレーニナ』シェイクスピアですね。人生を変えた、と言っても過言ではないです。読み終えたときに、身体中に電撃が走り抜ける。雷が落ちたかのよう。涙が止まらない。ありふれた表現だけど、だから読むのって止められない。


 ・・・ハイ、脱線しましたねスミマセンあせあせ

 この上巻に載っているモームの選んだ小説は・・・

『トム・ジョーンズ』 ヘンリー・フィールディング著

『高慢と偏見』  ジェイン・オースティン著

『赤と黒』  スタンダール著

『ゴリオ爺さん』 バルザック著

『デイヴィッド・コッパーフィールド』 チャールズ・ディケンズ著


 です。『デイヴィッド・コッパーフィールド』は今読みたくてたまらない小説のひとつ。ディケンズのもっとも気に入っていた小説らしいですしね。かなり期待してます音譜

 

 『高慢と偏見』 『赤と黒』 は、既にレビュー済みです。リンク貼っておきましたので、ご興味のある方は是非。(適当なレビューでごめんなさい・・)

 気になったのが、目次が~と『○○』という風になっているのです。スタンダールと『赤と黒』のようにね。

 そして、実際読んでみると『赤と黒』についてよりもスタンダール本人について書かれている分量の方が多いのです。



 『高慢と偏見』はご存知エリザベス・ベネットがヒロイン。登場人物の4人が2組のカップルとなり、めでたし、めでたし、という終わり方。何かとてつもなく大きな事件が起こるわけでもない、平凡な小説であるが、ページを捲る手が止まらなくなるとも言われている小説では有りますが、私個人的にはあまり好きではないのです。めでたし、めでたし。で終わるものより悲劇的な死を遂げ終わるものの方が好み。


 モームはこの作品について、このような(『高慢と偏見』のような)小説の終わらせ方は、世の中の裏面を知っている人たちには軽蔑の的となっていると記しています。

 まぁ私がその「世の中の裏面を知っている人間」ではないと思いますが、結婚がゴールではないよね?しかもこの時代、離婚なんてもってのほか。好きです、付き合ってください。ではなくいきなり求婚⇒結婚の時代。

 「大抵の結婚が幸福ではないだろうし、結婚は新たな種類への経験への入り口ににすぎない。」そうそうそうそう!

 ・・・とモームが主張しつつもこの作品が選ばれた理由は構成の素晴らしさ。成り行きが自然で、本当らしさを疑わせるところがない。きっと、こういう内容の方が相当な力量がないと書けないのでしょうね汗

 


 スタンダールの『赤と黒』は、芸術品としてみると恐ろしく不完全な作品である、とまで言っています。

 スタンダールの欠点は、自分の頭の中で1つ物語を作り出す才能が欠いていたこと。どの作品も人物を自分とかなり似せてしまっているところ。言い換えれば、どの主人公も似ているのでしょうか。(1作品しか読んでないので何ともいえませんが・・・)

 ジュリヤン・ソレルはできれば自分がなりたかった、自分として描いた。つまり自分を多少美化して描いたのでしょう。

 そのせいで、致命的なミスを犯すことになります。ジュリヤンは女心を掴むのが上手かった。しかし、その目的を遂げるのに使わせていた方法が他でもない、自分が成功したことのない方法を用いたのです。特に女性の読者としては、読んでいて引っかかる原因になってしまいます。

 


 『トム・ジョーンズ』と『ゴリオ爺さん』は名前だけ、という状態あせる

あれ、フィールディングって『シャミラ』書いた人じゃなかったっけはてなマークこちらも読みたいなーと思っていました。リチャードソンの『パミラ』も同様に。どっちがパロディだったか忘れましたが。


 バルザックの『ゴリオ爺さん』も至る所で目にする小説なので、読んでおかねば。専門書でなくても比喩でもよく使われていますしねラブ

モームは一度も読んだことのないバルザックを読んでいない(私のような)人にはこの『ゴリオ爺さん』を躊躇なく勧める、

 バルザックの作品には単純で根元的な情熱の虜になっているところから異常な迫力を持った人物が多く、この種の人物を巧みに描き出した点が強みである。だが、性格が多少複雑な人物となると前者のようには成功していない、と言っています。


 


 この書評がさすが自らも後世へ名を残した人の書いたものだと思わせます。目の付け所が違うし、小説家だからこそきっと評価できるのでしょうね。素人から見ても、こういうところを見るんだ、ととても興味深いですねキラキラ


世界の十大小説 (上) (岩波文庫)/サマセット・モーム
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