幸福な家庭はすべてよく似よったものであるが、不幸な家庭はみなそれぞれに不幸である。
 あまりにも有名な冒頭の1文。たった1文で、ここまで本質を見極め、考えさせられる文がある?
 思わず、目が逸らせなくなる。
 オースティンの『高慢と偏見』もそうですが、最初の1文って本当に大事ですね。
 

 アンナ・カレーニナ。ロシアの文豪トルストイの描いた壮大で美しくも哀しい物語。1877年に出版されています。上記の冒頭文は17回も書き直したとされています。

 近代文学のお手本、言語芸術の最高峰と讃えられ、あのドストエフスキー「文学作品として完璧なものである。現代ヨーロッパ文学のなかには比肩するものがない。」と絶賛している小説。

 私のような素人が語るものではない、もう素晴らしいに尽きます。トルストイって、ここまで複雑で難解な女心を理解できたのでしょうか?でないと、書けないはず。彼の実生活は全然分かりませんが、トルストイの奥さんって幸せ者だと思ってしまうほどの小説。だから、女性の方がより楽しめるような気がします。

 だって、あのドストエフスキーですよ?完璧、とまで言わしめた名作。小説に完璧なんてありえません。

 チェーホフは「『アンナ・カレーニナ』にはすべての問題がそのなかに正確に述べられているために、読者を完全に満足させるのです。」と言い、レーニン(勿論あのソ連の建国者)はこの小説が大のお気に入りだったらしくボロボロになるまで読んだそう。



 今『戦争と平和』をあと200ページほどで読み終わるところですが、私はやっぱりトルストイならこの『アンナ・カレーニナ』が好きです。まだ彼の作品で読んでないものがたくさんあるけれど(読みたい本は以前書いた観たい映画。読みたい本。 にて。随時付け足していっています)きっと著書の中でこれが一番好きだろうな、という予感さえ感じているほど。

 約1700ページなので、長編ですね。(何ページくらいから長編なんだろ・・?)



 タイトル通り、ヒロインはアンナ・カレーニナという女性です、と言いたいところですが・・・主人公はアンナというよりもレーヴィンであり、アンナの物語は実はサブストーリーに過ぎません。

 しかも、レーヴィンとアンナは1回しか会うことがない。

しかも、読み始めて暫くしてもアンナの名は出てきません。ざっと、130ページくらいページを捲らないと登場しないタイトルにまでなった女の名前。相当変わっていると思います。

 時代は農奴制度が崩壊した1860年ごろ。

 夫ステバンが家庭教師と不倫していると気付き嘆くドリーを慰めるよう、頼まれたステバンの妹アンナが助けを求められ、そのことにより2人は元の生活に戻れるようになります。

 同じ頃ステバンの親友のレーヴィンは、ドリーの妹のキティーに求婚しようとしていましたが、キティーは美貌の青年将校のウロンスキーのことが好きであったため、その申し出を断ります。

 しかし、不幸なことにウロンスキーとアンナは駅で出会ってしまいます。一目見ただけで、目をそらせなく2人。彼はあっさりキティーを捨て、今度はアンナがウロンスキーと禁断の愛を燃え上がらせてしまうことになる・・・・

 物凄く簡単に言えば、アンナの方のストーリーは不倫による破滅です。


 アンナの夫の高級官僚カレーニンは世間体を何より気にするタイプ。


 レーヴィンはその後再びキティーに求婚し、徐々に彼に惹かれていたキティーは申し出を受け入れます。

 レーヴィンとキティー、ウロンスキーとアンナ。この2組の愛を描いた物語なのですが、


 夫との子供も既にいたのですが、アンナはそのうちウロンスキーの子を身篭ってしまいます。


 アンナは典型的な魅力的で美しい女性。男性の注目を浴びるタイプです。しかし、良くも悪くも魅力的。アンナは逆上しやすく、現実を見据えてはいない。

 どうして、それを選ぶ・・・?と言いたくなるような最悪のタイミングで家を飛び出したりと後先考えずに行動してしまうところがあります。

 はっきり言うと、自分を見つめない。何が悪かったのか、どうしてこうなったのか、考えようとしないと言いますか。原因を見ず、何もしないのです。問題は全て、先送り。

 明日がある、だから明日考えよう、というスカーレットのような前向きな先送りだったらいいんですけどね。だからこのような悲劇しか最後の最後に彼女は選択できなかった。

 結局、アンナは実際の年齢よりも子供だったんだと思います。

 しかし、そこが同時に彼女の惹きつけてやまない”魅力”だったんでしょうね。

 こんな恋だったら、出逢わなければ良かったのに。どんなに辛くてもプラスになる恋もあるけれど、これはそうは思えない。

 ウロンスキーと念願かなって2人で暮らしだしたアンナ。自分の子供を捨ててまで愛人を選んだのです。しかし、想像以上に社会に認められぬ恋愛というのは辛かった。アンナは彼に捨てられないよう必死になりますが、今でもよくあるよう、それが男性は重く感じられる。

 例のヒステリーで「彼ったら私のことはもう、愛してなんかいないんだわ!!」なんて思い込んでしまうアンナ。

 2人の間には徐々に亀裂が生じていきます。

 孤独な愛。愛は、憎しみへと変わっていってしまうのです。

 偽善的な社交界。しかし、罪を犯したのはアンナ自身。著者トルストイもアンナの罪を赦してはいません。

 耐え切れなくなったアンナが選んだのは、鉄道自殺という最後の手段でした。

 


 普通であれば、愛人に走ったアンナが病死、とかで終わりそうな気がしますが・・・妙にリアルなのです汗

 価値観とか、この2人合わなそうですもの。凄い束縛しそうだし、男性から見た永遠の理想である女性であると共に、実際付き合ったら非常~に面倒くさいタイプなのではないかしら・・・・なんて思います。


 これは、読まないと損。人生損してる。

 私のバイブルの1冊となったトルストイの傑作です。



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