【桐壺130-②】源氏物語の名脇役☆弘徽殿女御の性質
【古文】
いとおし立ちかどかどしきところものしたまふ御方にて、ことにもあらず思し消ちてもてなしたまふなるべし。月も入りぬ。
・・・・・・・・・・・・・・・
【これまでのあらすじ】
いつの時代であったか、帝のご寵愛を一身に受け、玉のような御子を生んだ一人の女官(桐壺更衣)がおりました。周囲の反感の中、彼女は亡くなってしまいます。帝は、桐壺への思慕が募り、もの悲しく思っているのでした。
実家の様子、更衣ママの心情などを、靫負命婦から聞いた帝…。
ちょうど見ていた長恨歌の絵もあいまって、
自分と桐壺更衣との悲恋を思わずにはいられないのでした。
帝がそんなふうに、月を愛でながら桐壺更衣へのおもの思いにふけっているなか、弘徽殿女御は…
第一妃であるにもかかわらず、帝の思いなどまるで考えないで、管弦の遊びに夢中です!
ここで一つ疑問がわきます。
第一妃ともなれば、当時の常識では、帝のことを第一に考え、大奥をとりまとめたりするものです。
弘徽殿女御にも、帝の様子やお気持ちを報告してくれる女房がいたはず!
なのに、なぜ弘徽殿は、帝が靫負命婦を使いに遣ったこんな夜に、管弦の遊びなんかなさったのでしょうか?
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここで、弘徽殿女御の性質が記載されます。
いとおし立ち かどかどしきところものしたまふ御方にて、
【おし立つ】
①しっかりと立つ
②我を通す、我を張る
【かどかどし】
①(才才し)才気がある、賢い、てきぱきしている
②(角角し)とげとげしい、けんがある
こんな性格だから、弘徽殿は帝の気持ちを慮らなかったのね…
と、つながっていくので、どちらも②の意になるんですね♪
これも、上と同様、弘徽殿の性格という文脈に即した訳し方をしてください。
訳)(弘徽殿女御は)たいへんに我が強くてとげとげしいところのあられる方なので、
「にて」という語は、格助詞か連語なのか見分けがつきにくいですが、
出てくるその都度、前後の文脈を確認して、訳出してみてください。
今回は、
■~であって(断定「なり」連用形+接続助詞「て」
■~によって(原因・理由を示す格助詞「にて」
どちらでもいいと思います^^;
※意味は後者ですが、直前とのかかわりからは前者のほうが適切ですね♪
ーーーーーーーーーーーーーーー
なので、弘徽殿さまは、
ことにもあらず 思し消ちてもてなしたまふなるべし。
【事にもあらず】
…何ほどのことではない、たいした事ではない
【思し消つ(おぼしけつ)】
…無視なさる(「思ひ消つ」の尊敬語)
訳)何とも思わずに 無視なさって振る舞っていらっしゃるのであろう。
「なる」は、断定の助動詞「なり」の連体形。
「べし」は、推量の助動詞「べし」の終止形。
ここでは、作者紫式部や他の登場人物たちが、弘徽殿女御の性格を推察していると考えられる文脈なので、推量(~だろう)の訳出がいいと思います♪
ーーーーーーーーーーーーーーー
そうこうしているうちに…
月も入りぬ。
「ぬ」の識別は大丈夫ですか?
■直前を見ると、連用形(入り)に接続している。
■直後を見ると、文末であり、終止形であることは明らか。
よって、打消「ず」の連体形ではなく、完了の助動詞「ぬ」の終止形と判断できますね!
訳)月も沈んでしまった。
帝は、弘徽殿女御の管弦の遊びに邪魔されて、もの思いにひたることもできず、とうとう月は沈み夜が明けていくのでした。。
【古文】
いとおし立ち かどかどしきところものしたまふ御方にて、ことにもあらず 思し消ちてもてなしたまふなるべし。月も入りぬ。
【訳】
(弘徽殿女御は)たいへんに我が強くてとげとげしいところのあられる方なので、何とも思わずに 無視なさって振る舞っていらっしゃるのだろう。月も沈んでしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【おし立つ】
■【かどかどし】
■【事にもあらず】
■【もてなす】
■【べし】
■【ぬ】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇