【桐壺19-②】解釈~疑惑
おはようございます あいです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【原文】
この御子生まれたまひて後は、いと心ことに思ほしおきてたれば、「坊にも、ようせずは、この御子のゐ給ふべきなめり。」と、一の皇子の女御は思し疑へり。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回は、「帝の気持ちの変化」からのお話です☆
ーーーーーーーーーーー
【これまでのあらすじ】
いつの時代だったか、高貴な女御や更衣たちがたくさん帝にお仕えしていたにもかかわらず、桐壺更衣だけが帝の寵愛を受け、夜も昼もお側に置かれるので、彼女は宮中で蔑まれ、居心地悪く暮らしていました。
ーーーーーーーーーーー
①この御子生まれたまひて後は、
①訳)ところが、桐壺更衣に、この男御子がお生まれになってからは、
②いと心ことに思ほしおきてたれば、
【心ことなり】は、「異」という字をあて、心が普通と異なった感じ!
趣が格別である、特別に立派であるという、プラスイメージです。
【思ひおきつ】は、「掟つ」という字をあて、
あらかじめ方針を思い定めるという意。
※【思ほす】は「思ふ」の尊敬語なので尊敬の意も含めて訳出します。
(「思ふ」→「思す」→「思ほす」と、敬意のレベルが高くなります)
↓
なので、最高敬語のように考えると、誰が「思ほしおき」たのかが分かります♪
②訳)帝は、桐壺更衣のことを、とても格別に一目おかれるようになったので、
ーーーーーーーーーーー
…と、これを見ていた一の皇子の女御は、
②「坊にも、ようせずは、この皇子のゐ給ふべきなめり」
【坊(ばう)】とは、「東宮坊」の略で、皇太子のことです。
一の皇子の女御(弘徽殿の女御)は、長男である息子一の皇子が、
当然、皇太子になるものだと考えていました。でも、いつまでたって
も、帝は自分の息子を皇太子にしてくれる気配がありません。。。
【ようせずは】は、連語で、「よくせずは」の略。「能く」という字をあて、
よくしないと、わるくすると、もしかすると等、危惧の意になります。
【なめり】は、「なるめり」から変化した、「なんめり」の略です。
(※読みは、"なんめり”と読みます;;)
断定の助動詞「なり(なる)」+推定の助動詞「めり」)であるので、
~であるようだ、と訳します。
②訳)「皇太子にも悪くすれば、この御子をたてなさるおつもりのようだ」
一の皇子の女御とは、「けん太くんのお母さん」というような感じの呼び方です^^;
この世界では、女性を本名で呼ぶ習わしがないので、
その場その場の状況や、身分によって、呼び方が変わるので、ご注意ください。
彼女のことは、現代では、「弘徽殿女御(きこでんのにょうご)」と呼ばれており、桐壺更衣のライバル的存在でいじめ役です。。。
彼女は一度、「右大臣の女御」という名前で登場しました(【桐壺14】 参照)。今後もいろんな呼び名で登場しますので、ぜひ覚えておいてくださいね♪
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
【原文】
この御子生まれ給ひて後は、いと心ことに思ほしおきてたれば、「坊にも、ようせずは、この御子のゐ給ふべきなめり」と、一の皇子の女御は思し疑へり。
【口語訳】
この御子がお生まれになって後は、(帝は、桐壺更衣のことを、)とても格別にお考えおきなされるようになっていたので、
「東宮坊にも、悪くすれば、この御子をたてなさるおつもりのようだ」
と、第一皇子の母女御(弘徽殿女御)は疑う気持ちになっておられる。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【今回の重要古語】
■ 心ことなり
■ 思ほす
■ おきつ(掟つ)
■ 坊(ばう)
■ ようせずは
■ べき(べし)
■ なめり
■ 思す(おぼす)
■ 一の皇子の女御
■ り 〔完了・存続〕
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それでは。いってらっしゃい
【関連記事】