映画『ゲド』周辺事情の分析/『ふたり』を見て思う〈その4〉 | アディクトリポート

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これの続き。

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前回のル=グウィンの声明(リンク先は英文)を読んで、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-a-susi-

「ひどい」(もちろん、ル=グウィンが「ひどい」のではなく、声明であげつらわれた人たちの愚行が、ことごとく「ひどい」という意味ですよ)と感じた方が大半だったと思うが、念のために、具体的に何がひどかったのかを分析していきたい。

まとめて言えば、
宮崎駿、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-pao
鈴木敏夫プロデューサー、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-とうじのすずき
そして駿の息子の吾朗が、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-gororo
そろいもそろって自分本位で、成熟した社会人(=一人前のオトナ)としての適性や資格を持ち合わせておらず、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-じぶり
そういう自分本位で身勝手なオトナ子供たちの集団がジブリという会社なので、
当然ジブリもまた、社会規範をわきまえた、まともな会社としての要件をことごとく欠いてしまっていて、版権ビジネスの基本ルールさえまるで守られていないところが、ひどい。

その結果、原作者のアーシュラ・K・ル=グウィンはもちろんのこと、

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彼女の原作が多年にわたって獲得してきた愛読者たちや、

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『ゲド戦記』というタイトルを冠している以上、当然小説『ゲド戦記』のアニメ映画化に決まっていると期待して劇場に足を運んだ観客にまで、

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原作『ゲド戦記』と縁もゆかりもない、スタジオジブリの社内事情や個人のエゴを平気で押しつけてしまっているわけだし、

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さらにはそれがどれだけ相手に対して失礼千万な振る舞いなのかを、徹底的に無自覚なところが、これまたひどい。

これほどひどい相手に対してしかし、ル=グウィンは決して口汚くののしったり、声高に糾弾したりはせずに、いかにも小説家らしい達筆ぶりを存分に発揮して、手際よくかつ美しい文章で、自分の権利を品良く行使している。

だから駿と吾朗から、それぞれ受け取った手紙の中身をひけらかしもしなければ、
その内容を、
「アメリカと日本の双方で、この映画の製作にまつわる怒りと失望が渦巻いたことは残念だ」
と、ほのめかす程度にとどめている。
私信はあくまでも私信であり、公にすべきではないという常識をわきまえているためだ。

当時は私も、この「怒りと失望」の中身が、ル=グウィンの側からしか推し量れなかったが、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ふたり

くしくも今回のテレビ『ふたり コクリコ坂・父と子の300日戦争~宮崎駿×宮崎吾朗~』放送を観て、おおかたこんな内容だったのではと察しがつくようになった。

さしずめ父の宮崎駿は、
「そもそも息子の吾朗に監督させるのは反対だったが、その方向で話が進んでしまい、吾朗が『ゲド戦記』を希望した以上、それを可能にするためにやむをえずウソをついた。すまなかった」
という旨の「心のこもった(=ウソ偽りのない本音の)」手紙をル=グウィンにしたため、
彼女はそこに、父駿の、息子吾朗に対する失望(「どうせムリだろ」という見込み)と憤り(=いきなりアニメ監督と宣言してしまえる不遜さに対して)を感じ取ったのであろう。

そしてこの件でのル=グウィンの怒りと失望は、
*先に公開日や製作日程が決まっていて、一番最優先されてしかるべき原作者の許諾が一番後回しにされただけでなく、
*その事実をごまかされ、だまされたも同然で契約にいたり、
*よりによってそれが、自分が一目置いていた宮崎駿とその会社ジブリの仕業だったことにある。

さらに息子の吾朗は、
「未熟者ですが、決まった以上は全身全霊を尽くしてがんばります」云々の手紙をしたためたが、
この時点では、吾朗の生い立ちにまつわる悲壮なる決意など、本人以外の誰も知るよしもないから、
ル=グウィンも「偉大なる父駿と不肖な息子」という図式しか頭に浮かばず、
実の父、駿の見立て通りに、息子吾朗のうぬぼれと自信過剰は、いったいどこから来るのかと、嘆かわしい思いだったのだろう。


いずれにせよ、こうしたル=グウィンの教養と気配りのある淑女ぶりに比べて、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-erizabesu
※画像はイメージです。
宮崎駿、鈴木敏夫、宮崎吾朗の、身勝手な蛮行ぶりはどうだろう。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-gennshi
※画像はイメージです。
ということもまた、おとなしく行儀をわきまえているペットの犬と、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-おrぎ
ことごとく約束事を破った末に、映画の中身が裏切りに満ちていようとも、原作者のお膝元での試写が終われば結果オーライとすっかり解放感に浸ってしまい、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-さかだち
お招きいただいた他所様(よそさま)の家の庭で、平気で逆立ちをしてしまえるプロデューサーとの対比で、鮮やかに皮肉っている。

ジブリの3人の、性質が少しずつ異なりながらも、そろいもそろってのマヌケぶりは、ル=グウィンの声明からだけでもじゅうぶん伝わるが、
一応、吾朗が彼女の言葉、
"It is not my book. It is your movie. It is a good movie."
「もはや私の小説を完全に逸脱し、別物の映画になっちゃいましたが、まあ映画としては並の出来じゃないんでしょうかね」

をどう受け止めたかを検証しておくと、

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-せんき
(以下、吾朗の日記より転載、一部編集)

そのパーティーの最後のお別れの挨拶のとき、
自分からル=グウィンさんに映画の感想を求めました。
これだけはきちんと聞いておかなければと思ったからです。

彼女は短く答えてくれました。
It is not my book.
It is your film.
It is a good film.
と。

彼女としては、本当はたくさんおっしゃりたいことが
あったのではないかと思うのですが、
それでも温かい笑顔とともに下さった言葉です。

この短い言葉を素直に、
心から感謝して頂戴したいと、思ったのでした。


と記されているところ(そして現在もまだ閲覧可能な状態に放置されていること)から察するに、吾朗は彼女の言葉を、
「私の小説を換骨奪胎(※かんこつだったい=先人の詩や文章などの着想・形式などを借用し、新味を加えて独自の作品にすること)していましたね。すばらしい映画でしたよ」
と、笑顔と共に褒めてくれたのだと、勘違いしているらしい。

でなきゃそもそも、堂々とブログに書いたりしないわな。

……。

つくづくガックリ。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-すなはま
↑リアルorz

私から吾朗君に、「恥の上塗り」という言葉を捧げます。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-れぺ

ところが5年前にこのことをミクシィで書いたら、
「えっ? 
"It is not my book. It is your film. It is a good film."って、
『私の小説ではなく、あなたの作品に再構築して、良い映画に仕上がってましたよ』
って意味じゃないんですか?」
と驚いてる人がけっこういて、さらにゲンナリした。

まあ、日本人の平均的な英語理解力のレベルなんて、そんなもんなのかもな。
いわゆるメディア・リテラシーの低さに、こういう日本人の英語下手も挙げられると思う、今日この頃。

一応説明すると、
まず、"It is" が3回続いたところでアウト。
ル=グウィンが映画にまるで感心しなかったことが読み取れる。
「こうでした」という冷めた分析が3回続き、
冒頭に、
「できの良さにビックリ!」("I was very much impressed.")
とか、
「圧倒された!」("I was totally blown away!")
とか、
「ハラハラドキドキしっぱなし!」("I was really excited!")
とか
「感動した」("I was so moved!" "I was deeply touched.")
とかいう、心を動かされた旨の気持ちを、I (私は)で始まる言葉でみじんも伝えないと言うことは、映画を観ても何も感じなかったということ。

また、映画を褒める気があるなら、good(とりあえずは及第点)なんて、ありきたりな単語は使わない。

Excellent!
とか、
Amazing!
とか、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-supaida
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Magnificent!
とか、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-まぐ
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とにかく褒め言葉には事欠かないんだから。

さらにこれ(=全く感心していないこと)を裏付けるのが、前回は訳さなかった、ル=グウィンの声明の、以下の部分。

Though I think the dragons of my Earthsea are more beautiful, I admire the noble way Goro's dragons fold their wings. The animals of his imagination are seen with much tenderness — I liked the horse-llama's expressive ears. I very much liked the scenes of plowing, drawing water, stabling the animals, and so on, which give the film an earthy and practical calmness — a wise change of pace from constant conflict and "action". In them, at least, I recognised my Earthsea.

酷評ばかりもなんだから、
*ドラゴンの翼のたたみ方
*家畜たちの描写
*人々の日々の暮らしぶり
等々、あえて無理矢理にでも良かったところを挙げている、「そこしかないのかよ!」ぶりがすさまじい。

次回は、この件に関して、私が起こした5年前の行動について。