桃の木温泉宿泊記(番外編) | 朝寝坊弁慶のささやかな交湯録

朝寝坊弁慶のささやかな交湯録

朝寝坊弁慶の由来は、朝寝坊して昼過ぎからのこのこと温泉に出かけていく習性に由来しております。

弁慶はなにかといえば、語呂合わせみたいなものです。

興味の幅がありすぎて、まとまりがありません。最近は京都に住んでいます。気持ち的にはです。


湯巡り弁慶の奇妙な生活


桃の木温泉205号室の椅子である。ここに座ると、窓の外の山景色しか見えない椅子である。木部は色あせてはいるが、座面にほつれや破れはなく、清潔な椅子である。


外観は鉄筋コンクリート造りであり色あせてはいない。しかしそれは先代の宿に対する愛情の賜物であり、決して新しいわけではいことがこれらの備品から想像される。


有名になった若女将佑香さん。TV局の企画で山形かみのやまの温泉街にある高級旅館「古窯」での修行。JTBの後継者研修会への参加も高級旅館「うぶや」であった。


山奥のどん詰まりにある、もともとは山小屋であった桃の木温泉である。南アルプスの登山客を迎える立地ではあるが、その他の観光の拠点とはなりにくい立地。行きかう車もほとんどなく、静寂、渓流の流れる音しか聞こえないが、豊かに湧き出す自家源泉をもつ宿である。


「変えていかなければいけない」と言う若い佑香さんがいったいどこに向かって進もうとしているのか・・・既存の客層を捨てる覚悟で高級路線へと心が傾いているのだろうか、それとも既存の路線の中での新たな試みを模索しているのか、そのことがたいへん気になっていた。若さは感化されやすい。そして失敗を恐れない力になる。しかし、それゆえ危うい。


しかし佑香さんはそのことをきちんと理解していた。感化されそうになりながらも、いや違うのではと疑問を持ち、方向性について悩み、自分なりの考えを持ち始めているようだった。秘湯を守る会に入っていることの意味と、その価値をより高める方向について悩みながらも語る姿に私はそう感じた。



冒頭の椅子。この椅子が刻んできた歴史の方向に将来の桃の木温泉の姿は必ずあると信じている。


今年は女性の登山ブームで山のお客さんが増えたという。私も以前山に登ったが、今は山の温泉に行くことだけを好んで続けている。今、山に登る為にやってきているお客さんも、たとえ山の熱が醒めても同じように必ず戻ってきてくれるはずだ。その時にほっとできる温泉であり続けてくれるだろう。