打海 文三
裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争


打海 文三
裸者と裸者〈下〉邪悪な許しがたい異端の



覚悟してお読みください。
ずっとラノベばっかりだった人にはちょときつかったです。
ひっさしぶりに重い本を読みました。
なので今ちょっと胃もたれ中。食傷中。
まあ雰囲気に引き摺られなかった分だけマシだと思いたい。
漢字多いのはともかく、グレネードランチャーとか迫撃砲とかAKとか解らないんで…。B15とかそこら辺です解るの。



日本のどこかでいまも戦争がおきてる。

両親を亡くした七歳と十一ヶ月の佐々木海人。


妹の恵と、まだ二歳になったばかりの弟の隆を守るため、

手段を選ばず生きていくことを選択した――――。  



最初は孤児兵。使い捨ての、誰にも惜しまれない、反感を買うことのない命。

学は無く、故に会話も平仮名ばっかりで、それでも、海人には庇護者である弟と妹が居る。



人を殺して手に入れたお金。
人を狂わせる葉を売って手に入れたお金。
キレイなお金が欲しかったけど、汚い金で2人の命が助かるのなら。
正しい教育を受けて正しい道を歩めるのなら、という海人に、弟の隆は言います。

「ようするにかいとはおれたちをすてるわけだ」

お父さんが殺されてお母さんは絶望的な行方不明で、
それでも3人で生きていくことを、決めたのに。

強姦も略奪もなんでもありの部隊。
価値が無ければ殺される。
なんの躊躇いもなく銃口をむけられて引鉄を引かれる。

その中で海人は、非常識を見て世界を知り常識を見極め己を解します。
電池のように使い捨てられる孤児を、殺されていく仲間を守る為に、任せられた部隊を強化し、武装し、訓練し、精鋭とさせ、生存率を上げます。

レズビアン、レイプ、ゲイ、性差別、年齢差別、人種差別、
政府軍と反乱軍、派閥、地方軍閥、宗教、マフィア。
賢しさ、狡猾さ、卑怯さ、狡賢さ、理性、誠実、常識と非常識、プライド。

資金を得ると、溢れかえるほどの仲間の為に孤児院を作り、医療を調え、
他の団体とも手を組み、仲間を蹂躙した上司を殺し、恩を返します。

下巻では、海人達の友達・椿子と桜子のお話。月田姉妹。
彼女らに差は無く、区別も無く、2人でひとり。
椿子は桜子、桜子は椿子


彼女達の結末と、「父親」に対する姿勢。
冷静に他者を分析する彼女達が好きです。

戦争モノ。最初から最後まで戦争モノ。
戦闘じゃありませんでした。
利害と損得と利権と権力と武力と食料が絡んで絡まりあって、
戦争ナシでは回らなくなってしまった経済情勢の中で、
それぞれがそれぞれの理念の下、ただひとつ戦争終結に殺しあうお話。
響く言葉が、数え切れないほどに、存在するお話。


同シリーズの感想:別窓開きます
愚者と愚者(上) 野蛮な飢えた神々の叛乱※裸者と裸者の続刊。
愚者と愚者(下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ