海堂尊 『ひかりの剣』 | 映画な日々。読書な日々。

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ひかりの剣/海堂 尊
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東城大の虎・速水と、帝華大の伏龍・清川がまだ医学生で剣道部員だったバブルの頃。2人のあいだに医鷲旗をめぐる伝説の闘いがあった。


チームバチスタ シリーズに登場するキャラクター達の医師とは違った姿を描いた作品で面白かったです。


ジェネラルルージュの凱旋 で大活躍だった速水先生や高階医院長、そして私はまだ読んでいませんが、ジーンワルツに登場する清川先生などがメインキャラクター。速水先生と同級生の田口先生や島津先生、さらにブラックペアン1988 で研修医だった世良先生もちょこっと登場します。


1988年、バブル真っ盛りの頃。

医学部剣道部の象徴的大会、医鷲旗を賭けて桜宮・東城大剣道部の猛虎・速水晃一と天下の官僚養成大学、東京・帝華大の臥龍・清川吾郎による戦いが繰り広げられます。


速水と清川はもう正反対といっていいような性格。真面目でとても強いけれども、責任感が強すぎて伸びを止めてしまっている速水、一方練習嫌いでやる気はなく無責任だけれども、才能はあり負けず嫌いの清川。そして高階先生は、清川のいた帝華大から東城大へと赴任。


清川は医鷲旗なんて取りたいとは思ってない。ただ前の年に負けた速水のことだけは一番のライバル視をしていて、速水だけには負けたくないと思っているわけなのですが、ともかく練習嫌いで無責任。だけどその分自由なんですよね。だから伸び伸びとした剣道ができる。そして彼の性格が呼び寄せるのか、本人の意図しないところで結構練習環境にも恵まれちゃったりします。


マネージャーとして入部してきた朝比奈の尋常ではない動き。そして朝比奈の師匠であるおじいからの特訓を受けるはめに・・・。


また結構セコイことに、自分は高階の特訓を受けさせてもらったのに、東城大に赴任したらライバルの速水には稽古をつけないでほしいと依頼しちゃったり。だけどそういうあからさまなズルさもアリだったりするんですよね。ともかくずる賢さにかけては天下一品もの。


だから責任感が強すぎる速水の真面目さ、まっすぐさが逆になんだかかわいそうに思えてきてしまいました。だって速水にとっても清川はライバルなわけですよ。だけど自分の大学の顧問になった先生に稽古をつけてもらえないこともしぶしぶ受け入れちゃうし、清川に勝つために一人黙々と真面目に素振りだけをする日々。


そして高階先生と言えば二人が互角に戦う日がくるのを楽しんでるんですよね。だからどちらかだけが強くなってしまっては面白くない。どちらも対等に戦えるようにさりげなく画策してたりするわけなのですが、どうにも清川の方を持っているように感じてしまいましたわ。


だけど本当全く正反対の性格の二人が剣道を通して互いに別々の道を歩みながら1つの場所を目指す、その過程がとても面白かったですね。


またみんな医学生なのでね、その間にもベッドサイドラーニングという病院実習の様子が描かれていたりして面白かったですよ。何せ病院実習はブラックペアン1988 の中にひかりの剣がお邪魔したような感じでしたから。速水が田口先生や島津先生と一緒に参加した病院実習では渡海医師や世良医師がでてきてなんだかうれしくなっちゃいました。


また解剖実習の為に人間の部位をラテン語と日本語で覚えてクイズとして出されてたりする地獄の合宿は、部活動との両立をはかるための医学部ならではのルールという感じでした。


それにしても高階先生は鋭いなー。そして本当阿修羅。まぁそういうキャラクター設定なんですけどね。速水のことも清川のことも、そしてそれぞれのチームのこともほーんとよくわかってるし、彼らの未来だってズバリですよ。


「世の中を動かしていくのはきっと、清川君のように如才ない、柔軟なしたたかさを持った人間なんだろう」

「彼(速水)は、いつかどこかで伝説を作る。その伝説は、長く言い伝えられることだろう。」


なんか鳥肌立っちゃいました。


医鷲旗大会の結末は。果たしてどちらが勝つのか、は予想したとおりでしたけどそれでもドキドキしながら読んじゃいました。私、剣道は全然わからなくて、鹿男あをによし を読んだ時も思ったんですけど、これ、剣道に詳しかったら試合のシーンとかもっと楽しめたのかもしれないなーと思うとちょっと残念。


でもみんなが成長していく姿がとても良かったし、また速水、清川、高階以外の登場人物である朝比奈やおじい、清川の弟の志郎などの存在もよかったです。


まさか海堂さんの作品でこんな青春小説が読めるとは思いませんでした。早く清川が医師として登場しているジーンワルツも読みたいです。


★★★☆